恋愛予報 三角カンケイ警報・発令中!/西本紘奈

プロローグ

 十月も終わりのころだった。

 日はすっかり暮れ、落ち葉が風にかれてカサカサとう。

 公園のすみでは小学校低学年くらいの小さな女の子が静かになみだを流していた。

 彼女を追ってきたらしい男の子が声をかける。

「ヒカリちゃん、どうして泣いているの?」

 少年に問いかけられ、少女は悲しげに首を横にふった。

「ミキちゃんに、きらわれちゃったの」

「え?」

「へんなこと言うからヒカリちゃんなんてキライって言われちゃった……」

 思い出したのか、少女の目からまた涙がこぼれる。

「あんなこと言うんじゃなかった……! わたし、ひとりぼっちになっちゃう。ミキちゃんだけじゃなく、みんなにきらわれて、ともだち、ひとりもいなくなっちゃう──」



「────ぼくがいるよ!」



 少女がさいごまで言う前に、少年がいきおいよく大声を出した。

 おどろいて少年を見上げた少女に、彼はつづけて言う。

「ぼくはヒカリちゃんをきらったりしない!」

「ほんとに? わたしがへんなこと言っても気にしない?」

「うん、もちろん」

「ふたりだけのひみつにしたら、守ってくれる?」

「守るよ。ひみつも守るし、ヒカリちゃんのことも、ぼくが守る」

「ぜったい?」

「ぜったい! ぼくはヒカリちゃんのいちばんのなかよしだもん!」

 そくとうされ、落ち込んでいた少女の表情にゆっくりと希望の光がさしていく。

 やがて彼女は、きらきらとしたひとみで「ありがとう、ゆうせいくん!」と彼を見つめる。

 少女に礼を言われ、少年はほこらしげに微笑ほほえんだ。



「だいじょうぶ、ぼくたちはずーっと、ともだちだからね!」



 堂々と彼が宣言したのと、冷たい夜空に花火があがったのは同時だった。





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