第14話 私とミシェル
「それでは、早速街に行こうと思いますが、ここから一番近いところは何処かしら?」
街に向かう準備をして森を出ようと思ったのですが、そう言えば近くにある街を知らなかったのです。
近くと言っても、ここから馬車で最低一週間はかかるところですが。
「ここから一番近いのは、冒険者の街とも呼ばれるガッフというところです。ここは聖魔の森に一番近い場所という他にも、竜の住まう山があったり、小規模なダンジョンがあったりと、冒険者に取っては稼ぎどころな街なのです」
「なるほど。竜ってあれよね。伝説の存在とか神に近い生物とか言われている魔物よね。そんな危険な魔物がいるのに冒険者が集まるの?」
「竜と言ってもおとぎ話に出てくるような龍とは別物です。どちらかというとワイバーンや地竜などが多いそうです。それくらいであれば高ランクの冒険者なら簡単に討伐できます」
「そうなのね。……そうだわ! せっかくだからその山に――」
「ダメです」
「まだ最後まで言ってないじゃない」
「大方竜と仲良くなりたいから山に行きましょうとか、そう言うつもりだったのは分かっています。ですがダメです」
「むー。ケチッ」
ブーブーと唇を尖らせて抗議します。
「そ、そんな可愛い顔しても、ダメですからね。お嬢様にはこっちの方がお似合いです。我慢なさいませ」
ミシェルの意思は固いようです。
いつもならこうすれば折れてくれるのですが、今回は頑なですね。
仕方ないです。今度別の方法を考えましょう。
「冒険者がたくさんいらっしゃる街ということで、おそらく男性の方も多いでしょう。ティア、くれぐれも約束は守ってくださいね」
『わかってるわ。一人で勝手に行動しない、でしょ。子供じゃないんだから』
「私はどちらかと言うとお嬢様の方が心配です。知らない人に声を掛けられてもついていってはいけませんよ」
「もうっ。ミシェルは私を何だと思っているのですか。私も子供じゃないですから、大丈夫ですっ!」
まったく。ミシェルったら。いつまでも過保護なんだから。
そもそも街ではいつも一人にならないようにずっと傍にいたじゃない。
何処に行ってもミシェルが傍にいて……よく考えるとミシェルとしか一緒に行動してませんでしたね。
ミシェルが私から離れなかったと言えますが、私がミシェルを離さなかったとも言えますね。
もう主従の関係を越えて、姉妹? 家族? いえ、一心同体と言っても過言ではないでしょう。
こうなったらミシェルのことを手放したりしませんからね。覚悟してください。
なんてことを言うとミシェルはいつものように鼻血を出して倒れてしまうのでしょうね。容易に想像できます。
その際に言う言葉もわかります。尊いですね。
どういう意味なのかは分かりませんが、これを言う時のミシェルはとても興奮している様子なので、いつもそっとしています。
今度聞いて……いえ、やめておきましょう。
「お嬢様? どうかなさいましたか?」
「いいえ、何でもないわ。――――ねぇ、ミシェル」
「はい」
「私から離れちゃダメよ」
「……何を今さら。この命に懸けて、私はお嬢様と共にあると誓いました。むしろお嬢様が嫌って言っても離れませんからね」
そう言いきったミシェル。
その視線は一直線に私を捉え、逃がしてはくれないようです。
……どうやら捕まったのは私の方だったみたいですね。
「……そう。それならいいわ」
さて、そろそろ行きましょうか。
ここに来た時同様カイに運んでもらいます。
「カイ、お願いしますね」
『うむ。任せよ』
ミシェル私ティアの並びで跨り、カイはそのまま上昇し空を駆けていきます。
ティアがいるので森の結界に影響されることなく空を移動することができます。便利ですね。
追放されてから初めての街です。
クィンサス王国からは遠いのでここまで情報は来ていないとは思いますが、用心だけはしておきましょう。
それにしても、王都以外の街は初めてなのでとても楽しみです!
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