(閑話) 自由時間~女子会~

「せっかく人間界に来たことですし、人間の真似事でもしてみませんか? 曰く、女子会!!」


 デボラ様の破天荒な行いにより、当初の予定より増えた自由時間。せっかくですのでデボラ様と人間界を……と思っていたのですが、現状を推し量るに私は所謂一つの“お邪魔虫”という位置にいるのではと思い至りました。


 あっ、自分で言ってて涙が……。


 いえ、これも我が敬愛する主の為なれば、いかなる苦難も受難も『難の園なんのその』。私に出来るのは私以外の“お邪魔虫”になりうる者の排除。


 という訳で、デボラ様とキーチローさん以外のメンバーを誘ってどこかに離れるつもりでしたが、一番のお邪魔虫になりそうなセージさんはキャラウェイさんに連れられてどこかへ行ってしまったので大丈夫でしょう。


 後は、私が残りのメンバーを引き連れて行けば万事OK、デボラ様の願いは叶うのです!


「いや、考えてることはなんとなくわかるよ。ベル」

「はい……。お断りするつもりもありませんが」


 ふふふ、考えが読めるだなんて浅はかな。この私の深謀遠慮と辛抱・遠慮があなたたちに看破できるとでも!?


「とりあえず、二人っきりにしてあげようよ。さ、いこっ」


 ふふふふふふ…………。


 ご明察ですわっ!!!!


「お会計は人間界での稼ぎがある私が持ちますので」


 何を隠そうこの私、家賃と多少の魔物達のエサ代以外は一切お金を使いませんので、入社半年ですが、それなりに人間界のお金が貯まっております。金の魔力は地獄の魔力にも通ずるものがありますからね。人間界で使える魔法とは金を媒介にするのですわっ。


「おお~! じゃあ、このオープンカフェってのはどうかな? いかにも人間界の女子が好きそうな」

「では、そうしましょう」


 ☆☆☆


「…………」

「………………」

「……………………」


 せっかくおしゃれなオープンカフェを見繕ったのにこの沈黙はなんでしょう。ステビアさんは着くなり持参の図書を開いておられましたが、女子会というものを理解されているのでしょうか。


「あの、ローズ?」

「えっ? あ、はい」

「最近どう?」


 話題振るの下手すぎか!! 私!!


「ああ、最近ね。やっとモフモフが大量に来てくれたおかげで毎日充実してるわよ」

「充実か……。いいですね」

「ベルの方こそ最近どうなのよ。デボラ様に構ってもらえなくなって」


 うっ……、さすがに痛いところをついてきますね。


「私はヒクイドリが飛び回る姿を見ていたら半日経っていたことがありました」

「うわっ……」


 うわっ……? 


「大丈夫? なんか新しい趣味とか好きなもの見つけた方がいいんじゃない?」


 大丈夫……?


「ご心配いただいて恐縮ですが、私の役目はデボラ様のお役に立つ事。それ以外の些末なことはノイズに過ぎませんわ」

「お堅いのは相変わらずだけど、そろそろ一皮むけるいいチャンスなんじゃない? このままだとデボラ様の側近として埋没していく一方よ?」


 ま、埋没……!


「あなた(私には負けるけど)可愛いんだしそのままじゃその他大勢として一生を終える事になるのよ! 魔族の一生は長いんだから! もっとエンジョイしないと!」

「私も……賛成……。私もここに来て人と話す機会が増えて、動物と触れ合って、何かが変わった気が……する……のです」


 急に、今まで読んでいた本を閉じてステビアさんが私の手を取った。


「変わりましょう……!」


 私は……、私を拾って、見出して下さったデボラ様のお役に立ちたい……。それが、使命にして至上の喜びだと思っていましたが……。


「少しずつ……変わっていくのですね。環境も、関係も」

「そうよ! ここからが本当の女子会よ!」


 なるほど……!! これが女子会!!


「そうと決まれば動きましょう! カフェで駄弁るのもいいですが何か動かないと」

「急にアクティブ……!」

「何か人間界で行きたいところはありませんか!?」

「あ、じゃあ時間結構あるからもっと中心街に出てみない?」

「良いですね!」


 女三人集まれば、この頼もしさ! やはり持つべきものは感性の近い強敵ともですわ!


「あれ……? スマホ(魔)に着信が?」


**********************

【キャラウェイさん】


キャ:ベルさん……お小遣いの追加を頂けませんか……。どうしても欲しいものが……。


ベ:構いませんがどういうものですか?


キャ:図鑑です。人間界の。魔法を使って持っていくことも考えましたがそれはさすがに魔族でも良心が咎めました。


ベ:思いとどまっていただいてよかったです。お金ならありますので。


キャ:た、頼もしい……! 街の本屋に居りますので来ていただけると助かります。

**********************


 困りましたね。私たちは今から女子会なのですが……。


「えっ!? キャラウェイさんが困ってるの!? すぐに駆け付けなきゃ!」

「ず、図鑑……! 本屋……! グズグズしてんと行きますよ!!」


 ……え?


「あの、じょ、女子会は?」

「キャラウェイ様の一大事よ!」

「本屋に行かんでどうするんや! はよう!!」




 やはり、私はデボラ様に全てを捧げることに決めましたわ。

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