第47話 アームストロング騎士団長 改稿

城塞都市ガレオン


外周城壁の中は、通常の都市と同じように自給自足の為の畑や設備がある他に、傭兵団が駐屯している。


現在は大小様々な傭兵団が集まり、500人規模となっているそうだ。

そして、傭兵の為の商業施設が立ち並んでいた。


次の城壁を抜けると、兵士の街だ。

3000人ほどの兵士が住み、ノース侯爵領の各地から、単身赴任で着任しているらしい。

3階建の建物が多く、一人一軒というわけではなく、アパートのように暮らしているそうだ。


そして、最後の城壁を抜けると、騎士街と呼ばれる街であった。

兵士街と違い2階建で、庭付きの立派な屋敷が並ぶ。

数百軒は、あるのではないだろうか。


「騎士団の人数より、建物の方が多いのですね?」


馬車を護衛する騎士達を見ながら、疑問を浮かべる。


「五つの騎士団が、常駐しているからよ」


ノース侯爵直属の騎士団で、マリオンの騎士団ではないらしい。

一つの騎士団が100人規模で、騎士達は二人で一軒の家に住んでいるらしい。


騎士街を進むと堅牢な造りの城と、その横に屋敷が見えてきた。

城の前には100人ほどの騎士団が整列し、最前列には明らかに身分の高そうな男が立っている。


ノース侯爵家の家紋が刻まれた旗が風に揺られているのを確認すると、マリオンは馬を止めさせる。

周りの騎士よりもふた回りも大きい筋肉ダルマのようなスキンヘッドの騎士が、片膝をつき頭を下げた。


「降りるわよ」


マリオンは俺の手を取り、外に出る。


身分の高そうなその男は、銀色のプレートアーマーに身を包み、こちらへと歩み寄ってきた。


いかにも歴戦の猛者という雰囲気をまとう大男は、マリオンの前で再び片膝をつけて頭を下げる。


「ガレオン卿、お迎えに参りました」

「ご苦労」


立場の違いを明確に表す短い言葉。


「ただいつも伝えてありますけど、城の中でお待ちいただいて、構わないのですよ」

「…示しというものがございます」


片膝でも目線を上にあげなければいけない大柄な男は、笑顔で答えた。


「私の不在の間、問題はありませんよね?」

「ええ、ございません」


そう答えた男は、マリオンに左手を繋がれている俺を見た。


体格に似合わず優しそうな瞳が、私を観察する。

首筋と右手の奴隷紋を見た時、彼の表情が曇った気がした。


そして、片膝のままマリオンに近づくと小声で、


「ガレオン卿の趣味について、言いたくはないのですが…」

「言わなくて結構よ。それに悪弊はノース侯爵家の伝統だわ」


マリオンがハッキリと拒絶すると、彼は黙る。


趣味とか悪弊とか、嫌な予感しかしない…。


「アームストロング騎士団長、いつも通り全てあなたに任せるわ」


そう告げると、マリオンは俺の手を握ったまま、城の隣の屋敷へと歩く。


アームストロングと呼ばれた大男は、ただその姿を黙って見送っていた。

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