長閑な田舎の町で念願のひとり暮らしを始めた人が、でも突如発生した不思議な自然現象に悩まされるお話。
綺麗にまとまったSFショートショートです。本当にきっちり過不足なくまとまっているというか、サゲの部分まで読んだ瞬間すとんと腑に落ちる、納得感のようなものがとても心地よい作品でした。逆説、このワンアイデアがぴたっとハマる感覚がショートショートの魅力そのものなので、どうしても内容に触れられないのが困りどころです(ネタバレになるので)。
というわけで、たぶん本筋からは大幅に逸れた感想になってしまうのですけど、『自然がいっぱいの静かな田舎』の書き表し方が興味深いです。冒頭、主人公の目から見た田舎のいいところがたくさん語られているのですけれど、でも二話目冒頭、それとは真逆の方へと向かっていく町そのもの。なるほどさもありなんというか、当の自治体や商工会からしてみれば、自然がいくらあったところでただ不便なだけで何にもならないというこの現実。それぞれの思惑が噛み合わないというかぶつかり合うというか、このうまくいかない感じがほんのりやるせないお話でした。