わたしの学校!
いつもより早起きしたから、バス停にも
わたしの中学校の制服はセーラー服。白地に青いラインが二本入ってる襟で、スカートは
バス停は、なあんにもない道路にポツンと目印が立ってるだけ。学校の前の停留所みたいに小さい小屋もないから、夏はけっこう暑くて大変。
なあんにもないって言ったけど、ほんとにほんとで、小さな道路の周囲はほとんどが田んぼや畑。ところどころに民家があって、田んぼのずうっと向こうは川の
そう!ここは、
おばあちゃんの家は車で三十分くらいのところにあるんだけど、あっちはまだ街中なんだよね。家もコンビニもスーパーもいっぱいあるし、新幹線が停まる駅も近いよ!
わたしがこれからバスに乗って向かう
実はわたし、小学生のときにこっちに転校してきたの。
前はおばあちゃんの家の近くの団地に住んでて、小学校も街の中にあった。前の学校はもっと新しくて大きくて、クラスも、教室も、もっとたくさんあった。当然だけど、生徒の数も全然違ってて、あっちの学校の一学年の人数のほうが、今の学校の全校生徒の人数より多いんだよね。転校したとき、お母さんが言ってた。ミントの新しい学校、全校でも前の学校の一年生全員の人数より少ないのよって。
今の学校は、小中学校が合体してるっていうのに、二階建てで、前の学校よりも小さい。教室の数が前の学校の半分もないくらい。すぐ裏が山だから、夏でも割と涼しいんだけど、学校のいたるところに虫が出る。すごい出る。これだけはどうしてもなれないんだよねえ。
でも、すごくのんびりしてて、いいところなんだよ!
ブーッとポケットのスマホが
取り出すと、ヨジロウがこっちを見てて、お耳がピコッと動いた。
『おまえ、学校とやらに行くのか』
「うん。ヨジロウが言ってた白花城の
『ふうん。そうか』
「ところで、バスもうすぐ来るから、みんなの前で声出さないでよ? スピーカーから聞こえてくるんだから」
これが困ったことに、音量をゼロにしててもヨジロウが話すと音量が上がっちゃうみたいなんだよね。
『……
「聞いてる?」
ブォオオという、古びたバスのエンジンの音がした。
顔を上げると「
「ほんとに、静かにしててね」
念の為もう一度言うと。スマホをポケットにしまった。
バスがプシューっと音を立てて目の前で停まる。中には十人くらいの中学生と数人の小学生が乗ってる。もちろんみんな同じ学校の生徒。
バスの真ん中あたりのドアが開いたので乗り込む。ちなみに当然だけど降りる人はいない。
「おはようミントー!」
バスに乗るなり、同級生のもえちゃんが声をかけてくれた。
「おはようもえちゃん!」
もえちゃんが座ってる椅子の横に立って、つり革をつかむと、バスがゆっくり発車した。
「ミント、昨日なんかあった?」
「えっ?! どうしてっ?!」
もえちゃんは、茶色がかった大きな目で、わたしをじっと見つめてきた。
「その……制服からお
アッ……なんだそういうことか。びっくりした。超能力とかでヨジロウのことがわかっちゃったのかと思った。
「あ、うん、昨日おばあちゃんの家で法事だったの」
心の中でほっとため息をつきながら答える。でもお線香の匂い、まだするんだ。お母さんが
「そっかあ、おつかれさま」
そう言って笑うと、もえちゃんは
そうそうさっき話した「スカーフを器用にリボン結びにしてる子」ってのがこのもえちゃん。もえちゃんは器用だし、おしゃれだし、
「ねえもえちゃん。お城に
「ああ、ご
「ええっ! 知ってるの?」
ていうか、存在したんだ。すごい、もえちゃん。本当になんでも知ってる。
「うちの近所のお
「へえ~! 知らなかった!」
「おばあちゃんから聞いたの?」
「え? あ、うんそうそう!」
まさか『突然現れた謎のキツネさんに食べたいって言われたの』なんて、言えないよね……
「ふうん。帰りに一緒に買いに行く? 一枚百五十円くらいだったはず」
「えっいいの? ありがとう!」
「ううん! わたしは帰り道だもん。ミントこそ、遠回りになっちゃうけど平気?」
「うん、平気!」
お母さんにスマホで『今日、もえちゃんと遊んで帰ります』ってメッセージを送ろうと思ったところで、バスが停まった。
「白花小中学校前~」
みんなそれぞれ定期券を用意して降りる準備を始める。わたしもかばんの横に下げてる定期券入れを持ってもえちゃんと一緒にバスを降りた。
田舎だから、都会みたいにスマホやICカードでピッとかしないの。昔ながらの紙の定期券を運転手さんに見せるシステム。
わたしもせっかくスマホ持ってるのに、テレビで見るみたいに、スマホをかざしてシャラ~ン! みたいなのやってみたいのに……! この辺りのバスや電車じゃ、それは使えないんだって。パパが、田舎だよなあって笑ってたけど、パパがその田舎のバスを運転してるんでしょ! もう!
バスを降りてすぐ、わたしはスマホをとりだした。
校門の前で先生が黄色い旗を持って立っている。
校門をくぐったらスマホは使用禁止になっちゃうから、今のうちお母さんにメッセージを送らなきゃ。
「もえちゃん、お母さんに寄り道して帰るって連絡していい?」
「いいよ……って、みんと、足元……!」
「え……?」
なになに虫っ? 慌てて足元を見ると、そこにはふわふわのまっ白な毛玉がいた。
ヨジロウ!
「わあ~かわいい~!」
「なんだあれー!」
小学生たちの甲高い声がする。
どうして出てきちゃったの? どどど……どうしよう!
ヨジロウはわたしを見上げると、タタッと走り出した。
「あっ……!」
学校の裏、お城山の中へ。ふもとの、学校の隣りにある神社の鳥居をくぐって、あっという間に見えなくなってしまった。
「ビックリした……! なんだろう? 犬? どこから来たんだろう?」
「そ……そうだね……びっくりしたね」
どうしたんだろう、ヨジロウ。家が見つかったのかな? もう戻ってこないのかな。
スマホの画面を見ると、ヨジロウのいない、以前のスマホの画面に戻っていた。
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