第7話 鬼蜘蛛その3
校舎へと戻ってきた僕は二階にある放送室まで何とかあいつらに見つからずにやって来た。
さっき音楽室で千花を襲っていた奴はどうやら職員室の方に移動したようだ。
……さてとやるか……。ゴクリと唾を飲み込む。
静かにマイクのスイッチを入れる。
ケータイのアラームをオンにしてマイクの真横に置く。
「よし!これでいい。」
一つ頷いた僕は放送室から出て、一階へと音を立てないように降りていく。
職員室がある場所とは反対方向にある教室の一つに入ってドアを閉めて教卓の下へと潜り込んだ。
後はアラームが鳴ってやつらが上にいっている間に職員室の詩織と合流すればいい。
……ピーッ、ピーッ、ピーッ、ピーッ!!
アラームの音が微かに聞こえてくる。
一応アプリで音量はブーストしてあるけど、これで大丈夫かな?
そう思ってジッとしていると、少し離れた所からガサガサガサッ!!とあいつらが階段を登っていくような音がした。
……心の中で30秒数えてから廊下に耳を澄ませる。
……よし!大丈夫そうだな。そう思ってそっと教室を出て職員室の方へと向かう。
……アラーム作戦が功を奏したのだろう。
職員室前にはあいつらの姿はない。職員室の扉を開いて、
「詩織、もうこっちは大丈夫…。一緒に学校から逃げよう…。」と小声で中の詩織に呼び掛ける。
「……亨くん?来てくれたんだ……。」
並んでいる机の陰から詩織がヒョコッと顔だけ出す。
「…あぁもう大丈夫だよ。早くこっちにおいでよ。あいつらが来ないうちに。」
そう僕が急かしても詩織はその場から動こうとしない。
「何してるんだよ…!早く出てきなよ…!」
小声ながらもわずかに声を張る。
……でも詩織は瞬(まばた)きもせず、ジッとこちらを見たまま微動だにしない。
「……詩織?一体どうしたのさ?」
「……亨ぐん。ざっきから何か体がいだいの。
何か、せながに刺さっでるみだい………。」
「……えっ?」
僕は彼女の方に近づいてその背中をみた。
……するとそこにはやつらのうちの一匹が、詩織の背後から、胴からニュルッと出ている触手を彼女の背中に突き刺していた。
……罠にかけたつもりが僕がこいつらの罠に
「…うわぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
思わず僕は絶叫してしまう。だ、駄目だ。
腰が抜けて、た、立てない。
……動けなくなった僕の背後からガサガサガサッ!とやつらの足音が聞こえて、あれ……?
何か背中が痛い……?
あれ……?何か、視界が……、ぼやけ、る……?
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