地獄の80丁目 あつまれ! 暴力の檻
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第1回 魔王の座争奪、なんでもバトルオリンピア ~あつまれ! 暴力の檻~
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亡者どもの悲鳴が一段と賑やかさを増す凶、この頃。皆様いかがお過ごしでしょうか。さて、つい最近、我々の主であるドラメレク様の不在の間隙を縫って不当に魔王の座を奪取した者から、我が主が正当なる暴力を以ってその座を奪還した次第でござい魔すが、昨今の地獄の様子に我が主はお嘆きです。
「腑抜け共!」
「間抜け共!」
「腰抜け共!」
「どうせ抜くなら卓抜した技量を選抜してやる。それ以外の雑魚は右手で(自主規制)てろ!」
「志は高く、皆人須らく魔王を目指すべし」
という訳でござい魔して、我々は広く挑戦者を募集いたし魔す。我こそはと思われる方は振るってご参加ください。
※なお、参加者の生死について運営は一切関知いたしません。というか死ぬ気でご参加ください。大丈夫、絶対大丈夫ですから。長く苦しむとかそういう事はなるべく無いようにし魔すから。
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「……このふざけた文面が今地獄中に配られているというのか?」
デボラは、こめかみの辺りに青筋を立てながら閻魔様から手渡されたチラシの様な紙をくしゃくしゃと丸めた。
「そうなんじゃよ。大抵の地獄の住人は無視してる――というかあのドラメレクに挑もうなんて狂人はそうはおらんのだが」
時を遡る事数十分前、俺とデボラは復活の顛末を閻魔様に報告しに来たのだが、なぜか裁判所が、地獄がざわついていた。とりあえず忙しそうな閻魔様は業務に集中してもらって、俺達は会議室で待たされることになった。受付のお姉さんは以前に立ち寄った時の俺の様子を覚えていたらしく、その変貌ぶりに大層驚いていた。
「えっ、なんです!? この魔力。もしかしてあなたから!? 私とんでもない人が裁判所に来たと思ってドキドキしてたんですけど」
「はぁ……、色々あってこんなことになってしまいまして」
「で、デボラ様より強く感じるのですがこの短期間にいったい何が!?」
「修行……ですかね……」
「何百年修行すればそんな変化が起きるんですか!!」
「ま、まあこれには色々込み入った訳があってな」
思わずデボラが口を挟むほど受付のお姉さんも取り乱していた。
「ともかく、閻魔様の仕事がひと段落ついたらそちらへ伺いますので、会議室にてお待ちください! そうでなくても最近地獄は色々ありますのに……」
正直、生まれ変わってからというもの、地獄には何やら懐かしい感覚を覚え始めていたが、地獄側にそんな感情の受け入れ先はない様だ。確かにドラメレクが魔王を名乗っているのは不気味だからな……。
そうして、会議室でしばらくデボラと二人きりで待っていたが、その間、一緒に暮らす発言の続きを話し合っていた。
「結局、あの一緒に暮らす発言は何だったのだ。突然、閻魔のところに行くと言い出したから付いてきたがベルは固まっておったぞ」
「ごめん、自分でも突拍子も無いことを言ったのは自覚してる。でも、種族やらなんやらの壁が無くなったら急に今までの事が馬鹿らしく思えて」
そう、あの後すぐに俺が閻魔様のところへ行かなきゃいけないことを思い出したので、一旦その話は切り上げていた。ヘルガーディアンズの面々は面食らっていたが、説明を省いてこっちに来てしまったのだ。
「我としては嬉しい限りだが人間としての生活はどうする? 魔王の立場では軽々に人間界で暮らすことは適わんぞ」
「魔王業は今まで通りデボラにお願いしたいんだけど。無理かな?」
「可能な限り、キーチローを人間として生きさせてやりたいが……、魔法の存在など封印して生きていけるか?」
「できる……と思う。いや、やらなきゃ」
「生活の基盤はどちらに置く? 地獄か? 人間界か?」
「生活は地獄にしようかと思ってるけど、出社は人間界かな」
自分で言っててかなり無茶だとは思うが、断られたらそれはもうしょうがないくらいの気持ちだ。なんせ、魔法を(しかもチート級で)使えるのだから、正直、仕事をする意味がほとんど無いとも言える。運よく、人間に戻れる機会があればなんて甘い気持ちが無いわけでもない。
「……ふぅ。こうなった責任はほとんど我にある。キーチローの今までを考えればそれぐらい叶えてやる」
「ありがとう、本当はこんな甘えちゃいけないんだろうけど」
「何を言う。お前が死ななければ良かった話だ。存分に甘えろ」
「なんか意味が違って聞こえるが……」
「ふふん、我はイイ女であろう」
そうこうしているうちに閻魔様がやってきたので、俺達は今回の復活劇について事細かに説明した。
「ふぅむ。一筋縄ではいかんと思っとったが、なかなか珍妙なことになっておるな」
「これについては滝修行中のアクシデントも関わってまして……」
「魂の姿で修行すると死んだままの肉体が追い付かんというのは分かるが破裂する程とは……」
「ご都合主義にも限界があるってことですね」
「まあでも、ある意味好都合かもしれんよ」
そういうと閻魔様は懐から紙を取り出し、俺とデボラに手渡した。
そして、シーンは冒頭に戻るのだが、
「ドレメレクの奴め、下らんことを考えおって。その鼻っ柱、我とキーチローでへし折ってやるわ!」
「地獄は広いからね。どんな奴が参加してくるか分かったもんじゃない。十分気を付けてな。デボラちゃん」
「ああ、任せておけ。我には将来のパートナーがおるからな」
「いや、将来じゃなくてもう……」
「キーチロー……」
「デボラ……」
「いや、ワシこれ何を見せつけられてんの。ていうか関係性変わりすぎじゃない?」
「ドラメレク一派とは違うやり方でやりたいようにやらせてもらいますよ」
「はあ、まあ、普通の住人に迷惑が掛からんようにやってもらえればワシとしては何もいう事は無いんじゃが」
というわけで俺は、第1回 魔王の座争奪、なんでもバトルオリンピア ~あつまれ! 暴力の檻~への参加を決めた。狙うは勿論優勝、すなわちドラメレクの首だ! 平和な地獄を取り戻すため、負けるわけにはいかん! 後、人間としての生活も!
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