第46話 誘拐癖は直ったので今回は招待することにしたらしい
ロゼッタは、次の日からジゼルのお屋敷で本格的に働くことになった。
男であるということは、まだジゼルとマチルダに言わずに働くことにしたロゼッタは、今日もメイド服に身を包んでいた。
飲み込みも早くてきぱきよく働いて数日働いてくれたロゼッタへの印象としてはずっとここにいてほしい、だった。
「なんですって!?新しい使用人が!?」
レズリ―はロゼッタが来たことをいち早く聞きつけ、どんな人物か知りたかった。
「ジゼルに電話よ!」
若い女の子と聞いたレズリ―は、ジゼルに新しい若くて可愛いお友達ができるのではないかと思うと嫉妬でぐぬぬと拳を握った。
ジゼルの屋敷に電話をかけると、少しして電話が繋がった。
「はい、もしもし」
「シスカね、あなたはどうでもいいのよ。新しい使用人が来たと聞いたわ。どんな人物か詳しく説明しなさいですわ」
「いや、開始早々酷いことを言わないでくださいよ。そしてその声はレズリ―お嬢様ですね」
「そうですわ。早く教えなさいですわ」
レズリ―お嬢様が、ロゼッタくんに興味を持っている。シスカは嫌な予感がした。
自分が誘拐された時起きた出来事を思い出してみる。レズリ―先生による恋愛講座と称してのあの性に関する知識布教。絶対ろくなことにならない!
だめだ。ロゼッタくんが俺と同じ目にあってしまうのはだめだろう。ロゼッタくんを守らなくちゃ。
「あの」
「ちなみにでたらめをいったらジョセフィーヌに乗って時点で屋敷に乗り込みますわ」
怖い、本当にやりそうだ。
シスカはドラゴンに連れ去られたときのことを思い出した。
「どうして新しい使用人のことをそんなに知りたがるんですか」
ため息をついた時、シスカの服がくいくいと引っ張られた。
振り返ると、不安そうな表情のロゼッタがシスカを見上げていた。
「ワタシ、何か迷惑をかけるようなことしてしまいましたか?」
話しを聞いていたのだろうか、不安げなロゼッタになんといおうか考えているときに、
「何その可愛い声は、いるんですわね。かわりなさいですわ!電話かわりなさいですわ」
あぁあ、はいはいはい。
シスカは、あきれ果てた顔で受話器を耳から離した。
「かわってという声が聞こえますが・・・」
ロゼッタは、耳が非常にいいらしく高くあげた受話器の向こうの声が聞こえているらしい。
「シスカ殿ーーー!!シスカ殿ーーーー!!」
廊下の向こう側でマチルダの叫び声がして、シスカは頭を抱えたくなった。しかも受話器の向こう側ではレズリ―が電話をかわれかわれとうるさい。そしてすぐ近くにはロゼッタくんが不安そうな顔でシスカを見上げている。
「あの、レズリ―お嬢様・・・また」
「ワ、ワタシお話しできますよ。シスカさんは、マチルダさんのところに行ってあげてください」
ロゼッタは、背伸びをして電話に手を伸ばした。シスカは、困った顔で頭をかいたがマチルダが助けを求める声がしていたので、
「いいかい?変な誘いには乗ってはだめだよ、家に呼ばれてもちゃんと断るんだよ」
「不審者扱いみたいですわ!」
聞こえていたみたいで受話器の向こうから怒った声が聞こえてきた。
近くにいたらエイズラさんが怒りそうだなと思ったが、何も声が聞こえないので今は一緒にいないかもしれない。
「ちょっと行ってきます」
シスカはそういってマチルダの元へとかけていった。
「もしもし」
ロゼッタはどきどきしながら電話に出た。
数分後、マチルダさんのひっくり返したバケツの水を綺麗にして戻ってくると、ロゼッタが何やらジゼルと会話していた。
会話が終わったジゼルはその後誰かに電話を始めた。
シスカは、嫌な予感がしてロゼッタの方に早歩きで向かった。
「あの、ロゼッタちゃん」
「はい」
「どうなった?」
恐る恐る問いかけると、電話をしているジゼルの声が聞こえてきた。
「レズリ―、ロゼッタを屋敷に泊めたいといっているみたいだけれど、大丈夫なの?」
泊まり・・・?
「レズリ―お嬢様のお屋敷に泊まることになりました」
どうして・・・。シスカは、自分がこの場にいなかったことが悔やまれた。
どうやらレズリ―は新しい使用人がどんな子か気になるらしかった。ロゼッタくんをレズリ―お嬢様のお屋敷に泊まらせて大丈夫なのだろうか。
電話を終えたジゼルを見ると、
「ロゼッタがどんな子か気になるそうよ。でも、ロゼッタ大丈夫なの、いきなり知らないレズリ―のお屋敷に行くなんて、しかも1泊なんて・・・」
心配そうにロゼッタを見つめていた。
ジゼルは、レズリ―と仲良くなり使用人がくるたびに誘拐されることはもうなくなった。
だが、レズリ―も誘拐することはなくなっても、今回はジゼルの屋敷にくる使用人のことが気になるらしいのである。ジゼルはレズリ―を信用しているが、ロゼッタのことが心配だった。
「大丈夫ですよ」
ロゼッタは笑顔で答えた。
求められたら答えるのが、ロゼッタの生き方だった。
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