滝壷の中へ

吾妻栄子

第1話

「そなた」

 桃の花霞の覆う滝壷の下、髪も服も濡れ鼠になった老人は目を見開いた。

「おはつなのか」

「ええ」

 白髪に皺の深く刻まれた老婆は、しかし、切れ長い瞳に端正さの残る面を頷かせた。

庄屋様しょうやさま

 老女から幼子まで様々な年配の女たちが歩み寄ってくる。

「皆、村祭りの生贄に突き落とされた娘たちよ」



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滝壷の中へ 吾妻栄子 @gaoqiao412

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