打ち上げパーティー?
学校が終わった帰り道。わたしはもえちゃんに
ナツメさんのお父さんが痛みがひいたので、おかあさんやおばあちゃんと協力してお店を
それで、ナツメさんがお礼にって油揚げをごちそうしてくれるって言って、そこからもえちゃんと二人で相談して、もえちゃんのお父さんがお店で焼いて食べさせてくれるってことになったんだって。
何だか、わたしはほとんど何もしてないし、いいのかなあ。
もえちゃんにとりあえず座ってて! と案内されたお店の一番奥のお
開店前とは言え、お店だし、ヨジロウには念のためキツネじゃなくて少年モードになってもらったの。
あんまりにも待ち遠しすぎて、すっかり
ぐったりとテーブルの上に
「おいメロリ。そのふざけた着物、どうしたんだよ」
「じゅうしょくが、おそなえ、してくれた」
「
「うん」
「ふーん。今の
「あ、ねえ、メロリって、あの、ここからちょっと離れたとこにあるお寺から来たの?」
メロリはこくりとうなずいた。
「あのほら、うちからちょっと行ったところの大きな橋わたって、右に曲がってちょっと行ったあたりの……」
「そう」
「そっかあ! お寺の名前忘れちゃったけど。わたしのお家のお墓、あそこにあるんだよね。メロリって本当にあそこにある、子供の観音さまなの?」
メロリはほっぺを赤くしてうなずいた。
照れてる?
「そうなんだあ。あれ? メロリがここにいるってことは……観音さまの
「あれは、いれもの。だから、いまは、からっぽ」
「え? えーと、とりあえず、お寺から観音さまの像がなくなったりはしてないんだ?」
「うん」
よかった。大騒ぎになってたらどうしようかと思ったよ!
「わたしも小さいころ、何度かあの観音さまにお菓子お供えにいったりしたなあ。そう言えば、お着物やおもちゃや、
つまり、そのお
「かわいいよね、その浴衣。わたし好きだよ」
そう言うと、メロリは一度大きく目を見開いてから、ほっぺをまっ赤にしてにっこりとほほえんだ。
「うわあ~んかわいい~!」
思わず全力でハグして、なでなでしまくる。
「おまたせ~!」
制服の上にエプロンを着たもえちゃんが、おぼんにお皿を四つのせて持ってきてくれた。
エプロンもシンプルだけど、ジーンズ
「ありがとうもえちゃん! でも本当に、お
「もちろん! お
「でもさすがに……」
わたしがそんなことを言っているうちに、テーブルの上には
「おおおお~! これだああ~! これだよ!」
ヨジロウが見たことないくらいうれしそうな笑顔になった。
でもヨジロウが他の油揚げじゃなくて、これがいいって言うのがわかるくらい、見た目にも他とは全然ちがってた。
まず
「ヨジロウ、ちゃんといただきます、するんだよ?」
「お前、馬鹿にしてるだろ」
うっだっていっつも家だとキツネさん姿で食べてるから、お
ごちそうになってるわけだし、マナーはちゃんとしないと!
「いただきます!」
ヨジロウが子供みたいに顔の前で手を合わせて、うきうきした声で言った。
わあ、昨日カワグマと戦ってた人と
ハフハフ言って食べてる姿が、とっても幸せそう。
ふふふ、良かったね。
「でももえちゃん、やっぱり悪いよ」
「いいのいいの、これね、お父さん、前からお店のメニューにしたかったんだって。だから、ミントたちと一緒に
そこまで言ってもらえるなら、お言葉に甘えようかな……。
「ナツメさんにもお
「まあ、この油揚げがナツメくんからのお
「あ、そっか」
「ふふ」
もえちゃんは一度戻って、四人分の飲み物を持ってきてくれて、わたしの向かい、ヨジロウのとなりに座った。
「ね、ヨジローくんの仲間は、ヨジローくんも入れて七人いるんだよね?」
もえちゃんがメロリにストロー付きのりんごジュースを
「ほうはが」
ヨジロウは二つ目の油揚げをかじりながら答えた。
「メロリちゃんも、その一人なんだよね?」
もえちゃんが言うと、メロリが無言でうなずいた。
「つまり、あと五人、この辺りに仲間がいるってこと?」
もえちゃんの質問に、ヨジロウはいったんお
ごっくんと飲み込んで、もえちゃんからもらったお茶を飲んで、一息ついてから
「この辺りかどうかはわからねえんだよ。俺たちはもともと、
人の世を、守ろうとした。
杏姫が死んじゃってからも、杏姫の最後のお願いを叶えるために、それぞれが
わたしはなんとなく気になったことを、ヨジロウに聞いてみた。
「ヨジロウも、守ろうとしたの?」
「……まあな」
「じゃあどうして、封じられてたの?」
「……」
あれ?
ヨジロウが口ごもった。
「ちょっとヘマしちまったんだよ。だが、二度はねえ」
うっなんかこわい顔になった。
「ヘマって?」
「そんなことより、もえはどうして他のシキガミどもの話を聞きたいんだ?」
そう言って、ヨジロウは三つ目の油揚げにかじりついた。
「これからまた、昨日みたいな不思議なことがあるのかなあと思って! だったら、記念のために、
「えええええっ?」
「だって、言い伝えに残ってる、大昔のシキガミが今目の前にいるんだよ! すごくない? それに、ミントのスマホのアプリの
「そんな、ゲームみたいな……」
苦笑いを浮かべるわたしをよそに、ヨジロウは三つ目の油揚げも飲み込んでから、悪役スマイルになって答えた。
「まあ他のヤツらがどこでどうしてるか……予想のつくやつは何人かいる。ミント。お前が集めたいなら、その気になれば集められるだろ」
「あああ。集めるの?」
「集めようよミント!」
えええ~どうしよう~。でもさっきすごい遠くにいる子もいるって言ってなかった?
「ただ、お前が
「え?」
なにそれどういうこと?
なんだか嫌な予感しかしないことを言いながら、四つ目の油揚げをかじった。
ん? 四つ目?
あれ? もえちゃんが持ってきてくれたお皿、一人分に二つずつ油揚げが乗ってたはず……はっ!
「ああ~! ヨジロウ! それわたしの油揚げでしょー!」
ヨジロウったら、真面目な顔してわたしの油揚げ、全部食べちゃってるじゃない!
「いいだろこれくらい! カワグマを退治した
「いや確かにそれはそうだけど……でもわたしも食べたかったじゃん!」
メロリがおどおどと、自分のお皿に残っていた一つを差し出してくる。
こんな小さい子からもらうのは良心がとがめるよ!
「い、いいんだよ、メロリは、ね!」
「あはは、お父さんにおかわり焼いてもらう? まだあるかな?」
「いいよいいよ! さすがに悪いって! 帰りに、ナツメさん家のお
くうっ……油揚げもそうだけど、もえちゃんのお父さんのお料理も食べてみたかったよう……悔しい!
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