第82話 クロード・アークリッチ・フォン・デグリエル

「よ、よろしくお願いします…ご主人様」


俺の前で、額を床につけ銀髪のハーフエルフがひざまづいていた。


その横では、ルルが満足そうな顔をしていた。


「治療は終わりましたので、自由に使っていいですよ。ルルは散歩してきます」


満足そうな顔から一転、軽蔑の目を向けるとルルは立ち去る。


顔をあげた銀髪の美少女の瞳は、諦めの色が浮かんでいた。


どこかで見た瞳の色だ。

ガレオン子爵邸…褐色肌のメイドを思い出す。


あの後、彼女は口も聞いてくれなくなったな…。

懐かしさで、口元が緩む。


「あ、あの…」

「ああ、おまえ名前は?」


一瞬、目の前の少女の事を忘れ、思い出に浸っていた私は答える。


「…フィーナ」


自分の名前を、思い出すように呟いた彼女へ、


「フィーナ、おいで」


私は手招きする。


そして、側に来たフィーナを抱きしめた。

身長は私と変わらないが、柔らかく女の子の匂いがする。


フィーナの顔を見る。

彫りの深い美しい顔立ちだ。


銀髪に翡翠の色を映した瞳は、まるで宝石のようだった。


ただ、その美しい瞳には諦めの色が浮かんでいる。


…欲しい。

その美しさに欲望が負け、彼女を押し倒した。


フィーナは、諦めたように瞳を閉じ、


「…くーちゃん…」


また呟いた…。


その刹那、私の背筋に悪寒が走る。


「…儂に触れるな、下郎」


瞳を開けた彼女の口から、聞いた事のない口調と同時に魔力の塊が放たれた。


ルルが造った木の壁を突き破り、吹き飛ばされる私の脳裏には彼女の瞳が鮮明に残る。


その瞳には六芒星が輝き、青く変色していたのだ。


木の壁を突き破っても、勢いが止まらず、轟音と共に地面へと叩きつけられる。


なんなんだ、一体!?


起き上がり、穴の空いた壁へと顔を向ける。

そこには、六芒星の瞳を宿したフィーナがいた。


「ほぅ、頑丈な身体だな。だが、儂が消しとばしてやろう」

「誰だ、おまえは?」


あまりにフィーナと違う雰囲気に、問いかける。


「儂の名は、クロード・アークリッチ・フォン・デグリエル。魔導を極めし者ぞ」


そう名乗った銀髪のハーフエルフは、高らかに笑い声をあげた。



☆フィーナのキャラクターイメージ



https://kakuyomu.jp/users/siina12345of/news/16817139558740379208


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