殺伐感情戦線まとめ

サトクラ

第1回「責任」

「あら、ふたりも娘がいたのね。でも貴女は少し幼すぎるかしら。」


 そう言って微笑んだ女は、最愛の義姉を横抱きにしながらこちらに近付くと、驚きで動けない私を覗き込んだ。


「そんなに怖がらないで、大丈夫よ。痛くないように一瞬で終わらせてあげるわ。この国で孤児になってしまったら碌な人生歩めないものね。」


 甘ったるい猫撫で声に背中が泡立つと、それを恐怖からくる震えだと誤認した女はことさら優しく言葉を続ける。


「あぁ、安心して。貴女のお姉さんは私が養ってあげるわ。成人まではね。一番綺麗な時に一番素敵な表情でおくってあげるから、それまであちらで待っていてあげるのよ?」


 なるほど、この女も義姉の美しさに引き寄せられた一人らしい。街灯に群がる蛾のように次から次へと鬱陶しい。駆除するこちらの身にもなってほしい。なんだか悦に入ってこれからの夢物語を語っている女に向けて、後ろ手に持っていた銃の引き金を引く。あっけなく崩れ落ちる女の腕から義姉を抱きとめると、部屋の惨状を見て溜息が溢れた。でもまぁしょうがない、これが私の務めだから。

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