116話 傭兵の街の妖精さん
傭兵の街
城門近辺には、壁に叩きつけられた騎士。
そして、人型のナニカと、それに縛られる者達がいた。
その中を、何事もないように歩くクロード。
殿下と呼ばれた女性は、クロードの姿を見て、驚いた表情を浮かべていた。
「警告シマス。停止シナサイ」
「儂にそのような魔法は、意味をなさぬ」
そう言って人型を、六芒星で見透かすように観察する。
「やはり魂を二つに分けて、固定しておるの。エルフの秘術だと記憶しておるが、このような使い方ができるとは興味深いの」
騎士達は唸り声をあげて、拘束を解こうとしているのだが、まったく気にする事なく考察を呟いていた。
殿下と呼ばれた女性は、光に縛られながらも、冷静に状況を観察している。
「おぬし、遊んでおるのか?」
大人しく拘束される私が滑稽に見えたのか、クロードは怪訝な顔を私に向けた。
「無理に解かなくても、大元が来てくれると思いましてね」
その推察は、事実であるのだろう。
街の住人や傭兵達は、コレを見た事があるのか、もう安心とばかりに、野次馬のように集まってきた。
そして、野次馬の中をかき分けて領主…いや、変人エルフが現れたのである。
「やあ、僕の街で、争い事は厳禁なんだけどね?」
「私は、巻き込まれただけですよ」
「キミは面白い子だね。僕の防御障壁を、ただの剣で破るなんてさ」
呆れたような楽しそうな声色で、そう言うと変人エルフは私の拘束を解いた。
そして、殿下と呼ばれた女性に視線を移すと、優雅に一礼をする。
「ようこそ、僕の街へ。僕はこの街の領主さ」
そして、同じように拘束を解くと、騎士達へと視線を移す。
「さて、君たちは、あまり歓迎される入り方をしていないみたいだけど?」
「我らは、都市国家ラクバール第七王子直属の騎士であるぞ!」
騎士の一人が、抗議するように叫ぶ。
「そこの女を、差し出せば良し。断るようなら、本隊がこの街を蹂躙してくれよう!」
「うーん、そういうの僕わからないけど、君達は物騒だから、帰ってもらうね?」
そう領主が口にすると、騎士達の足元に、光の沼が浮かび上がった。
光の中に、叫びながら沈む騎士達と、それを見る野次馬達。
「やっぱあの人、イカれてやがる」
野次馬の中から、そんな声が漏れていた。
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