198話 History
王都エルム 機密文書保管庫
一人の少女が、積み上げた200年程前の機密文書を横目に、まとめた資料に目を通す。
——ノース侯爵領 旧砂漠の国——
ノース侯爵当主マリオン閣下により、平定。
旧砂漠の国の初代当主には、戦時の武功から当時勇者と呼ばれていた者が、子爵として領地を与えられた。
子爵夫人に、アルマ王国宮廷魔導師を迎え入れる。
現在まで、我が国と同盟関係にある。
——覇権国家キヌス——
都市国家ラクバールの属国から、ラクバール第七王子を初代国王として、独立。
常勝不敗と名高いカレン将軍の指揮の元、現在の覇権国家の礎を築く。
カレン将軍以来、軍部の最高責任者が、我が国に年に一度訪れる慣習が、未だ残っている。
我が国と親交の深い同盟国である。
資料のページを、人物欄までめくる。
——クリスティーナ女王——
守護騎士物語の中心人物。
実在の女王であり、保管庫に残されていた公式文書や当時の侍従長の日記は別途資料に添付。
その他にも、吟遊詩人に作らせた詩や、民間伝承が残されている。
王国の歴史としては、無難に国を治め、現在の第七城壁の基礎を作った人物だ。
——マリオン・フロレンス——
ノース侯爵当主。
守護騎士物語では、最大の敵であり、王国の危機として登場する。
機密文書によると、当時の国王の軍を撃破後、なぜか和平交渉の記述があるのみである。
やはり、守護騎士物語は、真実なのだろうか?
その後、砂漠の国を平定。
ノース侯爵を弟に譲ると、初代ノース侯爵大使に就任。
これも、守護騎士物語に真実味を感じさせる。
歴史上の人物の為、引き続き資料を集めよう。
——獣人の少女——
守護騎士物語の登場人物。
架空の人物であると、考えられている。
追記1 保管庫で見つけた公式記録参照。
クリスティーナ女王が、傭兵の街で雇った中に、獣人の記述を発見。
追記2 国民街で、もっとも歴史のある獣人の酒場の初代店主が、宮廷料理人であったという民間伝承を確認。
更に調査を進める。
——ハーフエルフの少女——
守護騎士物語の登場人物。
架空の人物であると、考えられている。
追記1 当時の侍従長の日記から、クリスティーナ女王専属メイドの記述を確認。
仕事の出来なさに不満を書き連ねた日記だが、フィーナと呼ばれたその名前に、該当する貴族がいない。
出自のわからぬ仕事もできない者を、専属メイドにするであろうか?
更に調査を進める。
——女剣士——
守護騎士物語の登場人物。
架空の人物であると、考えられている。
ただ人気のある傍役なのか、紅蓮のフレイラという冒険譚が出版されている。
私も好きな物語だ。
——守護騎士——
守護騎士物語の主人公
実在の人物であると、民衆には考えられている。
「ただ、どれだけ探しても、形跡さえ見つからないのよねぇ」
黒い甲冑に身を包んだ、大柄の騎士。
クリスティーナ女王に付き従うその姿は、私を含めて民衆の憧れだ。
特別な立場を利用して、機密文書の保管庫に入れたのに、見つかるのは存在しないという事実ばかりであった。
公式記録に、クリスティーナ女王の騎士は存在しない。
理由はわからないが、生涯騎士を持たなかった唯一の国王ではないだろうか?
侍従長の日記や、その他の日記、公式行事の参加者を見ても、守護騎士物語の騎士を彷彿させる人物は、クリスティーナ女王の側に記されていない。
ただ…
最近、出版された本を、私は手に取った。
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