第45話 城塞都市ガレオン 改稿

城塞都市ガレオン


アルマ王国北部、ノース侯爵領の北にその都市は位置する。


王都から三つの都市を過ぎ、茶褐色の山間地へと足を踏み入れた。

そこから村に寄り、また二つの都市を過ぎれば、


「あれが、私の領地よ」


マリオンが示す先には、両側を切り立った山に挟まれた平地にそびえ立つ、巨大な城壁が現れていた。

この都市の先には、アルマ王国が蛮族と呼ぶ者達の土地があるらしい。


王都並みに高い城壁が、目前に迫る。

馬車が貴族門に辿り着くと、領主を出迎えるように兵士が立ち並んでいた。


それを横目に俺達は都市の中へと入ると、異様な光景が広がっていた。

外周城壁の中は、天幕を張り所属を示すように紋様の描かれた旗が、所々に立っていたのだ。


「あれは、なんでしょうか?」


陣地の周りに見える兵士は、服装に統一性がないどころか、盗賊に見える風体の者までいる。


…女奴隷を連れている者もいるし、兵士や騎士には見えないよな。


「あれは傭兵団よ。確かに王都にはいないわね」


マリオンは、おかしそうに笑う。


「治安が心配ですね」


女を連れて、昼間から晩酌をしている傭兵もいるのだ。


「外見も気性も荒いのが多いけど、ずっとまともよ。まともじゃないなら、すぐに盗賊に身を落とすしね」


信用で成り立つ武装集団だから、おかしいのはすぐに処分されるらしい。


「変なのが多いのは、否定しないけど。少なくとも傭兵団の幹部はまともよ」


彼女の言葉を聞きながら、傭兵達を小窓から覗く。

彼等の為の店なのか、木造建築の建物は交易都市より多く見えた。


そして、また一つ城壁を抜けると景色は一変する。

兵士の詰所が広がっていたのだ。


舗装された広い道を馬車は進む。

市民とすれ違う事はなく、数少ない飲食店も商店も兵士の姿しか見えない。


「市民はこの先の城壁の中で、生活しているのです?」


今まで見た都市とは違う光景に、疑問を抱く。


「ああ、市民はいないわ。あの先は、騎士街と私の城よ」


そう言った彼女の先には、城壁がまた一つ見えていた。

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