1
真人は彼らのことをよく知っていた。同じクラスの
彼らは真人に特別な用事があるわけではなく、ただの暇つぶしにいつも彼をここ、
駐輪場裏は駐輪場からは少し距離があって、殆ど人が通らない隠されたスポットだった。
「川村、おまえは本当にまぬけだよなぁ。これ、忘れもんだぜ」
田代は鞄から黒い男子用の体操服を取り出すと、高く放り投げた。
地面に音もなく着地した体操服には、「川村」と書かれてたゼッケンが縫い付けられている。
真人は慌てて体操服の方に駆け寄った。
「そういや、昨日の朝の会の出席取る時、こいつ、先生に名前飛ばされてたろ?」
田代は慌てて水着を鞄にしまう真人の様子を満足そうに観ながら、鼻で笑った。
「マジで? 先生にも忘れられてんじゃん? キヨちゃん悲しぃー!」
清里は悲しげな表情を作ると、真人の眼前まで顔を近づけた。学年で一番背の高い清里は、真人と並ぶと頭一つ高くてとても同学年には見えなかった。
真人は恐怖で思わず後ずさる。その様子を見て、三人は楽しそうに笑った。
「キャハハハハ!! キヨちゃんまじ距離間近いって! バイキン感染しちゃうよー! ゲホッゲホッって! ってか、『先生にも』って何? キャハハハハ!!」
林はわざとらしく大きな声を出して笑った。その度に、目深に被った野球帽が大きく揺れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます