第3話
レオナール・フレールはモラレス家の領地を訪れていた。アルガナントはソティアラより人口も少ないし、女性が虐げられ鞭を打たれていたり路地で倒れている姿を目の当たりにしてとても気持ちの良いものではなかった。縁談も父が勝手に進めた話であまり乗り気ではなくふてくされていた。いわゆる政略結婚というものでソティアラでは少し珍しく結婚は当然好いた女性とと考えていたので人生計画が潰れて本当に残念だとレオナールは思った。
「まだ怒っているのか?」
レオナールの父アレンは笑って聞いた。怒っているも何も勝手に結婚相手のを決められて愉快な人なんていないだろう。レオナールは不機嫌な顔をして黙って頷いた。
「相手は魔法持ちの女の子なんだ。我が一族に迎え入れたいと思っている。ダリアステラとの関係が悪くなっていてそう遠くない未来戦争が起きる。魔法持ちの子を授かる可能性は希望なのだよ」
「まるで人を道具のように言うのですね……」
「そんなことはないよ、アルガナントでは女性は道具以下の扱いを受けているらしいではないか?今回のアルガナント訪問で分かっただろう?その女の子を救い出すと思いなさい」
「お互い好きになれなかったらどうするんですか?」
「さては相手が可愛い子ではなかったらと不安になっているのか?」
アレンは腹を抱えて笑った。違うと反論するもニンマリしながら
「大丈夫だ。似顔絵をモラレス家当主が送って確認したが可愛らしい顔をしている」
「それは本当ですか?私にも見せてください!」
確認する権利はあると主張した。また父がニヤニヤして勿体ぶるので諦めようとしたらポケットから手紙を取り出して、その中の丁寧に四つ折りにされた紙を渡された。その紙を拡げると少女の絵が描かれていた。長い金色の髪に珊瑚色の瞳。表情はどこか諦めたかのような悲しい顔をしていた。儚く美しく思った。ジッと少女の絵を見つめていると
「どうだ?気に入ったか?」
と不躾な質問にレオナールは怒ったふりをして
「物のような言い方はいけませんよ!!この子は私の事どう思うか分からないでしょう!たとえ政略結婚でもちゃんと心は通じていたい」
「気に入ったんだな」
「うっ……」
アレンは大笑いした。父に似て女性の趣味はいいと言いながらレオナールの背中をバシバシと叩いた。レオナールは恥ずかしくて顔を赤くした。
「絶対お前の良いところは伝わって仲良くなれる。顔だって整っているしな!良い男だ!」
と笑った。父はこの旅でよく大笑いしている。俺に結婚相手が出来たからなのかとても上機嫌だ。泣き虫で学校で意地悪されて悔し泣きして帰ってきた俺にあの少女は振り向いてくれるのか不安だったが父の言葉で自信がついてきた。御者が馬車を止めて
「モラレス家に到着いたしました」
と言った。あの少女は笑ってくれるだろうか?俺を好きになってくれるだろうか?と少し緊張して馬車を降りた。
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