覚めないで

小波 せん

短編


「由香おはよう」


そんな声がして薄ら目を開けると

横には大好きな彼が居た


おはようと返すと

彼の大きな手が私の頭を撫でる


カーテンの隙間から

外の明かりが差し込んでいる


部屋の明かりがついていなくて

いい感じの薄暗さだった


そんな雰囲気が心地良くて

再び目を閉じた





「由香、由香」


誰かが私の名前を呼ぶ

誰かの細長い指いが目の下に

触れている


顔についている水滴を

拭われている感覚



「由香、、」



また名前を呼ばれた


誰?

今、大好きな彼と一緒に寝ているんだから

邪魔しないでよ


そんな事を思いながら

隣にいるであろう彼に抱きつく


抱きついた瞬間に違和感を覚える

彼はこんなに華奢ではないはず

彼はもっと暖かかった


彼じゃない


そう思ってからは早かった

次から次へと涙が溢れた



「由香、、、」



その声と共に涙を拭っていたのは

理佐だった


私が抱きついたのは

彼ではなく、理佐だった



「理佐、ごめん」


「んーん、また夢見てたんだよね」



理佐はそう言って

私の頭を優しく撫でた


そう、さっきまで見てたのは

大好きだった彼の夢

もういない彼の夢



「涼君、なんで、なんで、

冷めないって言ったのに、

信じてたのに」



こんな事を言って

何回理佐の前で泣いただろう


泣き疲れた私は

また夢の中に戻った



「由香、愛してるよ」



夢の中の彼は優しく微笑む



「私も愛してる」



このまま、幸せが続けばいいのに

ずっと愛されてたかった


私の夢、まだ覚めないで。






Fin



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

覚めないで 小波 せん @konami_sen

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ