2025年地球大転移
コワンチョウ
第一章 新たな太陽系
第1話 地球大転移後の主要国の反応
ー2025年 4月1日 現地時間午前9時30分頃 アメリカ合衆国 ホワイトハウス 会議室ー
地球全体に突如として起きた異常事態が発覚して以来、およそ9時間半が経過しているアメリカ合衆国。
日付が変わっておよそ1時間後に行われた
おまけにNASAが今まで打ち上げてきた探査機への通信が日付が変わった瞬間から一斉に途絶してしまったので、地球と月以外に惑星や衛星が存在するかどうかですら未だに分からないままである。だが何故かは分からないものの、幸いにも地球を周回する人工衛星や月を周回する宇宙ステーションとの通信は普通に出来ており、NASAの職員達は、人工衛星と宇宙ステーションとの通信全部が途絶していなかったことに対して少し安堵していた。
だがそのような事態にも関わらず安堵したままで終わらせるわけにはいかない。NASAが観測をし、そこから導き出された憶測に過ぎないものの、地球と月は全く別の星に大転移したという説や、NASAの職員から観測結果の報告、軍からの報告を基にして、アメリカ合衆国のこれからの方針や、異変が起きるまでは順調だった宇宙開発の今後の指針を決めなければならないのである。
なのでこの会議室には大統領や大臣だけではなく、NASAの職員らまでもが緊急会議に出席しているので人数はかなり多い。
「ではこれより、緊急会議を開催いたします。本日の緊急会議の主な内容としましては、『NASA主導の天体観測による結果報告』や、『我が国以外の各国の状況について』、そして『アメリカ合衆国の今後の宇宙開発の指針』についてを今回の会議で決議する予定であります。」
会議の進行役が淡々と緊急会議の内容を説明し、会議に参加している者一同はとても険しい表情で進行役が話す事に真剣に耳を立てる。
「ではまず最初に、『NASA主導による天体観測の結果』について、本日お越し頂いたNASAの職員らによる説明を行います。では職員の皆様、ご説明をよろしくお願い致します。」
NASAの職員らは声を控えめに「はい」と言った後、少し遅れて席から立ち上がり、スクリーンのある会議室の前部分へと移動する。すると一人の職員はノートパソコンを机に置いてセッティングをし、もう一人は説明の準備をし始める。
そして数十秒後、スクリーンにノートパソコンの画面が写し出された。その画面には、日付が変わる前、変わって数十分後、変わっておよそ1時間後の3枚の画像が横一列に並んでおり、その中でも真ん中の画像は誰が見ても分かるくらい他の画像に比べて真っ暗である。これを見た大統領や大臣達は一体どういうつもりでこの画像を持ってきたんだと思い、席に座ってる者全員がどよめいていた。
「それではただ今から、我々が行った天体観測の結果を報告します。まずこのスクリーンに映し出されている3枚の画像についてなのですが、見ての通り真ん中の画像は満天の星空が見える左右の画像に比べ、明らかに真っ暗なのが分かるかと思います。それと右の画像に注目を…こちらは日付が変わって1時間後くらいに撮影された画像ですが、一見すると左の画像と何ら変わりのないように見えます。ですが、実は右の画像に写っている星々は全部知らない未知の星でいっぱいで、一般人でも知っているベテルギウスやシリウスといった星ですら一切見当たらなかったのであります。」
NASAの職員が放ったこの言葉に、会議室にいる者一同は驚きを隠せず、理解が追い付いていけなかった。無理もないだろう。何しろ日付が変わった瞬間から唐突に夜空が真っ暗になっただけでもかなり異常なのに、さらに夜空に浮かぶ星々全部が我々の全く知らない星で埋め尽くされている事自体前例のない事だから尚更だ。
NASAの職員らを除いた会議室にいる人達は未だにどういう状況かを把握出来ていないように思える表情をしているが、そんな事お構いなしに職員らは説明を続ける。
「ちなみにこのスクリーンに映し出されている3枚の画像は全て同じ場所、同じ方角で撮影されたものです。にわかには信じがたいかと思われますが、3枚とも編集や加工した画像では全くありませんし、ちゃんと確認済ですのでどうか悪しからず。」
そう言うと今度はまた別の画像へと切り替えた。映し出されているのは月と火星と金星が見事に写っている画像である。だがその隣にある右の画像は何故か月だけしか画像に写っていない。この画像でもまた会議室が少し騒がしくなるが、場の空気を読んで一同はすぐに静まる。
「次にこの画像ですが…見て分かる通り、明らかに右の画像は月のみしか写っておらず、金星と火星が無くなっています。この2枚の画像も先程の画像と同様、同じ場所で撮影されたものです。さらに言うと、木星や土星といったガス惑星ですら一切見つからなかったので、これは恐らく我々が住む地球と月か、それとも地球と月以外の惑星全てに何かしら異常が生じているのではないかと推測しており、一部の天文学者は、『地球と月は我々の知らない別の銀河にある別の星に大転移したのではないだろうか?』といった説まで提唱されています。」
職員らは今話している事の説明に大統領や大臣は付いていけてるのか確認したが、大統領や大臣達はゆっくりだが頷いてはいたので少しだけ説明をする。
「次に人工衛星についてなんですが…地球を周回している人工衛星や、月を周回する宇宙ステーションとはやり取りが出来ます。これは日付が変わる前と何ら変化はありません。ですが、地球あるいは月を周回していない人工衛星、探査機や火星探査車等の通信は全て途絶えてしまっており、我々も通信を何度か試みたものの…全然入ってきませんでした。今説明したこれらの報告は現時点で分かっている事です。今後調査をし続ければ報告が変わるかもしれないですし、何かしらの謎が解明するかもしれません。NASAからの報告は以上です。」
数十秒後、NASAの職員らは説明を終えるとすぐに自分が元々座っていた席へと帰った。
「NASAの職員の皆様、ご報告ありがとうございました。では続いて『我が国以外の国の状況について』を…」
その後も大統領や大臣全員を集めた緊急会議は続き、アメリカ国務省の職員からの各国の状況報告が続いた。それを踏まえておよそ数十分後、アメリカ合衆国の指針や、宇宙開発の方針の具体的な方向は一応だがまとまり、次のような方向になった。
・アメリカ合衆国は今回の異常事態を受けて、同盟関係及び友好関係の国々とは出来るだけ何かしらの支援をするようにする。
・アメリカ合衆国は現在仮想敵国の中国や、近頃以前より宇宙開発が進んでいるロシア連邦とは引き続き警戒姿勢を崩さずに維持する。ただしロシア連邦とは一部でのみ宇宙開発の面で協力することを容認する。
・宇宙開発専門の民間企業SpaceY社主導の火星への有人探査計画は、周囲に惑星や衛星があるか否かが判明するまでは一時保留し、Red Origin社等が携わっている月面探査の計画は予定変更なしで続行とする。
・NASAはヨーロッパの
・可能性は低いものの、もし仮に地球と月以外に惑星や衛星が見つかり、その星に水のような液体や、大きな大陸らしきものといった地球となんらかの点で類似している惑星あるいは衛星が見つかった場合、その星の存在は生命の有無あるいは人工物などがはっきりするまでは情報を公にしないようにする。
といったものであった。
なお最後の部分については、会議中発見次第すぐに情報を公開するべきか、あまり公開しない方がいいのかで意見が対立したものの、すぐにでも公開してこれ以上の混乱は避けたいという考えに大多数が同意したのと、両方の主張する意見を微調整した結果こうなったのである。
こうしてアメリカもとい地球は突然の出来事に今の状況が未だに未解明のまま見知らぬ星を周回し、地球と月が違う星へと飛ばされて初めてその一日を迎えようとしていた。
だがその翌日には、早くも転機が訪れようとしていた。それは、NASAが運用する宇宙望遠鏡が、偶然にも地球より少し大きめな惑星を発見したからである。
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