第8話
「こんにちはー……」
「……? ここは第一領域ですよ? 何か問題でも起こったのでしょうか?」
一応問題は起こってます――と言いたかったが、そうしてしまうと混乱を招いてしまいそうなので、リヒトは無駄な口を閉じておく。
(ロゼ……ヴァンパイアだから昼は眠ってるはずだけど――寝てないな。休む暇もなさそうだし、第一領域だから忙しいのかも)
そこにいたのは、敵に備えて見回りをしているロゼであった。
第一領域ということで、他の領域よりも重要性が高い。
そのプレッシャーに耐えながら、ただでさえ広い領域の守護はかなり負担になっているだろう。
「今、このディストピアの人手不足を調査してるんだけど、思っている以上に深刻みたいで……」
「それはそれは……ご苦労様です。フェイリスとかも大変そうですしね。私なんか楽をしている方なので申し訳ないです……」
「え?」
ロゼは予想外の答えを返す。
リヒトが見てきた中で、ロゼは断トツで忙しそうな人物だった。
寝る暇も惜しんで見回りをしている時点で、トップに躍り出てもおかしくないほどだ。
「えっと、ロゼはこの領域の他に何個担当してるんだ?」
「七個ですけど……」
「七個!?」
リヒトは驚きを隠せない。
間違いなく一番負担が大きいのはロゼである。
しかし、ロゼはそれを認識していないようだ。
真面目さと謙虚さが、悪い形で出てしまっていた。
「それは……何とかしないと」
「――で、でも、私はヴァンパイアなので気になさらなくても大丈夫ですよっ! 体力だって、人一倍ありますからっ!」
ロゼは、屈託のない笑顔でリヒトに微笑みかける。
この数回の会話で、ロゼの性格は何となく読み取れた。
超が付くほどお人好しであるヴァンパイアに、このディストピアは支えられていると言っても過言ではない。
「まぁ、これ以上仕事を増やすってなると、厳しいんですけどね……えへへ」
(単純に人手が足りないなら、人手を増やすしかないな……でも、並の存在じゃ務まらなさそうだし)
「――そうだ!」
「ど、どうしたんですか……?」
リヒトはとある存在を思い出す。
ディストピアを更に強固にするためにも、人手を増やすのは必要不可欠だ。
当然、一人一人集めるとしたら、かなり時間がかかってしまう作業である。
しかし、そんな作業を嘲笑うかのような存在が一人だけいた。
冒険者として生きていたなら、必ず知っているであろう存在。
リヒトの頭の中にいたのは、伝説のネクロマンサーだった。
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