第8話 冒険の始まりと出会い 8
「リリア!」
俺はリリアの目の前に立ち、ウルフを向かい入れる。
今度は、俺がリリアを!
手元に武器はない。
頼れるのは二つの腕のみ。武器がなくても、俺はリリアを守ってみせる!
両手でウルフの首をつかみ、何とか噛みつかれるのを防ぐ。
しかし、ウルフの前足は健在。
俺は何度も体を引っかかれ、次第にボロボロになっていく。
「リ、リリア離れるんだ! 早く!」
「ア、アクト様! 今助けに!」
「い、いいから逃げろ! 俺がこいつを引き留めておくからっ!」
「で、ですが!」
俺は無我夢中でウルフの首を絞める。
せめてリリアが逃げ切るまで。何としても、生き延びるために……。
次第にウルフの攻撃がゆっくりとなっていき、動きが悪くなってきた。
やがて、ウルフはその腕を動かさなくなり、最後には体全体が動かなくなった。
「アクト、様?」
「もぅ、大丈夫だ。多分、倒したと思う」
俺は念のため、ウルフに刺さっているナイフを引き抜き、もう一度ウルフの胸に突き刺す。
ウルフは魔石を残し、跡形もなく消え去った。
「お、終わった……」
背中に温かさを感じた。
「アクト様ぁ!」
「痛いよリリア、もう大丈夫だ」
「なんで、なんで逃げろっていうんですか! 二人で、私たちは……」
「ごめん。でも、もう終わったよ。ありがとな」
握ったナイフを手に持ち、魔石を吸収させようと切っ先を近づける。
「ま、待て下さい!」
リリアに止められた。
「どうした? この大きさなら結構魔力吸収できるんじゃ?」
リリアがなぜかもじもじしている。
「あ、あのですね……。モンスターの魔力よりも、アクト様の魔力の方がいいといいますか、人の魔力も吸収できたからモンスターの魔石はいらないというか……」
意味がよくわからない。
完結にまとめてほしものだ。
「よくわからないな。簡単に話してくれないか?」
頬を赤くし、リリアは俺に向かって叫ぶ。
「モンスターの魔石は売りましょう。その代わり、アクト様の魔力を私に下さい!」
人の魔力は自然回復する。
モンスターの魔石は換金できる。
確かに理にかなっている。
間違いではない。だが、リリアは顔を赤くしている。
なぜだ?
「んー、いいよ。その方がお金も手に入るし。俺の魔力でいいの?」
「アクト様の魔力がいいんです!」
こうしてお金とリリアの修復は両立した。
しかしなんでこんな階層にウルフが?
たまたま何とかなったらいいけど、これって結構危険じゃ。
リリアとダンジョンから町に向かって歩き始める。
ダンジョン攻略。俺はまだまだ弱い。
俺自身を、リリアを守れるくらいに強くなって、いつかきっと……。
――
「ウルフは死んだか。もう少しできると思ったんだがな……」
一人の男がダンジョンの中からアクトを眺めている。
「しかし、ナイフが人になったのか? これはいい情報になりそうだな。くっくっくっく……」
男はダンジョンの陰に身を寄せ、暗闇と一体化する。
手練れと思われる男はなぜ一階層にいるのか。
男の狙いは一体何なのか……。
【後書き】
「読者の皆さん、こんにちは! アクトです!」
「こんにちは! リリアです!」
「『冒険の始まりと出会い』編完結です!」
「わぁぁ! これからアクト様との冒険が始まるんですね!」
「そうだね! 一緒に頑張っていこうなっ!」
「はいっ! よろしくお願いします!」
「そして、次話より『二人の生活と特訓』編スタートです!」
「次話の見どころは何と、私とアクト様のあんなシーンやこんなシーンが!」
「そ、そんなシーンあたっけ?」
「あ、ありますよ! それはもう、ベターっとしたような、濃厚なシーンが。まさか、忘れたんですか!」
「……それでは読者の皆様! 当作品へのフォローや」
「ページ内の【☆☆☆】を【★★★】への評価を」
「「よろしくお願いします!」」
「今回のあとがきは、駆け出し冒険者のアクトと」
「漆黒のナイフ、リリアでした!」
「「それでは、またねー」」
――「カット!」
「はい、お疲れさまでしたー」
「ふぅー。なんだか緊張するなー」
「ですね。でも、こうして楽屋裏でも読者の皆さんへメッセージを伝えられるのはいい事ではないですか?」
「そうかもしれないけどさ、こっちも結構大変じゃん。本編とは別にあるんだし」
「それはそれ。これはこれですよ! せっかくだし楽しまないと!」
「そうだなっ! リリアの言う通りだ。頑張ろう!」
「「おー!」」
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