第31話 騎士 改稿

——騎士


領主と主従関係を結ぶ、直属の私兵だ。

直属の私兵という点が特殊であり、騎士の命令権は契約した領主が持つ。


例え国王であっても、領主の騎士に対して命令権はない。

当然、子爵や男爵の寄親にあたる、侯爵や伯爵にも命令権はない。


つまり、領主にとって騎士とは、自分を守る最後の盾として、もっとも信頼できる者でなければならないのだ。


「…なるほど」

 

マリオンの説明を聞きながら、窓の外を眺める。

馬に跨った屈強な騎士達が、周囲を警戒しながら、並走していた。


…なるほど。


万が一の事態にでもなれば、彼らは職も名誉も失うのだ。

王都近郊ののどかな草原といえども、その表情に油断はない。


「彼らにも、賢者の書を与えているのでしょうか?」

「ええ、与えているわ」

「触れると力が手に入るのです?」


俺の質問にマリオンは少し考え込むと、首を振る。


「いえ、レベルを上げる必要があるわ。ただ確認するのに、これは便利よ?」


そう言って、彼女はステータスを表示させる。


マリオン・フロレンス Lv12

ガレオン子爵


才能値などは、隠されていた。


「レベルとは、魔物を倒すとか?」

「言い伝えでは異種族を殺す事で、経験値が入るらしいわ」

「異種族ですか…」


魔物だけが対象でないとは、種族間戦争を推奨するようなシステムだ。


「それにステータスを開ける立場なら、魔物狩りが勧められるから、力が欲しいなら間違ってはいないわね」


そう言って、彼女は俺の頬を優しく撫でる。


「アリスちゃんの立場で、賢者の書に触れるのは特殊なケースだけどね」


マリオンは顔を寄せる。

その瞳は、どこか楽しげだ。


「エリー様が言ってましたけど、ステータスは見せたい部分だけ表示できるのですね」

「貴族街や月乃亭に泊まるなら、これで十分よ」


だが、変わらぬ俺の表情に諦めたのか、姿勢を戻すとつまらなそうに答えた。


…なるほど。

これが身分証明になるのか。


「私の才能値、見たいのかしら?」

「…うん?」


唐突な台詞に、首を傾げる。


「い…」

「見たいのよね?」


否定しようとしたら、言葉を被せられた。

自慢したいオーラを、笑顔と共に発している。


「…はい」


思わず頷いてしまった。


「ステータスオープン」


マリオン・フロレンス Lv12

ガレオン子爵

攻撃 3

防御 3

知力 6

魔力 6

速さ 4


「……」


エリー様を見たからか、この数値がどの程度かわからない。

どう反応して良いか困っていると、


「…どう?」


自慢げな顔で、問いかけられる。


「エリー様しか見た事がなく、基準が…」

「あの人は最年少王宮魔導師で、人外なのよ!人外!」


そんな事言われても…。

…とは思ったが黙っておこう。


「…数値の基準を、教えて下さい」


可愛らしく頬を膨らます彼女に、上目使いでお願いしてみた。

…ちなみにアリスちゃんとして過ごした日々で身につけた必殺技だ。


「そ、そうね。1〜2で平凡、3〜4なら達人、5なら一流、6以上は超一流。10は…人外よ」


私の必殺技を受けたマリオンは、頬を赤らめながら、教えてくれた。

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