28話:『建国記念日』


建国記念日10時



ピーチ:「あれ、勇者じゃない!!」




スー:「どこどこ?」

ピーチ:「ほら、あの噴水の手前当たり」



モニターを見ながらピーチは言った。



ピーチ:「あら、ありゃりゃりゃりゃりゃ」

   :「手なんか繋いじゃってー。もう」

   :「かー。こりゃ結婚も近いかもなー」




勇者が写っている箇所を拡大している。



スー:(趣味悪いぞ、、、)




勇者はアナスタシアとデートをしていた。

無論勇者も王様の演説には出る予定。

その前のちょっとした息抜きであった。




ピーチ:「今日が平和の一歩目でー」

   :「次は結婚式の準備でー」

   :「あたたたた。またうち忙しくなっちゃうなー」

   :「やれやれだわ」



アメリカンポーズを決めるも、

イヤそうには見えなかった。




スー:「楽しそうだな」


ピーチ:「うん。楽しい予定がいっぱい」

   :「うち、気合い入れて勇者をからかうんだー。ハハハ」


ドラゴン:「そうじゃのー」

    :「結婚するとしたら、わしも芸でも披露しようかの」



ワハハと笑い、

スーに酒を持って来いというドラゴン。







建国記念日12時



大臣:「これより、王様から大事な発表がある」

  :「皆の衆、しかと聞くように!」




大臣の声と共に、王宮のベランダから王様が現れた。

見渡す限り人で埋め尽くされている。


スクリーンにも、王様が大きく映された。




王様:「今日。この日」

  :「今年もまた無事に建国を祝えて、予は大変喜ばしい」

  :「今日が良き日になるよう、心から願っている」

  :「また、この日に相応しい大事な発表がある」

  :「衝撃的な内容だが、皆よく聞いてほしい」

  :「我々王国は、長くゴブリンとの戦いに明け暮れていた」

  :「それは予が知る限り、王国建国以前から続いているそうだ」

  :「しかし、この戦いももう終わることになるであろう」


  :「ここにゴブリン一大攻勢を宣言する!」



民衆は飛び上がった。




王様:「兵の皆は一時の休暇を楽しんでくれただろうか?」

  :「既に、予が敵の計略を事前に掴み、首脳部を殲滅することに成功した」

  :「大臣あれを前に」



大臣は、5人の使いの者を王様の前に立たせた。

手にはそれぞれが、料理皿を持っている。

皿の上には、レストランでよく見かける銀色の丸い蓋がかぶさってあった。




王様:「蓋を開けよ」




王様の合図と共に蓋が開いた。

そこには5人の生首があった。

3賢者に緑子。そして勇者。

鮮血が今も滴っていた。





王様:「衝撃的な内容とはこのことである!」

  :「予も未だに信じられない」

  :「なんとこの機に及んで、勇者はゴブリン国と手を組み、国を裏切ろうとしてたのだ!!」



下の民衆の驚く様子は凄かった。



民衆A:「まさか、勇者様が」

民衆B:「ゴブリン国と、何故?」

民衆C:「そんな、そんなあ」





王様:「どんな手段で、勇者を惑わしたかは予も分からん」

  :「だが、今一歩のところで計画を知り、逆手に取り敵首脳部をおびき寄せ、阻止することができた」

  :「これがその証拠の首。ゴブリン国の神官、3賢者及び緑子。裏切りを企てた大罪人、勇者である」

  :「我々の敵は、こんな小賢しい真似をする」

  :「慈悲一つ掛ける価値もない蛮族である」


  :「我が国民よ。今こそゴブリン殲滅に立ち上がるのだ!」  




雰囲気に魅了され、

沢山の歓声が鳴り止まなかった。












各地のモニターには、沸き立つ民衆が映し出されている。

その映像から、キラリと北東の空が光ったように見えた。

瞬間、爆発音が聞え、モニターは真っ暗になり、世界は混乱した。














後に、王国があったとされる一体の地域が、巨大なクレーターになったことを知ることになる。




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