第20話 闇よりの声その1

「……ゆうちゃ~ん……。ゆうちゃ~ん……。」


今日も夜自室のベッドで寝ていると佳澄が私を闇に誘う声がする。


「……ゆうちゃーん。ゆうちゃーん…………………。」


もうやめて佳澄!!あなたは先月にもう死んだ筈じゃない!!


「……私達親友だよね…………?」


……結局その日も佳澄の声が朝になるまでずっと私を呼んでいて一睡も出来ずに私は学校に行った。



     ◆  ◆  ◆  ◆



2年生になって同じクラスになり私にも親友と呼べるような、そんな友達がようやく一人見つかった。


放課後一緒に帰りその後も頻繁にお互いの家を行き来する、私達はそんな「親友同士」な筈だった。


……3ヶ月前に京子が転校してくるまでは……。



「お前ら席につけーー!!今日は東京から転校してきた転校生を紹介するーー!!……じゃあ鈴木こっち来て。自己紹介よろしくな!」


その日の朝担任の勝又先生が教室に入ってくるなりそう言って教室の外に立っていた人影を手招きした。


「わぁぁーーーーーー!!」


その転校生が教室に入ってくるなり教室中が歓声に包まれた。


艶々とした黒いストレートヘアに白い肌、凛とした整った顔の彼女にクラスメート達の視線が釘付けになった。男子なんかデレデレとした顔をしていてイラッと来た。


「鈴木京子と言います。趣味は音楽です。皆さんよろしくお願いします!」


と京子が自己紹介すると拍手の渦が巻き起こる。


……ただその時はキレイな娘だな、と思ったけれどその後あんなことになるなんて私達には想像もつかなかった。



美人なのにそれを鼻に掛けたりせず積極的にクラスメート達と話したり遊んだりした結果、2週間もすると京子のクラスでの立ち位置はカーストの頂点に達しつつあった。


そんなある日の昼休み。


相変わらずクラスメート達に囲まれ女王様な京子が自分の机でイラストを描いていた佳澄に


「佳澄ちゃん。ちょっとミルクティー買ってきてもらえない?」


と自分の机に座ったままで声をかけた。


佳澄はハッと顔をあげると京子の顔をまじまじと見つめた。


「……おいおい!京子様がこう言ってるんだ早く買ってこいよ!このウスノロ!」


京子の机を取り囲んでいた一人の男子が佳澄に冷たい言葉を投げつける。


「……まあまあ佐伯くん。そんな言い方したら佳澄ちゃんが可愛そうじゃない。……いいのよ嫌なら……。」


その京子の言葉にクラスメート達が無言のプレッシャーを佳澄にかける。


やがてそれに居たたまれなくなった佳澄はすごすごと教室を出て購買部へミルクティーを買いに行こうとする。


その背中に京子が近づいていって自分の財布を差し出した。


「支払いはこれでして頂戴。」


にっこりと京子は佳澄に微笑みかけた。



……今にして思うとその時から京子は佳澄をターゲットにしようと考えていたのだ。

……その、陰湿なイジメのターゲットに……。



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