アヤカシ
ちょっと悩んだけど、もえちゃんとナツメさんに、ヨジロウのことを説明した。
おばあちゃんの家の向かいにあった小さなお
「ミントったら! どうしてもっと早く教えてくれなかったの?」
「ごめんもえちゃん。こんな話、誰にも信じてもらえないと思ったから」
「信じるよ! ミントの言うことだもん! 信じるに決まってるじゃん!」
「ありがとう、もえちゃん!」
もえちゃんの言葉がうれしくて、思わずだきついちゃった。
「信じるよ。俺も」
ナツメさんも、何だか
「そうか、よくわからないが、いいこころがけだ」
ヨジロウがえらそうに胸をはってそう言った。なんでこう、えらそうなのかな。
「そんなことより、お前、さっきアヤカシって言ったよな? それなんだよ」
ナツメさんがヨジロウに向かって聞いた。
「やっぱり、赤ずきんちゃんの
「赤ずきん? 何だそれは。そんなかわいいものではないぞ」
「え?」
赤ずきんちゃん、関係ないのかな?
「アヤカシとは、お前たち人間が、古い時代にそう名付けた、
「カイイ?」
わたしが頭の上にはてなマークを浮かべている横で、もえちゃんは目をキラキラさせて拳をにぎった。
「怪異! 不思議なこと! 科学じゃ
「カガクというのはよくわからないが、お前たち人間の力では太刀打ちできないものだ。怪異に立ち向かうなら、俺たちシキガミに頼るのが一番だ」
「ヨジロウは、アヤカシじゃないの?」
ふと思って聞いてみると、ヨジロウは少し
「うっ……まあ、もともとはアヤカシと同類だが……今の俺はちがう。俺は、シキガミだ」
「シキガミとアヤカシってちがうんだ?」
「ああちがう。大ちがいだ! とにかく俺はシキガミだ。いいな」
「う、うん、わかった」
「それで?」
わたしとヨジロウの間に、真剣な顔のナツメさんが割って入った。
「父さんのケガは、その、アヤカシをなんとかしなくても、治るのか?」
「ふむ、良い質問だな。多分、治らない」
「えええっ!」
おどろきの声をあげたのは、わたしともえちゃん。ナツメさんは、何だか納得したようなようすで、うつむいた。
「やっぱりな。今朝、すごく痛がって、熱もすごくて、やっぱり店休みにして、今日も病院につれてくって母さんが言ったんだ。そしたら父さん、大丈夫だって怒り出して……怒らなくてもいいのにさ」
「朝のケンカ、その声だったんだ」
もえちゃんが心配そうな声で言った。もえちゃんが心配になっちゃうくらいだから、きっとすごいけんかだったんだろうな。
「アヤカシの怪異に当てられた人間は、
「じゃあ、どうすれば」
ナツメさんが落ち込んだ声でつぶやく。もえちゃんもうつむいてしまう。
「アヤカシを
ヨジロウがドヤ顔で言った。
もえちゃんとナツメさんが、目を見開いてヨジロウを見た。
「俺がついている。アヤカシは必ず退治してみせる」
「ほ、ほんとかよ」
ナツメさんが一歩前に出たとき、予鈴が鳴った。
「あっ! もう行かなくちゃ」
「詳しくは、放課後だね。ナツメくんも、それでいいよね?」
「ああ。部活は休む」
「なんだ、どうした」
「また授業があるの。ヨジロウはココで待ってるか、スマホに戻って! 授業が終わったら、どこかに集合しよう」
「ならば、となりの神社にしろ」
「へっ?」
ヨジロウの提案にわたしはおどろいた。学校のとなりにあるけど、初詣でしか行ったことないんだよね。何だか、森の中で、夏でも、日中でも真っ暗で少しこわいし……。
「いいねえ! ついでにおじさんのケガが治りますようにってお参りしていこう!」
もえちゃんが明るい声で同意した。こわいけど、仕方ない……!
ヨジロウが、また光る玉になってスマホに戻ったので、わたしたちも教室に戻ることにした。
うう、放課後、何だか緊張する!
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