第6話 挑発
私とジュマ、
それも、停めてある自動車と自動車の間に隠れて。
他の精神体やセキュリティはスルーできても、高介氏には見えてしまうんで、ひっそりとしゃがみ込んでいるわけッス。
────エンジン音。
一台の乗用車が私たちのいる場所の反対側にある位置に停め、ゆっくりエンジンを切ると、運転していた人物が姿を現す。
高介氏。
白いマスクを着け、スーツ姿でいかにも仕事帰りってかんじッスね。
お疲れでしょうが、付き合ってもらうッスよ。
ジュマの空間倉庫からスピール・ハローを取り出し、引き金を引く。
装填されているのは空間複写転移魔法。
なんか漢字だらけッスが、ようはこの地下駐車場を丸ごとコピーしてそこに転移するってわけッス。
右から左へ、画面が一ページ移った感覚で、私たちと高介氏はその空間へ。
自動車やコンクリートの壁やら柱はそのままッスが、電気までコピーできないんで、一気に真っ暗ッスね。
まあこっちはお馴染み、魔導具のロックグラスで見えるッスが、高介氏は……、姿勢を低くして自分の乗用車に身を隠してるみたいッス。
「彩……」
囁く文姫さん。
すると、高介氏の乗用車からスーツ姿のイケメンが三人現れたッス。
その動きが特殊部隊の軍人さんみたい。
と、まだ見つかるわけにはいかないんで仕留めさせてもらうッス。
ハローは魔法発動中で空間を維持してるんで使えない。
というわけで空間倉庫からパイソンの登場ッス。
しかも今回は実弾、357マグナムを使用するッス。
前回同様、魔法への
────それは、弾丸に意思や感情をのせて撃つ!
両手で構え、引き金を引くと特有の銃声とともに『消滅』の意思がのった弾丸がイケメン式神の額に命中。
被弾したイケメン式神はその衝撃で倒れながら消滅し、元の
強烈な意思・感情は気であって、魔法ではないし、構成する魔法術式を崩すことも可能。
そんな感じで、残りのイケメン式神も消していくッスよ。
二発、三発、四発と、コンクリート製の地下駐車場に銃声が鳴り響き、再び私たちと、高介氏だけになったッス。
まあ、弾丸が貫通して自動車の窓ガラスが割れたり、穴が開いたりしたッスが、コピーなんで問題ないッス。
そうそう、コピーといっても装填された魔力の消費による時間制限はあるッスからね。
ハローの魔力が無くなれば、自動的に世界夜へ返されるッス。
ふうぅ……。
大きく息をはく私。
────柄にないこと、はじめるッス。
「そこに居るんでしょう? 長谷川高介さん」
コンクリートの壁に囲まれて響く私の声。
更に私は位置を特定されないように魔力で声の反響を調整しながら話しかける。
「私はね、あんたに撃たれて追いやられた
声を太めに、怒りをにじませて言う。
「今日、ここへ来たのはねえ、あんたに仕返しをするためさ」
反応は見えないッスが、聞いているのは感じられるッス。
「あんたのせいで私は悪者にされて、家族にも会えなくなった」
事実ッス。
「家族に会えないつらさがあんたに分かる? 分かるわけないよね、そばに弟がいるのを分かっていて撃ってるんだからさ!」
後半は事実ッス。
「二年間、苦しかったよ、しんどかったよ。そして、いつか必ず復讐してやるって決めたんだ」
これは嘘ッス。
「そして、どうやったらあんたに同じ思いをさせられるか考えた。────あんた、娘がいるんだって?」
高介氏の雰囲気が変わった。
「あんたを痛めつけても私の気は晴れない。私以上の地獄を味あわせなきゃ気が済まない。だから────」
……。
「あんたの大事なものを奪った」
……。
「あんたの娘、いまどうなっているのかねえ」
探理局の時よりも大きくて異様なオーラが高介氏から吹き出しはじめたッス。
それはロックグラスなしでも見えるほどに強大。
ピリピリとした殺気が空間に広がっていくッス。
「貴様……、
魔獣の咆哮のような高介氏の叫び。
そして、ついに隠れていたものが姿を現したッス。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます