わたしのシキガミさま!
祥之るう子
迷子のシキガミさま1
まっ
「ありがとうございました」
お母さんとおばあちゃんがそう言って頭を下げたので、わたしも
「あっ、ありがとうございました!」
お坊さんは、わたしを見てにっこりほほえむと、車に乗って帰っていった。
「はあ~終わったわね。ミントも、おつかれさま」
お母さんがにっこり笑ってわたしを見た。
「ミント、静かにお
おばあちゃんが
「もう、おばあちゃんったら、わたしもう中学生だよ! お坊さんのお
「あらあら、ミントったら、おじいちゃんのお
「お母さんまで! 何回も聞いたよ、その話! 今はもうするわけないじゃん!」
おばあちゃんもお母さんも、わたしのこと、いつまでも幼稚園児くらいに思ってるんじゃないかな、もう。
この前中学生になったし、今日だって、小さいころに
わたしは
今日は法事で、おばあちゃんの家に来てるの。
さっきは、その法事が終わって、家の前でお坊さんを見送ってたところ。
お母さんとおばあちゃんは、さっさと家の中にもどっていったけど、わたしはちょっと寄り道……。
家の向かい側、道路の向こうを見る。
今朝、朝早くに来たときからずっと気になってたの。
お向かいの古いお
今日は日曜日だから、工事もお休みみたいで誰もいないけれど、三角コーンで囲まれて「危ないから入ってはいけません」っていう定番の
看板の向こうには、ほとんど土台しか残っていないくらいまで壊されてしまった家が見えてる。
前は、わたしの背より高いきれいな植木がぐるりとお
その門のすぐ横に、道路を見守るみたいにそっとおいてある、小さなお
今はもう門も
わたしは道路をわたって、お社の目の前に立った。
二リットルのペットボトル一本分くらいの大きさしかない、小さなキツネさんの
キツネさんたちの間には、お
この台、以前は毎日かかさず、お
この家神さまの、小さなキツネさんがかわいくて、わたしはおばあちゃんの家に来るたびに、いつもここにお参りしてた。
なのに今朝、おばあちゃんから聞かされたのは「この家神さまも一緒にとり壊されるらしい」という話だったの。
そんなの、いや。いやだけど、子供のわたしではどうしようもない。この家に住んでいたおばあちゃんは先月亡くなってしまって、ひとり暮らしだったから、この家に住む人はもういないんだって。
もうこの家に帰ってくる人もいないからって、親せきの人が壊すことにしたんだって。
小さなキツネさんの前にしゃがみこんで、いつものように手を合わせてみる。
「こんなにかわいいのに、壊されちゃうなんて。かわいそう」
思わず声にだしてつぶやく。
そうだ! 無くなっちゃう前に写真、
ポケットから、入学祝いでおばあちゃんに買ってもらったスマホを取り出す。ピンク色でかわいい! ケースもピンクだよ!
まだまだ使いこなせてないけど、写真を撮るくらいなら…っと。
何枚か写真を撮ると、ポケットにスマホをしまって手を合わせた。
「今までありがとうございました」
特に何かお願いしたこととかもないんだけどね。なんとなく!
「おい」
「わあっ!」
何? 何? 急に後ろから声がしたんだけど!
首をすくめてふり向くと…… あれ? 誰もいない?
「気のせいかな?」
後ろには誰もいなかった。道路の向こうのおばあちゃんの
「おい! どこを見てる!」
「ええっ?」
やっぱり聞こえた!
あれ?
「えっええ~! かっ……!」
かわいい~~~~~!! 足元にちょこんと、まっ白でお耳がおっきな……ネコ? ネコかな? とにかくかわいい生き物が座ってる! お耳がピンとたって、大きなシッポがゆらゆらゆれてる! キツネ? でもこんな街中にいるわけないし……犬? 犬かな? 大きさは家神さまのキツネさんと同じくらいだね。
首にかかってる真っ赤なスカーフがかわいい!
「どこから来たんでしゅか? まいごでしか?」
思わずしゃがんで抱き上げると、なんとおもいきりほっぺに肉球パンチをされた。
「あいったあ!」
「お前、俺をなんだと思ってる!」
「ネコがしゃべったあ!」
「ネコじゃねえ!」
シャーッ! と全身の毛を逆立てて、謎のしゃべる動物さんが
「俺はヨジロウ。そこの
「…しきがみ?」
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