第15話 番外編 嬌声の聞こえる扉の向こう側
「あっ・・・おじょうさまぁ・・・!」
ある晴れた昼下がり。
「マチルダ、あなたって本当にどうしようもない雌豚ね。この無駄にでかい胸しか取り柄のないどうしようもない淫乱女。仕事もできないと・・・仕事もろくにできないくせに毎日毎日牛のように乳を揺らして恥ずかしくないの?使い捨てのパンツ以下の存在価値しかないあなたのような人間には、キツイお仕置きが必要のようね」
麗しき令嬢ジゼル・エヴァ―ルルイスの屋敷の一室では、荒い息遣いとなまめかしい嬌声が響いていた。
「あっ・・・いいっ・・・いいであります・・・あぁっ!もっと!もっとぉ!」
「たっぷり可愛がってあげるからいい声でなきなさい」
「昼間っから何やってるんですか!?」
シスカがバンと扉を開けると、何やらメモのような紙を読みながらムチを持ったジゼルと、ジゼルにお尻を向けているマチルダがいた。
「お仕置きをしていたのよ」
「それならもっと優しいやり方でやってあげてください!ムチではまるで家畜でないですか!流石に可哀想ですよ。虐待ですよ」
折角ジゼルとマチルダが馬車で抱き合うところを見てほっこりしたシスカだったのにこれではあれは夢だったのかと思ってしまう。
ジゼルは、シスカを振り返ると困った顔をしてシスカを見た。
「シスカ、来てちょうだい。一生懸命お尻を叩いているのにマチルダはもっともっとっていうから困っているのよ」
「話を聞いてください」
シスカが、恐る恐る近づくと、マチルダはゆっくりとシスカを振り返った。髪は乱れ、頬は蒸気し、目には涙が浮かんでいる。
その普通の男なら興奮しそうな表情に、シスカは心の底からマチルダを同情していた。
確かにマチルダは、朝から食器を5枚割り、テーブルクロスのすまきになり、玄関の靴に水をぶちまけ、庭の木の枝を切るといってスコップを4本持ち出していた。
でもだからって、だからってこんな仕打ちないじゃないか。
「大丈夫ですか、マチルダさん」
手を差し伸べたシスカの手を、マチルダははらった。
「え・・・マチ」
「いいところであります、シスカ殿。邪魔しないでいただきたいであります!!」
「えぇ・・・?」
シスカがどういうこと?という顔でジゼルを見ると、ジゼルはムチを手にぱしぱし叩きつけながら答えた。
「マチルダは、ドMなの、こうして定期的にストレス発散をしてあげないとダメなのよ。暇なら手伝いなさい、ムチはもう1つあるわ」
「やりません!!!」
ジゼルの部屋のベットでお尻を向けているマチルダのお尻をジゼルはムチを二本持ち子供のように振り回してマチルダのお尻を叩きまくった。
「はあっはあっ・・・」
頬を叩かれた人間の手も痛いとはいうが、お尻を叩く人間も疲れるのである。
「あぁっ・・罵倒もお願いするで・・・あァっ・・・・あります・・・!」
「シスカ・・・はあっ・・・なんでも・・いいから罵倒をちょうだい」
なんて光景を見せられているんだ俺は。
シスカは、頭を抱えた。
お嬢様の下品な言葉も罵倒も、もしかして発端はマチルダさんなのか?
「もーーーーいい加減にしてください!!!!」
「お嬢様・・・右尻を叩くムチの手が止まってるであります!・・・イイ加減でお願いするであります・・・あァっ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
シスカは、考えることをやめた。そしてそっと扉を閉め、見なかったことにした。
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