第57話 紅の剣と呪いの魔剣 10


「流石に疲れた。少し休みたい」


 思わず愚痴が出てしまった。

限界突破の力を出し、なんとか一人の力で立ち上がる。

いまだに膝はがガクガク中。

エレインさんとニコアはまだ体力が残っているようだ。


「何か飲み物でも持ってきますね」


 ニコアが部屋から出ていく。

残されたエレインさんが俺のそばまでやってきた。


「アクトさん、大丈夫ですか?」

「いや、さすがにきつかったです。エレインさんは?」

「おかげさまで、この通りなんともありません」


 俺の目の前でクルッと一回転する。

ニコアと同じように長い金色の髪。

本当にニコアとそっくりだ。


「バイスは、大丈夫なんですか?」

「恐らくは……。少し気になる所もありますが、大丈夫でしょう」


 何か不安なことでもあるのだろうか?

廊下から足音が聞こえてきた。


「お待たせしました」


 ニコアの持ってきた飲み物を飲みながら、しばしの休憩。

せっかくの休日なのに、こんなことをするとは。


 リリアもセーラも今頃何をしているんだろうか……。


――


 ところ変わってアクトの家にいるセーラ。

みんなが出かけた後もせっせと掃除をしている。


「ふぅ……。こんな感じでいいでしょうか」


 庭もリビングもキッチンも完璧です。

湯汲場もいろいろと手直しをして、温かいお湯を出せるようにしました。


 主様は出会った頃は頼りなく感じていましたが、最近はそうでもありません。

リリアさんと訓練することも多く、順調に強くなっているらしいですね。

怪我だけはしてほしくないのですが、ついつい心配してしまいます。


 さて、二階の部屋をもう一度チェックしておきましょう。

とある一室の目の前、このお部屋は主様のお部屋になる予定だ。


 ほかの部屋よりも一回り広く、日当たりもいい。

窓を開け、新しい空気を得屋に取り込む。


「んー、いい風ですね」

 

 主様のお部屋にはベッドと机。

それにクローゼットと書棚があります。


 少し傷んではいましたが、自身の家事スキルで修理しました。

喜んでくれるか、少し不安が残ります。

二階に来たついでにほかの部屋も見て回ります。

全ての部屋は一度掃除していますが、リリアさんはどの部屋にしましょうか。

やはり、主様から一番遠い部屋がいいでしょうか?

少し悩んでしまいます。


 二階の廊下も手すりも掃除が終わり、そろそろ明日の準備に入りましょう。

市場へ行って明日の引っ越しに合わせたご飯の準備をしなければなりません。


 買い物をするため、一度家を空けます。

しっかりと鍵をかけていきましょう。


 しばらく歩き、市場へやってきました。

今日は何かお買い得なものはあるでしょうか?

軽く買い物を済ませ、残りは明日にします。

一度に買いすぎると、荷物が手に持てなくなりますので。


 両手に荷物を抱え、フラフラ歩いてい帰ります。

少し、買いすぎたのかもしれません。

もう一人、誰かと一緒に来ることができれば……。


 家も一人で掃除するには少し広いですし、食事や家事の事を考えると私以外にもう一人いたら助かりますね。

でも、いまはまだ住む人が少ないので、何とかなるでしょう。


 明日からいよいよ主様たちと一緒に寝食を共にします。

実は、リリアさんが少しうらやましかった。

宿で主様といつも一緒に……。


 でも、明日からは私も一緒です。

何気に楽しみでもあり、はやく一緒に食事がしたいですね。


「あー! セーラさん! お買い物ですか!」

 

 大きな声で呼び止められた。

この声はリリアさん。


「えぇ、今から帰るところですよ。お一人ですか?」

「少し前までアクト様と一緒にいたのですが、今は多分孤児院にいると思いますよ」

「そうですか、リリアさんはこれから何かご予定は?」

「んー、大体市場を一回りしたから、どうしようかな……」


 私は片手の荷物をリリアさんに差し出し、微笑む。


「良かったらお家でおやつにしませんか? おいしい紅茶の葉っぱも買えたんですよ」

「おやつ! では、私もご一緒しましょう!」


 並んで家に帰る。

ただそれだけなのに、なんだか幸せな感じがする。


「セーラさん、明日は引っ越しですね! 夜は引っ越しパーティーでお祝い!」

「そうですね。少し豪華にしてもいいのかしら?」

「いいですよ! アクト様もパーッとしよう! って言っていましたし」


 みんなで楽しく、パーティーか。

きっと、楽しくなりますね。


「では、明日は少し豪華にしましょう」


 少しだけ豪華な料理を作って、おいしいお酒でも少し買おうかしら。

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