第47話 おやすみなさい、エイズラさん
エイズラは、ジゼル家に来た新しい使用人が屋敷に泊まりにくると聞いて驚いた。
レズリ―に聞いた感じだと年が近くいい子らしい。女か男か聞いたが来た時のお楽しみといわれてしまった。
全然楽しめない。
年が近い男の子だったらと思うとエイズラは心臓が張り裂けそうになった。
「大丈夫か?エイにぃ」
胸を押さえてくるそうにしているエイズラを見たライムは、そういってエイズラの顔を覗き込んだ。
「あ・・・あぁ、大丈夫だ。結婚する娘を見送る父親の気持ちをダイレクトに味わっているだけだ」
「まだそんな年じゃないだろう」
大体こんな風にエイズラが精神不安定になるのはレズリ―の影響だということをわかっているライムは、ため息をついた。
あの女、またエイにぃに変なことを・・・!
目をぎらつかせるライムをよそに、どうやら客人が来たらしい。
「ちんこさえはえていなえればいいちんこだけはえていなければいいちんこさえ・・・」
呪詛のようにぶつぶつ呟くエイズラを見てライムは本気で心配になった。
「よ・・・横になるか?」
だがレズリ―がニコニコしながら連れてきた客人は可愛らしいダークエルフの少女ではないか。メイド服を着て恥ずかしそうに微笑んでレズリ―の隣に立つ少女を見て、ライムはほっと胸をなでおろした。
「最近ジゼルのところに来た使用人のロゼッタちゃんよ、今日はうちに泊まるの」
「ロ、ロゼッタと申します、よろしくお願いいたします」
ロゼッタはそういってぺこりと頭を下げた。
ダークエルフの少女か。ライムは、どうやって雇ったのか気になった。
奴隷などで売られているのは見たことがあるが、使用人としてダークエルフを雇うということをあまり聞いたことがなかったからだ。
まぁ、うちのレズリ―お嬢様よろしく、ジゼルお嬢様も少し変わっておられるからな。
「私はライムだ、ここの使用人兼お嬢様の影武者をやっている。ジゼルお嬢様の使用人らしいが、今日は客人らしいのでゆっくりしていくといい」
ライムは、笑顔で挨拶した。
「こっちが・・・」
ライムはついでエイズラを紹介しようとエイズラを見ると、
「エイズラです。お嬢様のお客様ということですね。ゆっくりしていってください」
きらきらスマイルで挨拶していた。
さっきの顔色の悪さはどこへやらといった様子で顔がぴかぴか輝いていた。相当男の子じゃなかったことに安心したのだろう。
「よ、よろしくお願いいたします」
ロゼッタは緊張した様子でぺこりと頭を下げた。
「じゃあロゼッタ。お部屋にいってお話ししましょう」
レズリ―はロゼッタの手を握って自分の部屋を示した。ロゼッタは導かれるままレズリ―の部屋へと歩みを進める。
そしてエイズラもにこにこしながらそれについていく。
「エイズラは来ないでですわ!」
「・・・・・・・・・・・?」
エイズラは笑顔を崩さず首を傾げた。
ばたんとエイズラの目の前で扉が閉められた。
「ライム・・・手を握ってくれ・・・」
エイズラは膝から崩れ落ちた。
「エイにぃ・・・」
ライムは情けないエイズラよりも手を握ってくれと言われたことで頭がいっぱいだった。
やっとライムに支えられて立ち上がったエイズラは、何故だを壊れたロボットのように繰り返していた。
「あれだ、エイにぃ」
「なぜだ」
「反抗期というやつだ。お嬢様も16歳、そういう時期なのだ」
ライムはそういってエイズラの背中をぽんぽんと叩いた。
そしてどきどきしながらエイズラの手に手を伸ばすが、エイズラは先ほどいったことなんてすっかり忘れているのかライムの手をすり抜け胸の前で拳を握った。
「これが愛する娘をどこぞの馬の骨にとられた父親の気持ちか・・・」
「違うよエイにぃ」
ライムの声は届いていないらしくエイズラはがっくりと肩を落とした。
対してライムは喜んでいた。レズリ―に冷たい扱いをされたエイにぃを慰める機会が増えた。エイにぃが私を頼っている。うれしい!
それからエイズラは、ロゼッタとレズリ―が何を話しているか盗聴器で聞こうと頑張ったがその日はライムにことごとく呼ばれたり仕事を頼まれたりでレズリ―とロゼッタが今どんな話をしているのか把握できなかった。
「ロゼッタは、本当にいい子ですわね!」
楽しんでくれているみたいだ、ロゼッタはよかったと笑顔のまま相槌をうった。
「相談に乗ってくれてありがとうですわ・・・その、もう1つ相談があるんですの」
「はい・・・?」
顔を赤らめたレズリ―は、そういってロゼッタに近寄った。
***
「夕食は部屋でとるわ」
そう言われてしまえば従うしかない。
夜まで結局どんな話をしているのか把握できなかった・・・がっくり肩を落としたエイズラだったが、お風呂は別々に入るということを聞いて首を傾げた。
「今日はロゼッタと同じベットで眠るわ」
今日もいつものようにエイズラはベットの下にもぐりこんでいた。
そんなに仲良くなったのかと、1日でそんなに。
エイズラはなんだか負けたような気持ちになった。
がさがさとベットの上で音がして、エイズラはベットの上で何か行われていると焦った。
レズリ―お嬢様とあのメイド、何かいかがわしいことをしているんじゃ・・・。
ふぁさりと銀髪が床についた。
それは、ベット下を覆うカーテンのようだった。エイズラは目を丸くして口をぽかんと開けた。背中に嫌な汗が流れた。
「おやすみなさい、エイズラさん」
ベットの下を覗き込んだロゼッタはそういって微笑んだ。
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