『半沢直樹』、あるいは高度資本主義ゲームにおけるプレーヤーについて

電柱保管

1『半沢直樹』症候群

「サザエさん症候群」と呼ばれる憂鬱がある。日曜の夕時、アニメ『サザエさん』を見ながら、翌日からの仕事や学業の始まりを思って物憂い気分になる、というものだ。世の中では対処法も議論されるくらい、多くの人が実感する精神状態らしい。

 そう考えると、TBS系日曜劇場『半沢直樹』が空前の高視聴率を叩き出した、というのもちょっと不思議な話に思えてくる。なにせゴリゴリのビジネスドラマである。19時には「サザエさんも終わった。はぁ明日からの仕事つらいなぁ」とため息を落としつつ、22時には「倍返しだ!」と鼻息を荒くして奮起するわけで、なんとも忙しい。この間、わずか3時間。勤務間インターバルもなにもあったもんじゃない。いや、テレビを見ているだけなので別に働いちゃいないのだが。

 先日放送された『半沢直樹』は、ドラマとしてはシリーズ第2作、前作から7年ぶりの続編らしい。もちろん前作が大ヒットしていることは知っていた。けれど前作は見ていない。先日やっていた総集編も見逃した。池井戸潤の原作も未読だ。したがって、私にとってこれが人生初の『半沢直樹』であった。

 いや、おもしろい。噂にたがわぬ、と言ってさしつかえないだろう。ストーリーは痛快で、間延びがなくテンポも心地よい。主演の堺雅人をはじめとする俳優陣のけれんみあふれる芝居にも惹きつけられた。

 しかしなによりも興味深かったのは、このドラマに「人間」が出てこないことである。

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