第5話 城跡・戦夜~壱

「前回と同じ配置ッスね」


茂みに身をひそめ呟く私。


「あの忍者は?」


「本丸の西側に隠れているッス。そこが初期位置みたいッスね。他には居ないッス」


 私の左肩近くで浮遊しながら文姫ふみひめさんに答えながら、改めて周囲を確認。


 ────イブさんヤエさんが居る館で試射をした翌日。


 夜の八時くらい。


 私たちは世界夜セカイヤにある城跡、二ノ丸の場所に来てるッス。


 目の前には本丸へ通じる赤い木製の橋があるッス。


 そんで、私の足元にはジュマが待機。


 前回は、本丸の区画まで入っていたッスが、今回は手前の区画。


 そして左側の髪にはウサギのアクセサリーが留めてあるッス。


 このピンクのウサギさんは、本体が十センチくらいの大きさッスが、耳は三十センチ近くもあって私の頭上を揺れているッス。


 アニメ調のデザインで、凶悪な顔つきが気に入っているッス。


 しかもこのウサギさん、ただのアクセサリーではなく、索敵能力があって私の視覚に直接、情報を伝えてくれるッスよ。


 これに魔導具のロックグラスを併用すると夜獣やじゅうさんに加え、暗くて見えないはずの木々や記念碑、東屋あずまやまでバッチリ見えるってわけッス。


 文姫さんが都市神とししんから借りてきたピンクのウサギさん。


 かつて夜獣さんと戦っていた先輩のものらしいッスが、使えるものは何でも使うッス。


 ちなみに今夜の私は、黒のロンパースに黒のサマーシューズって格好ッスよ。


 上は胸元まで、下は足首から太股まで肌を出しているんで、おじさんは大喜びッスね。


 ジュマは、まんま犬なのは変わらないし、文姫さんも着物姿ッス。


「────では、作戦どおりいくッスよ」


 私の声にうなずいて答えるジュマ。


 すると私の左手に新スピール、命名ハローが現れ、それを握る。


 いつものパイソンではなく魔法を使うことに特化したスピール。


 文姫さんのご厚意で、今回のために用意してくれた物であり、きっちり試し撃ちしたやつッス。


 場面に応じて切り替えられるッスが、いまは強射に設定。


 さらにサプレッサーを思わせる、呪文が刻まれた拡張魔導具を銃口部分に装着して、魔法の威力を上げて六倍増ッス。


 やることは狙撃。


 それは前回と同じッスが、このままだとサルの夜獣さん、私の気配を感じて仕留めにくるッスからね。


 ターゲットとサルの夜獣さんの位置が変わっていないのを改めて確認。


 殺気よりはやく、一気に構え、引き金を引くッス!

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