2

「あっ、オレ、ロッカーに夏休みの工作置いたまま忘れて来たから、一旦戻るわ。ごめん、先行っててくれ」


 学校の帰り道、相川あいかわは突然立ち止まると、一緒に歩いていた隣の上田にそう言った。


「え? マジで? ああ、分かった。じゃあ……」


 上田が言い終わらないうちに、相川は学校の方へと駆け出して行ってしまった。


「あれ? 転校生はどこ行ったの?」


 少し先を歩いていた松岡が振り返る。


「忘れものだってさ……夏休みの工作の」


「あ? 工作のって、割りばしと爪楊枝で作った、黄緑色の恐竜のやつだろ? 確か達筆な字で名前と前の学校名まで書いてたやつ。でもあいつ、帰りの会の時に、大事そうに鞄に入れてなかったっけ?」


「え? そうだっけ?」


 上田は声をかけようと、急いで後ろを振り返ったが、既に相川の姿は小さくなっていた。


「じゃあ、あいつは何を忘れたんだ?」


 二人はお互いに顔を見合わせた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る