レキちゃんとソラくんは学園公認の男子カップルだけど色々とツッコミが追いつかない
八壁ゆかり
第1話:レキちゃんとソラくん、入学式に行く。そのいち!
私の名前は木村
中学でも全然目立たない存在で、多分クラスの98%は私の名前も顔も覚えてない。スクールカーストの最下層を、厄介事を避けて避けて生きてきたチキンだ。
でも、それは表の顔。
私世代の腐女子で、『
まだ書籍化はされてはいないが、噂では漫画化されるとか、アニメ化の企画が進んでいるとか、様々な憶測が飛び交っている。
そう、私の本性はこっち。
中学二年まで本の虫で、文章を書くのが好きだった根暗な私がBLに出会って見事に腐女子になって、自分でも書くようになって、力試しにウェブに投稿してみたら、もうこれ、何なのこの無双状態。
でも、嬉しかった。
なんの取り柄もないし、ブサイクだし、ちょいデブだし、って自分に自信を持てなかった私だけど、BL小説を書いて投稿すれば、喜んでくれる人がいた。ラブコメで笑ってくれた人がいた。悲恋モノで本当に泣いたって言ってくれる人がいた。連載の続きが楽しみだと、待ってくれる人がたくさんいる。
書籍化とか他のメディアミックスに関しては、私がもう少し年齢を重ねてから、ということになっている。すでに『事前予約』みたいな書籍化企画を約束をしてくれている出版社もある。
自分にそんな力があるなんて、思ってもみなかった。
自分に自信が持てるようになった。
残念ながらそれはリアルライフの話ではないけれど、このご時世、リアルだろうがネットだろうが、バズったもん勝ちでしょ。
だから、高校生活には何も期待してなくて、せいぜいハイスクールライフってやつのリアリティを描けるように周りを観察して、目立たないように、変なもめ事に巻き込まれたりしないように慎ましく生きて行く予定だった。
——あの二人に出会うまでは。
最初に視界に入ったのは、赤みがかった髪の小顔で背の低い小動物みたいな男の子だった。私が学校最寄り駅のホームを歩いていた時、たまたま顔だけ見えた。腐女子脳では、あ~典型的な受け顔~とか思ったけど、次の瞬間、私は目を疑うことになる。
人混みの中で、その子の右側にいた黒髪の長身の男子が、嗚呼、今思い出しても背筋が凍る!
そう、その男子が小動物男子の右側にいたんだけど、いきなり腰を落として彼の耳をペロッと舐めたのだ。
赤い舌が、はっきりと見えた。錯覚じゃない。妄想でもない。
すると小さい方の子がキャッキャと声をあげて、黒い髪をくしゃくしゃして笑ったのだ。そしてなんてことない様子で改札を抜けていった。まるで、それが日常茶飯事であるかのように。
一方で私は、買ったばかりの学生カバンをぼとりと落とし、呆然としていた。
自分が目撃したモノが一体何だったのか、脳が処理し切れていなかった。
だけど、『須田かや』の本能が告げていた。
『あの二人はいいネタになる』
と。
その直感に狂いはなく、後に彼らをモデルに執筆した作品が私のデビュー作となり、書籍はBL小説としては異例のベストセラーになって、アニメ化を経て実写映画化までされることになるなんて、もちろんその時は夢にも思わなかったけど。
彼らの名前は、レキちゃんとソラくん。
本人たちの与り知らぬところで、他の生徒たちに様々な気づきや涙や笑顔をもたらすことになる男子カップル。
そう、私もそのひとりとなる。これもまた、夢にも思わなかったことだ。
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