第二章 盗賊生活♂編

第62話 未開の山林

砂漠の西の広大な山林


城塞都市ガレオンから北西に位置し、アルマ王国から見ると未開の地である。


南西に見えるいくつもの山々を越えれば、アルマ王国領と通じていると思われる樹海の中に、俺はいた。


そして、俺はこの樹海に来た事を、後悔していた。


虫に蜘蛛の巣に、生い茂る草…最悪だ。

昨日、女騎士を投げ飛ばした自分に、言い聞かせたい。


魔法で土壁と屋根を造り、一夜を過ごしたが、キャンプのように楽しかったのは、ほんのひと時…最悪だ。


文明とは程遠い草木を剣でなぎ払い、道なき道を進む。


思っていた冒険と全然違うぞ。

ああ、虫が気持ち悪い…

ムカデのような虫を踏みつけて、嫌悪感を感じる。


こんな事に使うはずではなかった剣に感謝しながら、またなぎ払う。


あの時は、良い案だと思ったんだ。

その言葉が口癖の冒険譚を思い出す。


マリオンの屋敷で読んだあの物語の主人公は、行く先々で、選択肢を間違えては苦労する、面白い物語だったな。


少しでも楽しい事を考えながら、生い茂る枝を剣でなぎ払う。


いくつか進むと、側面の背丈より伸びた草から、白い巨体が飛び出して来た。


スローモーションに感じるソレを、草木と同じようになぎ払う。


ホワイトウルフ…図鑑で見た魔物だ。

狼をふた回りにもした巨体は、一撃で命が刈り取られた。


これで、何度目の襲撃だろう?

囲まれているんだろうな。


初めて奇襲された時は驚いたが、今ではただの経験値だ。


赤く染められたホワイトウルフを見る。


料理はともかく解体をした事がないから、食料にできない…不便だ。


自由を満喫する事よりも、不便と虫の嫌悪感に嫌気がさしてきた。


…カチリ…


体から、魔力の波を飛ばす。

燃費が悪いから、あまり使いたくない欠陥魔法だ。

ただ、少しイメージを改良した。


自分の周囲に7つの反応…

かなり先に大量の反応…集落か。


この樹海や山には、魔物と盗賊が住み着いているとマリオンは言っていた。

魔物は会話ができないが、盗賊なら…。


目的地を見つけた俺は、7つの反応に意識を移す。

改良したサーチ魔法は、魔力の波を当てた時にマーキングをつけておいた。


爆発をイメージする。


…カチリ…


7つの反応から、轟音と衝撃波が広がる。


その1つで、爆散したホワイトウルフだったものを確認した俺は、集落の方へと歩みを進めた。


虫と蜘蛛の巣に悩まされながら…。

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