第83-1話 幕間 フィーナとくーちゃん

儂の名は、クロード・アークリッチ・フォン・デグリエルである。

アークリッチの称号に崇められし、魔導を極めし者ぞ。


魔族である儂は、長い年月で朽ちる身体に転生魔法を行使したのじゃ。

賭けであったが、まだまだ魔導の道は深い。


そして、儂は賭けに勝ったのじゃ。

新しい身体は、フィーナと名付けられた少女であった。


さて、この身体の魂を消滅させ、儂のものとしてくれよう。


……

………


誤算であった。

儂の魔力は底をついており、身体を乗っ取る事が出来なかったのじゃ。

だが、時間をかけて魔力を回復すれば…。


そんな考えは、フィーナが言葉を覚えて数年で消えておった。


儂の存在に気づいた彼女は、嬉しそうに話しかけてくるのじゃ。

これが、孫というものを持つ感情であろうか。


儂はいつしかフィーナの幸せを、願っておった。


フィーナが12の時、魔物に襲われた。

魔力が回復しておった儂は、フィーナと身体を入れ替え、それを滅ぼしたのじゃ。


レベルアップの福音が、懐かしかったの。


だが、六芒星でフィーナを見ると…魂が削れておった。

フィーナの魔力を使ったのが、不味かったらしい。

儂は、大気中の魔力を蓄える事にした。


16の時、貧しい村であった為、フィーナが売られた。

泣き止まぬ彼女を、必死に慰めたものじゃ。


心配はいらぬ。

新しい街に行けば、儂の死霊魔術で全てを支配してくれよう。

人族ならば、儂のレベルアップの糧となろう。


檻に入れられたフィーナを慰めると、儂は眠りについた。

街を滅ぼす為に、魔力の補充が必要なのじゃ。


次に目覚めたのは、予想外の場所であった。

人族とは思えぬ整った顔立ちの少女と、獣人の少女という不思議な組み合わせじゃ。


頬に痛みを感じる。

儂は無理矢理、起こされたらしい。


フィーナを落ち着かせる。

決して、儂の存在を悟られぬようにとな。


まずは状況把握と観察していたら、獣人の娘が楽しい所に連れて行ってくれたのじゃ。

眼福である。


フィーナには、相手の言う通りに従うように言い聞かせた。

まだ、情報が足りないのじゃ。


だがのぅ、我慢の限界である。

こやつ男であったとは…。


フィーナを傷つける者は許さぬ。

儂を押し倒した獣に制裁を…。


儂の名は、クロード・アークリッチ・フォン・デグリエル。魔導を極めし者ぞ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る