第44話・オペレーション・バグバスター.フェーズ2
作動方式はともかく、落とし穴というトラップにものの見事に引っかかった4人は「おわあああああぁぁぁぁぁ!」と驚きの声を上げながら奈落の底へと落下し、穴の上からでは姿が見えなくなる。
一方、幽麻達は市内の2階建ての雑居ビルに来ていた。
「ここか・・・・・・にしてもただのギャングがビル1棟を拠点にするとはな」
幽麻は呆れながらも咲達を連れて中に入ると、入ってすぐの右にある受付と思しきカウンターには誰もおらず、正面のエレベーターからポーンと音が聞こえた。
4人は思わず身構えると同時に扉が開くが、中には誰もいない。
4人は揃って「なんだ誰もいないじゃないか」と思いながらエレベーターに乗り込み、幽麻は「上へ参ります」と茶化すように言いながら2階のボタンを押すとドアが閉まる。
だが、エレベーターのアナウンスが「下へ参ります」と言って、エレベーターが下へ降りている感覚が4人に襲い掛かり、幽麻は「上を押したよな?」と言って、もう一度2階のボタンを押すがアナウンスは「下へ参ります」と言って、上へ上がろうとしないうえにボタンは1階と2階と非常ボタンしかない。
「非常ボタンはありますか?」
咲がそう言うと幽麻は「それだ!」と言って、非常ボタンを押すが反応しない。それどころかエレベーターの照明が点滅し、降下する速度が上がってガタガタと激しい揺れが一向に襲い掛かり、メリッサと亜由美と咲は近くの手すりにしがみ付き、大きくよろけた幽麻は咲の方へ倒れそうになったためドンッと咲の顔の横を通るように両手を壁につく。
急な壁ドンに幽麻の方を向いていた咲は、こんな状況にも関わらず驚きと嬉しさでトゥンクと鼓動が強く脈打ったのを感じて頬を赤らめる。
急降下していたエレベーターだったが、急に速度が落ちて止まり、ポーンという音から「地下です」とアナウンスが流れて扉が開く。
扉の先はこんな街中の地下になぜこんなモノが? と思えるような光景が広がっていた。
一方その頃の凪たちは・・・・・・
「情報にはあったがまさかトラップで異空間に引きずり込むとは・・・・・・」
凪はそう言いながら玲奈と一緒に薄暗い洞窟のような場所を歩いていた。
「異空間って洞窟のような場所しか作れないのか?」
玲 奈は凪の左を歩きながらそう言うと、凪はこう言った。
「いや、魔道具を使えば自分の作りたいようなレイアウトで作れるからな。恐らく洞窟にしたのは俺たち侵入者を迷わせるためだろう。あとヨイチの予想通り、いざという時の逃走経路も組み込んでるな」
凪はそう言うと、落ちた際に別れてしまった文たちの安否が気になる。
「あの2人は大丈夫だろうか?」
玲奈の不安に凪は、希望的観測も含めてこう言った。
「異空間と言ってもそこまで広くは作れないからな。おまけに出入り口を複数用意している可能性もあるし、もしかしたら俺らみたいに引き摺りこまれた幽麻達と合流してる可能性だってある」
一方その頃・・・・・・
「足元気をつけろよ?」
幽麻は後続の3人にそう言いながら先頭に立って、薄暗い洞窟内を歩いていた。
咲は後ろから右手を伸ばして幽麻の左手を掴んでおり、メリッサと亜由美は暖かい目でその様子を見守る。
明らかに現場と自分達の空気の不一致なことに気づいた幽麻は、メリッサ達が付いてこれているかの確認も兼ねて「・・・・・・点呼・1!」と静かに言うと、後ろから咲が「2!」と応え、続くようにメリッサが「3!」と応えて最後に亜由美が「4!」といることを主張するように応える。
(やれやれ・・・・・・凪は社交的なところと母親の仕事上の関係で団体行動の際の統率力があるが・・・・・・バイトと自身の問題もあるせいで単独行動が多い俺をなぜ班長にした?)
ちゃんと全員いることに安堵しながらも顔色が悪い幽麻は、そう思いながら歩いていた。
そう、幽麻は普段から単独行動をしている時が多い上に顔に負った火傷のせいでルックス的に近づいてくる人間がいないのだ。←中学時代の影の仇名・顔面凶器
おまけに幽麻は他人とのコミュニケーション能力もそこまで高いわけではない。
今この場にいる人間では付き合いの長い亜由美とメリッサとは普通に話しを出来るが、未だに咲とはあまり上手く話すことが出来ないでいる。
しばらく歩いていると何かの気配を察知した幽麻達は思わず身構えた。
この時・・・・・・メリッサは右側に寄って壁に右肩がトンと当たると音もなく急に大きな穴が開いて、悲鳴をあげる暇も無く姿を消す。
そして、地面から3人を囲むように蟻の頭を模したヘルメットを被った緑の迷彩服を着た男たちが飛び出して来た。
数は6人で逃げ場はなく。地の利は向こうにある・・・・・・はずだった。
6人の男たちは一瞬で光速移動の幽麻に空中へ蹴り上げられ、更に追い打ちをかけるように咲が投げたナイフの雨を浴び、悲鳴をあげることすら出来ずに地面に落ちた。
「いくら何でも相手が悪すぎたようやな・・・・・・」
2人の余りにも手際の良さに何もできなかった亜由美が目の前の惨状に驚きながらそう言って「なあ、メリー」と後ろにいたはずのメリッサに振り返りながら声をかけるが、そこにはただの洞窟の壁しかない。
思わぬ事態に幽麻は「メリーは!?」と大声を上げる。
そして、サムと文はというと、何やら沢山の木箱が置かれた物置空間のような場所にいた。
「これがあいつらの荷物? 一体何が・・・・・」
文は疑問を口に出しているとサムが近くに置いてあったバールで木箱をこじ開ける。
中身を見た2人は驚愕したそこにはぼんやりと発行する金色の腕輪のようなものが大量に詰め込まれていたのだ。
「テクトム!? それも1箱でこれだけの量・・・・・・箱のサイズから見て同体積の鉄で100kg以上はあるわ」
文の驚きの声をあげる隣で、サムは何か確信を得たかのようにこう言った。
「もしかして団長が言ってたここ最近増えてる行方不明になった能力者って・・・・・・」
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