電池式のシキガミさま?
買ってもらってからそこまで電池が減ったの初めてでびっくり!
どうして? 壊れたの? と思ったら、ヨジロウの声がして。
「この札、雷に似た力をたくわえていたから、油揚げの代わりにいただいたぞ」
だって!
つまり、お腹が空いたからスマホの充電を食べてお腹いっぱいにしたってことみたい。
信じられない!
シキガミって電気消費しちゃうわけ?
あの
ヨジロウは、わたしが文句を言うひまもなく、またパズルゲームのアプリのアイコンの中に吸い込まれて消えちゃった。
なんでそこに入るのかな?
そんなことがあったから、昨夜はスマホを充電しながら、朝になっても十五パーセントだったらどうしようって思ったけど、今朝見たら無事に充電されてた。
そして今朝も、いつもより早く起こされたってわけ。
お母さんはわりと、わたしが一度食べたいって言うとずうっと同じご飯を朝に出しちゃうくせがあって、今朝も予想通り、何も言わなくても焼いた油揚げが出た。
ちなみに今朝は「宿題の確認をしたくて」と嘘をついて、朝ごはんを部屋に持って行って食べた。またパパに見つかったらいやだもんね。
白キツネの姿でうれしそうにパクパク油揚げを食べるヨジロウを見てると、昨日の少年ヨジロウと同じ存在だなんて、とても思えなくなってくる。うれしそうにシッポふりふりしちゃって。
もういっそ、ひろったから飼いたいって言って、この姿のままお母さんに見せちゃった方が楽なんじゃないかな。
お父さん、
「はあ」
「おいミント」
「なあに? ヨジロウは悩みが少なそうでいいね」
「何言ってるんだ。しっかりあるぞ、悩み。それを解消するためにも、今日は職人の息子にしっかり聞いてくれよ」
「職人の息子って……ナツメさんのことね。悩みって油揚げのことでしょどうせ」
「大事なことだろ! お前、好物が食べられないってすごく辛いんだからな!」
「はいはい」
そんなことを考えながらバス停に向かって、バスの中でもえちゃんと合流する。
もえちゃんは今日もおしゃれでかわいい。けど、どことなく笑顔がくもっていた。
「おはよう、もえちゃん」
「あ、ミント。おはよう」
「なんだか、元気ないね? 大丈夫?」
「うん。あ、昨日、ごめんね」
「まだ言ってる! 大丈夫だよ! 本当に気にしないで」
「ありがとう」
もえちゃんは力なく笑って、すぐにうつむいてしまった。
本当にどうしたんだろう?
「もえちゃん、何かあったの?」
「うん……今朝、おとなりから、大声が聞こえて」
「え? おとなりって……お
「うん。ナツメくんと、お父さんがけんかしてるみたいだった」
「ええっ……あの、昨日聞いた話の件かな?」
赤ずきんちゃんの
そんなこと……ほんとにあるのかな?
「うん多分……ナツメくん、
「そっかあ」
こんなに落ち込んでるもえちゃん、初めて見たかもしれない。なんとかしてあげたいな……。ヨジロウの油揚げはどうでもいいんだけど、もえちゃんには元気でいてほしい……!
「もえちゃん、あとで一緒にナツメさんのところに行ってみようよ」
「え? いいの、ミント……二年生の教室だよ?」
「うん、いいよ! もちろん! もえちゃん、ナツメさんが心配なんでしょ?」
「ちっ……!」
あれ? もえちゃんの顔が真っ赤に……
「ちがうよ! ナツメくんが心配なんじゃなくて、おとなりの、そう! ご近所さんのお家だから、お家全部が心配なの! おじさんも、おばさんも、おばあちゃんも!」
「う、うん、そうだよね。けがしたの、お父さんだしね!」
もえちゃんは優しいなあ。
強く決意して、わたしはいつもより力をこめてバスのステップを降りた。
よし!もえちゃんのためにも、ナツメさんに話を聞くぞ!
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