第49話・平和な日常戦争
玲奈たちが銭湯から戻ってきて、時計の針が9時を回った頃・・・・・・
保護した子供たちは、慣れない出来事に疲れたのか? 眠そうな顔をしていた。
脅威は去り、平穏が訪れる・・・・・・しかし、人は常に何かと争うことで平穏を得ているのかもしれない。
凪たちはリビングで、今夜の寝床をかけて、クジ引きをしようとしていた。
ちなみに、ベット以外の寝床はハンモックが2つ、2人掛けソファがリビングと地下室に一脚ずつ、ベットの数は男女部屋に各4つ、男女に別れてクジ引くということになり、女子の方はこうなった。玲奈・ベット 亜由美・ベット 咲・ソファ 文・ハンモック
一方、男子はというと・・・・・・
クジ引きの箱に全員が手を伸ばそうとしている中で、幽麻は気づかれないように能力を発動し、箱の中にあるクジをカンニングしてから「ベット」と書かれた棒を掴んだ。
ちなみに、残りの割り振りはこうなった。凪・ベット メリッサ・ソファ サム・ハンモック ヨイチ・床
イカサマしておきながら完全勝利とでも言うかのように両腕を上げて喜ぶ幽麻だったが、高校生である彼らからしてみれば9時はまだ寝る時間ではない。
「寝る前に映画でも見よう!」
凪はそう言ってディスクの入ったケースを取り出し、全員が飲み物などを持ってリビングに集まる。
映画館のような臨場感を出すために部屋を薄暗くし、ソファがあるにも関わらず、床に座ったりする者もいれば、ハンモック組はハンモックに腰を下ろして見ていた。
ヨイチは銭湯の道中の一件に関する調書の作成をしなければならないため、その場にはいなかった。
地下室にあるパソコンで作業をするためにリビングを後にしようとしたが、保護した少女がその後をついてきた。
「こっち来ても面白い物はないよ?」
ヨイチはそう言いながら振り向くと、テレビ画面が目に入って、凪が用意した映画がホラー映画あることが解ったため「ああ、なるほど」と察して、一緒に地下室へ行くことにした。
そして、リビングから恐怖心を煽るような効果音やスクリームが聞こえる中、ヨイチは作業に取り掛かり、少女に関しては9時以降にやるバラエティー番組を見始めた。
数時間後・・・・・・映画が終わって全員が寝床に着き始めた頃になって、傍から見ればとてつもなく下らない問題が発生した。
現場は2階の寝室前で、咲が男子の寝室に入ろうとしている幽麻の背中に抱き付いて足止めしていた。
「あの映画怖すぎて寝れそうもないので一緒にいてください」
咲はそう言いながら寝室の入り口の淵に両手でしがみ付いている幽麻を、ミシミシと音をたてながら引っぺがそうとしており、掴んでいる部分の壁に亀裂が入る力で引っ張られる。
「あのさぁ・・・・・・俺もう寝たいんだけど・・・・・・」(心の声・助けて! コイツ見た目以上に腕力が強いんだよ!)
幽麻は咲に諦めるようにそう言いながら、心の声で凪に助けを求めるも、イカサマを疑っていた凪は止めはしなかった。
「ベットで寝ないならメリーと代われ」(心の声・いい加減諦めろよ・・・・・・そこの修理誰がやると思ってんだ?)←建造物の修復経験は最早大工に転職してもいいレベル
凪はそう言うと、幽麻は今回の功労者でもあるメリッサに対する労わろうと思ったのか? 諦めて咲と一緒にリビングに戻る・・・・・と見せかけて能力を発動して寝室に入り込み、扉を閉めた。
光と同じ速度で動けるのだ・・・・・幽麻は流石に今のは行けただろうと心の底から安堵して「これで落ち着いて寝られる」と思いながら振り向くと、寝室の外にいたはずの咲が、正面から幽麻の胸元にギュッと抱き付いてきた。※幽麻の能力・光速移動 咲の能力・時間操作
幽麻(そういや、前にもあったなこんなこと・・・・・さっき見た映画よりこっちの方がホラーだろ? 逃げれない恐怖ってこういうのを言うんやな)
結局逃げることが出来なかった幽麻は、諦めて咲と一緒にリビングに行くと、ヨイチが寝落ちしていた少女をお姫様抱っこしていた。
「あら? その子寝ちゃいました?」
咲の質問にヨイチは「妹が小さかった頃を思い出す寝顔だよ」と言いながら、2階の寝室に運んだ。
幽麻(まあ、リビングだったらサムと文がいるからまだ何とか・・・・・)
しかし、ここで幽麻は致命的なことに気づいていなかった。地下室にいたヨイチが2階に向かったということは・・・・・地下室が無人であるということである。
「メリー、ベットが空いたからそっちで寝るといい」(心の声・骨は拾ってくれよな・・・・・)
幽麻は軽く絶望したような顔でそう言うと、メリッサは察したように「アッハイ」と返して寝室に向かう。
幽麻はリビングのソファーに行こうとしたが、咲はそんな幽麻の左腕を掴んで「下の部屋でこれ見ませんか(圧)」と「NO」とは言わせないような圧力をかけながらディスクケースを左手で幽麻に見せる。
リビングはハンモック組がいるため、映画の音で起こしてしまう・・・・・2人は地下室のテレビ画面の前で映画のセットをしていると、その場にヨイチが戻ってくる。
「あれ? まだ寝ないんですか?」
ヨイチが地下室に来ると予想していなかった咲は少し驚くと、ヨイチはデスクトップパソコンが置いてあるデスクのPCチェアに腰を下ろしながら「まだ調書の作成が終わってないんだ。ヘッドホンしてるから僕の事は気にしなくていいよ。どうせ終わったらアイマスクもつけて寝ちゃうし」と答えて、ヘッドホンを取り出す。※寝袋を敷くのが面倒くさいだけ
咲と2人きりになるのが未だに慣れない幽麻は、映画が始まって早々に気疲れしたせいで寝落ちしてしまった。
少し経って、ようやく調書が終わったヨイチは、一度ヘッドホンを外して咲と幽麻の方を向くと、映画を観ながら寝落ちしている幽麻を抱き枕にしている咲がいた。
無言でこちらを見るヨイチに気づいた咲は、小さい声で「何か?」と尋ねると、ヨイチは「別に・・・・・ただ、咲さん変わったなーって思っただけ」と言って、リビングに上がっていった。
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