BCC.NoTitle.

 記録者“C-0001”




 主な武具は製鉄された合金を用いた斧や直剣、弓矢、弩、槍。銃火器にみられる複雑な構造を持たないものが大半を占める模様。


 大崩落フォール・ダウン以前より西洋圏と呼ばれた地域においては直刃の剣が多く、亜細亜圏アジアにおいては湾曲した短剣が普及しているなどの地域的特徴も存在する。

 また一般的ではないが、大型の魔物の骨から削り出した武器の存在も確認された。加えて素材に魔物の一部を混ぜる事で武器に魔素を纏わせる研究をする一団や、発熱させて断面を焼き斬る仕掛け付き武器を開発する集団も確認される。


 ただし、亜人種アドヴァンスにおいては種族によって肉体的に優るもの、知略に長けた種族などが入り乱れて居るため武器使用の実態は不明。

 亜人種最大とされる巨人タロス種においては、棍棒しか使われていないという報告もある。

 筋力の弱い種族程、複雑な機構を組み込んだ武器を手にする傾向が強い。また、俊敏な種族においては刺突武器や肉を削ぎ落とす事に特化した薄刃の刃物を用いる事も確認されている。



 短機関銃や大口径砲といった銃火器の流通は限定的であり、原則天使のみが所持しその流通源については不明。

 また天使のみ励起兵装レトリビューションと呼ばれる複雑な構造体を扱う事が可能。励起兵装は一つとして同じ物が存在せず、その多くは大気中の魔素を消費して稼働する。中には血を消費して稼働する物も確認された。基本的な仕組みは私達の技術を参考にしており、独自の調整を加えた劣化模造品と思われる。ただし、極々稀に技術超越ブレイクスルーとしか言いようのない兵器も確認された。



 また、数ある武具の中で最も謎が多いのは深き淵の狩人が扱う武器である。唯一友好関係を築く事に成功した個体から聞き出せた内容は抽象的であり、再現性のないものであった。

 武具として使用しているものの、正式には祭具として扱われるものである。本人達が契った旧き存在の力の一部を降ろす為の器であるとされ、それを用いて同族を害することを禁止されているのだという。

 仔細については当人も預かり知らぬところであり、過去に一度だけ禁忌が破られたらしい。その際にはかなりの被害を産み、国が一つ冥き海に呑まれたとされる。

 ……この冥き海、というものが何なのかは明文化されてはいないものの良くないものであるのは確かだ。彼の話を聞くに冥き海は、崩落を招く因子とされる特異点リストに記載された事象に酷似している。

 深き淵の狩人は数が少なく、素性を明かすような真似をしない。とはいえ、誰かが冥き海に興味を示し深き淵の狩人を使って故意に愚行を犯す危険性は高いだろう。


 もしも同時多発的に冥き海を出現させられてしまえば私達に打つ手はなく、この世界そのもの──ひいては銀河系の崩壊を招く危険性は非常に高い。



 ──各位、深き淵の狩人の動向には注意されたし。

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