第27話 アラン視点 ガリレと密会
「何のようですか?」
突然気配もなく現れたガリレに、不機嫌に言うと、趣味の悪いソファーを出して、ドッカっと座る。
「アリスならもう帰りましたよ」
視線を移さず仕事を続けると、ガリレはなにもない空間からお茶を取り出すと、自分だけ飲んだ。
俺の仕事が終わるのを待っていると言うことは、厄介な話か?
仕方なくペンを置き、ガリレをみる。
「何ですか? 集中できないので、話があるなら先に聞きます」
ニィっと笑って、ガリレはバカにしたように、俺の前にも紅茶を出した。
たったこれだけなのに、負けた感がムカつく。
「あのダイヤは俺がやったもんじゃない」
「聞きましたよ、あなたの愛する人じゃなかったって、ダイヤの力が何かもわからないんですよね」
アリスががっかりしていた。
「まあ、だが創った奴は知っている」
そうだろうね、用もないのにここには来ないだろう。
「誰です?」
「……」
ガリレは言いにくそうにそっぽを向く。
言いづらい相手か? まさか自分だって言うんじゃないよな。
「俺だ」
「は?」
「俺が創った、アリスの話を聞くまですっかり忘れていたがな」
ばつが悪そうに、顔をそらし窓の外に意味もなく視線をやる。
「詳しく」
「ん、ああ、あれは知り合いが人間の寿命を伸ばしたいと、相談してきたから、花びらの中にそいつの寿命を閉じ込めた薔薇を作ってやったんだ」
若気の至りだ。とあっさり言う。
「何て事を……で、誰に頼まれたんですか?」
人の寿命の事をそんなに簡単に薔薇の中に閉じ込めるなんて、どんな魔法なんだ?
「第三の魔王だ」
第三の魔王って!?
「ちょっと待って、イスラの王女の恋人は魔法使いじゃなかったんですか?」
「まあな、女王の恋人が魔王じゃまずいだろ」
そりゃまずいけど。
「王女が毒を飲まされた後どうなったんです? よく国が滅びませんでしたね」
ああ、そうだな。ガリレは何か思い出したようだが、話す気はないようだった。
「まさか薔薇園に時の魔法をかけたのもあんたか!」
「あんたって、おまえ仮にも師匠にそれはないんじゃないか?」
ギロリと睨むとガリレは仕方なさそうに、続きを話し出した。
「薔薇園に隠蔽魔法をかけ、時間の流れを変えたのも俺だ。当時、女王は虫の息でな、治癒魔法をかけても、魔王の寿命を受けとるという強い魔法には、耐えれる身体じゃなかった。まあ、そのころは完全に時を止める魔法は使えなかったしな」
魔法を受けとる方にも、それなりの適正が必要なのだろう。
「第二王子が薔薇園を見つけたとき、薔薇園にいなかったってことは、王女は亡くなったんだな。その後、魔王は森に戻ったのか? 」
王女がどのくらい生きていたのかはわからない。だが、魔王が一緒にいたのは間違いないだろう。
「いや、魔王は代替わりした。薔薇園に魔法をかけたのは俺だが、いくら俺でも、あの広さに何百年もかけ続ける力もなければ義理もない。かけた後の維持は魔王が自分の力を注いでいたんだろ」
確かに、ガリレがそんな面倒なこと続けてるわけがない。
「ダイヤの力は?」
薔薇を創ったならわかるだろう。
「わからん、後からあいつがやったんだろう、女々しいやつだったからな」
全く使い物にならない。
「今の魔王は知っているよな」
当然記憶は引き継がれているはず。
「どうだろうな? 魔王としての記憶は引き継がれるが、引き継ぎたくない記憶は抹消できるらしい」
そんな都合よすぎな引き継ぎあるか!
「アリスに言わなかったのは正解だな」
「だろ、きっと怒り狂うな」
してやった、という顔をして、同意を得たとばかりに頷く。
魔王と知り合いならライトや聖女候補のリリィ様のことは簡単に解決できる。そもそも、アリスとライトが留学する必要もない。アリスに知れたらそりゃ怒られるだろう。
「アリスの事だ、知ったら絶対に魔王に会いに行くと言い出すな」
その前に手を打つか。
「聞いた話によると、第二王子は王位を狙っているらしいじゃないか。いったい誰の影響だろうな?」
「さあ、別によくある継承権争いだろ? これはイスラの王族の問題だ、安易に首を突っ込まない方がいい」
まったく、余計な奴のやる気を出させたものだ。
「その割には、他国の第一王子を亡き者にしようとしているんだろ?」
「人聞きの悪いこと言わないでください。万が一そうなった時に商売しやすいように、根回ししているだけです」
今は、ちょっとアリスを学院に行かせたことを後悔しているが、ガリレにわざわざ言う必要はない。
「まあ、そういう事にしておいてやる。お前もたらしの面倒みるのは大変だな」
クククと笑うガリレのそばまで行き、力一杯足を踏んでやる。
「痛!」
「魔王をさぐってきてください」
ふんっと、腕組みをしてガリレを見下ろすと、やれやれという顔をして、頷いた。
「おまえはいつまで、こんな所に引き籠っているつもりだ?」
ガリレが不意に聞いてくる。
「別に引き籠っているわけじゃない、仕事があるし、俺には俺の役割がある」
「役割ねぇ、まあ、せいぜい後悔しないようにな」
ガリレはヒラヒラと手を振り消えた。
余計なことを……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます