第13話

「アレン。リヒトの代わりは見つかったの?」


「まだだ。そもそも、俺たちのレベルに合うようなヒーラーなんて、簡単に見つかるはずないだろ」


 Sランク冒険者であるアレンとシズクは、処刑されたリヒトの代わりになる人材を探していた。

 他のメンバーも、スカウトに向かっている最中である。


 すぐに見つかると思っていた代役だが、ここまで苦戦するとは予想外だ。


「何で? リヒトの代わりなんていくらでもいるはずでしょ? 最悪、蘇生はできなくても回復ができる奴がいれば良いんだし」


「だから、俺たちに合うようなヒーラーがいないって言ってるだろ。ヒーラーは全員が全員弱すぎる。どれだけ後ろの方にいたとしても、そいつが真っ先に死んじまうくらいにな」


「何それ? ヒーラーを守りながら戦えってこと? サポートじゃなくて足を引っ張ってるじゃん……」


 シズクは呆れたようにため息をつく。

 これまでワンマンプレーをしていた二人に、ヒーラーを守りながら戦うというチームプレーは不可能だった。


 放っておいても一人で何とかできるリヒトの存在が、どれだけ貴重だったのか思い知らされる。


「でも、どうにか一人くらいは見つかるんじゃないの? 私たちはSランクパーティーだよ? 強いヒーラーの人だって来てくれると思うけど……」


「回復職なら、どれだけランクが上でも本体の弱さは変わらないぞ。たとえ俺たちと同じSランクの回復職でも、一対一なら並の冒険者程度だ」


「え? でもリヒトは、私たちくらいの戦闘能力があったじゃない!」


「あのな……リヒトはヒーラーであっても回復職じゃないぞ。アイツの回復はスキルなんだ。だから、俺たちと同じような戦闘能力がある」


「そんな……」


 アレンとシズクは、リヒトがいなくなったことのダメージをヒシヒシと感じていた。

 回復役だとしても、お荷物を連れて歩くというのは避けたい。


 リヒトという唯一無二の存在を、今さらになって思い出す。


「……チッ、こんなことを言ってても仕方がないな。とりあえず一人はパーティーに入れておくか。囮くらいの役割はできるだろう」


「そうだね、別に見捨てればいっか。いないよりかはマシ……かどうかは分からないけど」


「志願者は結構いるから、じっくり選んでも良いかもな。もしかすると、金の卵を見つけられるかもしれないし」


「あ、それ面白そうかも――ん? アレン、何か手紙が来てるよ?」


 ヒーラーに関しての方針を決めたところで。

 シズクは、ポストに投函されていた手紙に気付く。

 大きなギルドのハンコが押されており、クエスト依頼の内容だろう。


 二人はSランクパーティーであるため、このような手紙自体は珍しいことではない。

 しかし内容を見る前に、冒険者としての勘がシズクの手を固まらせた。


「どうした? どうせクエストの依頼だろ?」


「そうだけど、ちょっと見てみて」


「……?」


 シズクから渡された手紙を、アレンは慣れたように開けて中身を確認する。

 そこには、Sランク冒険者に恥じない内容が記されていた。


「ダンジョン調査の依頼……? 年月によって廃れていたダンジョンから、最近強力な魔力を確認したらしい」


「強力な魔力? 廃ダンジョンに、魔物が住み着いたってこと? なんだか面倒くさそう……」


「……いや待て。報酬金が50万ゴールドもあるぞ……」


「50万ゴールド!? 受けるしかないじゃん!」


 不穏なクエスト内容に、一瞬躊躇った二人であったが、莫大な報酬金を見た途端に心境は変わる。

 これほど美味しいクエストを見逃すわけにはいかない。

 ほぼ二つ返事で、承諾の手紙をギルドに送り返すアレンとシズクだった。


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