深紅の赤い花
秋穂リト
深紅の赤い花
早朝の澄んだ空に響くのは、二人の笑い声と水の清らかな音だった。
バシャバシャと、水を掛け合っているのは銀髪の少女と水色の髪の少女。
少女達は、透き通った水を浴び合いながら朝のひとときを過ごしていた。
銀髪の少女の名は「ノエル=クラリドール」。ロングヘアを肩に垂らした十四歳の学院生である。孤児であり、この「レストロゼール」という施設で七年の月日を過ごした。ロゼールの七期生である。
対して、水色の髪の少女は「ランカ=ローレライ」という。ロゼールの八期生であり、ノエルの後輩にあたる。ライトグリーンの瞳が彼女のアイデンティティである。ノエルと32号室で生活を共にしている。
まだ朝礼の鐘も鳴ることを知らない朝方に、ノエルとランカは中庭で洗濯をしていた。白い学生服を板に擦り込んでいく。跳ねる水が気持ちいい。
ーーーそして、気づけば水の掛け合いに発展していたわけだ。
「もう、びちょ濡れだよー」
「私もだよ、ランカ」
ノエルの白銀の髪から、水が滴る。粒は草地に消えていった。寝巻きが透けて、色々見えてしまっている。目を逸らしながらもランカはチラチラと、彼女を見ずにはいられなかった。
学棟や寝室棟の立ち並ぶ北側から続く中庭を挟んで、南には教会がある。その教会の木製の大きな扉が音をたてて開いた。
「あ、おっはよーテンちゃん」
「あら、おはよう。朝から元気ね、ノエル」
中から出てきたのは、「テンペスト=アランダスト」。ロゼールの教会の牧師として、ロゼールに住み着いている、黒髪の少女。歳はノエルと同じであり、教室でも席はとなりである。
びちょ濡れの二人を見て、テンペストはため息をつく。
「朝礼までには着替えなさいよ?そのままだと、風邪引くわよ」
「テンちゃんも浴びる?」
「話聞いてた???」
桶から綺麗になった服を取り出し、「冗談だよー」と、物干し竿に向かって彼女は走り出した。竿に、ノエルとランカの学生服がかかる。
朝の心地よい風を受けて、ひらひらとたなびいた。
桶を移動させようと、両端を二人で持ち上げようとすると、東の門が開き、黒い車が入ってきた。この時間の来訪なら、おそらく彼女だろう。
「グットモーニング。朝から元気ね、お嬢さんたち」
ロゼールの制服を身にまとった大人な女の子が出てきた。彼女はノエルの先輩である六期生であり、ロゼールの外から通っているお嬢様である。制服が良く似合っている。「リー=スクラント」という名で、黄色い髪をしている。
「ぐっと...も?」
「おはようってことですよ、ノエル先輩」
後輩に指摘を受け、恥ずかしさの代わりに桶を持ち上げた。
じゃーっと、排水口に水が吸い込まれていく。小さな渦を作り、ぱっと消えた。「ふぅ」と、額を腕で拭い学棟に向かって歩き出した。
リーは、花たちに水をやっていた。その横を、私たちは通り過ぎる。テンペストも教会に戻っていくのを確認すると、二人は部屋に戻ることにした。
白い制服に身を包み、朝の鐘の音が響く校舎を歩いていく。朝八時の鐘の音を合図に、生徒たちは宮殿に向かう。舞台横では、先生たちが何かを話していた。
「じゃあね、ランカ」
「はい、ノエル先輩」
ランカに別れを告げ、七期生の列に並ぶ。間に数人を挟み、テンペストも並んだ。舞台上に人が立つと、それまで賑わっていた宮殿は静まり返った。
生徒の前に立つのは、学園長である。凛々しい身なりでキリッとした顔の女性。胸にはカーネーションをあしらったピンが刺さっている。
「おはよう。今年も学祭の季節がやってまいりました」
……学祭。毎年、ロゼールで夏に行われるお祭りである。この学祭では、学年問わず色んなグループでそれぞれの出し物を用意する、そんな感じのちょっとしたお祭りである。
実は人気もあるらしく、校外からも街の人達が足を運んでくるらしい。ロゼールの一大イベントである。
移動が許されると、私の元にランカが駆けつけてくれた。私の右手をぎゅっと握る。
「あっちで、リー先輩が待ってました。例のあれですね」
「例の......あぁ!あれね」
引っ張られるように歩き出すノエルの後ろをテンペストは追った。
たどり着く頃には、リーが何か紙を広げていた。
「じゃーん!案をまとめてみました」
「わぁー。すごい量ですねリー先輩」
ノエルが書類を前に右往左往する。
「これ、全部計画書ですか?」
ランカが指を指す。その指の三倍はあるであろう計画書は存在感を放っていた。
もちろんよと、言わんばかりにリーはドヤ顔をした。
ノエルとランカとテンペスト。それに加えリーと、朝方によく集まるメンバーである。
数百枚という計画書にみんなで目を通していく。「だるま落としゲーム」に「ダンゴムシごっこ」。お嬢様の脳内は、平民には理解できないものだ。
そんな中から、ランカはある案を見つけた。
「メイド喫茶?」
「つい最近、本で読んだの。メイドの格好をしてカフェを営むみたいね」
お嬢様は語り出す。メイド服は憧れである。
ーーーだが、人前で着るのは少しハードルが高い。
しかし、ランカが興味深々なので、私たちの出し物は「メイド喫茶」に決定になった。リーの凄いとこはこういうとこで、メイド喫茶をすることが決まって十分も経たない内に、教室とメイド服の確保を終わらせてしまった。ーーー流石、お嬢様である。
「よし、さっそく準備始めるわよ!」
声をあげるリーにスキップしながらランカは着いて行った。そんな彼女をノエルは見守るのだった。
「さまになってますね。似合ってます」
ぎこちなさが隠しきれない口調のテンペストをよそに、リーはポーズを決めまくっていた。
用意してくれていたメイド服は、しっかりとしたもので、そのまま館にいても差し支えのない見た目である。
それに便乗するように、ランカもメイド服を身にまとった。白いレースがひらひらと舞う。
正直、兵器である。かわいいがすぎる。
ーーーその日、七月一日の夜。あの後動きまくった疲れか、ノエルは寝床に着くなりぐっすり寝てしまった。そんな彼女の横で机に向かっていたランカはそっと席を立つ。
掛布団を蹴飛ばして縮こまっている彼女を見て、ランカの中で何かが揺れた。
そっとノエルに近づき、布団をかけてあげる。彼女は可愛らしい寝息をたてながら、胸を上下させていた。しばらくノエルを見つめたあと、そっと顔を近づけるが、ベットの縁に膝が当たってしまう。
ドン。と鈍い音が響き渡り、ノエルと目が合った。
「ど、どうしたの?」
「い、いえ。ちゃんとお布団かけて寝てくださいね」
早口でそう伝えると、ランカはベットに飛び込んだ。頭の上にクエスチョンマークを浮かばせたままのノエルを残して、そんな夏の一日は終わった。
ーーー次の日。
朝から、学祭のことで生徒の話題は賑わい続けていた。嬉しいことに学祭前は勉学が午前中に終わり、午後からは準備に時間が使えるのだ。
それが楽しみすぎて、授業中もノエルは窓の外を眺め、何をしようかワクワクしていた。視線を感じ、窓から目を離すと、横でテンペストがニヤニヤしていた。
「何してるの」
「空見てる」
「授業中に?」
空は透き通っていてなんとも綺麗だ。しかし、学祭の前日には天気が悪くなるらしい。学祭に支障がでなければいいが。
勉学を終え、ランカの待つ食堂へと向かう。
中に入ると、空腹のお腹を刺激する何とも美味しそうな匂いが漂っていた。
しかし、ノエル達のお目当ては学食ではなく。
「あっ。待ってましたよー」
ランカが茶色い木組みの箱と一緒にテーブルの一角を陣取っていた。
中にはご馳走が敷き詰められている。朝からこれだけの量をどうやったら作れるのか、ノエルには分からない。
「美味しそー!食べていい?ランカ」
「はい、いいですよ。食べましょ食べましょ」
たまご焼きをお箸でつまんで口へ運ぶ。
美味しすぎる。ランカは絶対にいいお嫁にいけると、箔をおせるほどだ。
ランカは毎朝、朝食を作ってくれるのだが、それに合わせてこのお弁当とは......
ランカの女子力には参ってしまう。
お弁当を囲む私たちの元に、上級生二人がやってくる。リーと、その横にいるのはこの食堂の看板娘だ。
エモン=ラムネイル。リーの同級生で、しっかりとした性格の見習いコックさんである。赤い髪に可愛らしい白いエプロンがなんとも似合う。
「エモンが、喫茶店の料理を提供してくれるみたい!」
「リーのお願いなら断れないよぉ」
デレデレと、頭をかいている。きっちりとした見た目とのギャップがすごい。
「これで、食料の問題は解決ね!。後の残りはさっさと片付けちゃいましょ」
お弁当からウインナーを盗み、彼女は食堂を出ていった。
お弁当を部屋に置いて、三人は割り当てられた部屋へ向かう。私たちの班は、入口すぐの中部屋を借りた。寝室棟から学棟へ渡ると、何やらざわざわとしていた。
「人が倒れたんだってさ。誰か、救護の先生を呼んでくれー」
男子生徒が部屋から声をあげる。物騒なこともあるものだ。野次馬が廊下に詰まって進むことを忘れている。
「あ、あっちからまわりましょうか」
「そうだね」
部屋までの道はまだあるので、そちらから回ることにした。
倒れた女子生徒は保健室に運ばれ、横になっていた。
「なんでいきなり倒れるかなー」
エモンは苦笑いを浮かべている。ベットに横たわっているのは黄色い髪の彼女である。
「無理のしすぎだって。楽しいのは分かるけど、ちょっとは休んで」
「エモン怒らないでよー」
「怒ってないよ」
リーの頬を人差し指でツンツンする。気づけば苦笑いは消えていた。リーの世間話を一方的に聞いてあげる。彼女と出会って数年。築き上げられた関係である。「ねえ、聞いてるー?」っていう声で我にかえる。
真面目な顔で彼女を見つめる。身長は小さめの癖して立派に成長してやがる彼女の体に、本能が掻き立てられるが、抑え込もうと息を呑む。
しかし、火照った顔で見つめられるものだから、我慢も虚しく彼女の唇に唇を重ねた。
「なんか...久しぶり」
「最後にしたの一ヶ月前だもん」
「エモンが構ってくれないから寂しかった」
「なにそれ、超可愛い」
もう一発キスをかましてやって、エモンは保健室を後にした。
「熱上がっちゃうよぉ」
滅多に吐かないリーの弱音は震えて消えていった。
準備も大詰めの土曜日。リーも復活し、カフェスペースも雰囲気が出始めた。学園内も活気がある。しかし、天候は大荒れである。
「うわー降ってるねぇ...」
窓を叩きつける雨の音は優しいものではなかった。ガラスが割れないか、心配になる。
「どうしよう」
隣の教室から、リーの声がした。カフェスペースの隣は厨房になっていて、棚を見つめて何やら唸っている様子だった。
「どうしたんですか?」
「机に敷く布をきらしちゃってるのよ。レースついてるやつ」
「あー。あれですか」
4つのテーブルにはひいてあるのだが、木目が丸出しの机がひとつ残っていた。あれでは少し不格好である。
「他のところに借りる訳にもいかないし...」
「私、買いに行きますよ?」
ノエルの提案に表情が明るくなるリーだったが、空模様はご立腹だった。
「ひとりで行くのは危なくないかしら」
「なら、私もついていきます」
ランカがノエルの横に並ぶ。「なら、大丈夫そうね」と、リーはお金の入ったがま口財布をランカに手渡した。
昇降口の時点で地面はぐず濡れだ。数日前の透き通った天気はどこへいったのだろうか。
「早めに済ませましょう」
「うん。そうだね」
傘を広げて、中庭を進んでいく。雨風を受けて、木がしなっている。
何とか門にたどり着き、潜った先には雨でも尚、人通りの絶えない商店の立ち並ぶ街が見えた。
きゃっきゃ言いながら階段を下り、人並みに混じっていく。精肉店や、八百屋のわきを抜け、雑貨屋へとたどり着く。髪もその頃にはびちょびちょだ。
店員さんに微笑まれながら、目的の布を手に入れ、店を後にする。
「あ、あれ?」
傘立ての傘が1本無くなっていた。
「私の傘ー!?」
不運なことに入れ替わってしまったらしい。
ノエルの傘は黒い傘に変わっていた。
「色を間違えることあるんですね」
「うぬぬ。ランカ〜、入れてくれない?」
ランカは一瞬びっくりしたような顔をしたが、
「い、いいですよ」と、中に入れてくれた。
街中を二人で進んでいく。
「なんかこうしてるとさ〜」
「はい」
「お友達って感じがするよね」
「そ、そうですね」
雨足も気づけば少し弱まった気がする。
ランカがしょんぼりしている感じはするが、ノエルが気づくことはなく、そのままロゼールへと戻った。
ーーーそして迎えた、学祭当日。
メイド喫茶はお客さんで賑わっていた。雨を降らせきった雨雲も、空からなくなっている。
メイド服を着た生徒たちはせっせと働いた。
交代で、学園の中をみまわったりなど、それぞれ祭りを堪能し、最後のお客さんを送り出したところで、私たちは一息ついた。
「疲れたー」
ランカが壁にもたれかかる。ノエルは撃沈している。
「おつかれー。いやぁお客さん入ったね」
エモンにリーがグットポーズをする。
床に五人で座り込み、窓から夜空を見上げた。綺麗な星空だ。
「これからも、みんなで友達がいいなー」
ノエルのそんな一言はその場の全員を笑顔にさせた。
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*こんばんは。で、いいのかな?
一週間ぶりだね。調子はどう?
......。
*その様子だと、また上手くいかなかったんだ
ね。見りゃ分かるさ、満足して無さそうだも
ん。
*そうだ。ならいいこと教えてあげるよ。
*もっといいエンディングにする方法を
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早朝の澄んだ空に響くのは、二人の笑い声と水の清らかな音だった。
バシャバシャと、水を掛け合っているのは銀髪の少女と水色の髪の少女。
少女達は、透き通った水を浴び合いながら朝のひとときを過ごしていた。
まだ朝礼の鐘も鳴ることを知らない朝方に、ノエルとランカは中庭で洗濯をしていた。白い学生服を板に擦り込んでいく。跳ねる水が気持ちいい。
ーーーそして、気づけば水の掛け合いに発展していたわけだ。
「もう。びちょびちょだよぉ」
「先輩」
タオルで彼女の顔を拭いてあげる。銀色の髪は、朝日を受けてキラキラ輝いている。
「ランカ...顔近い」
「動かないでください。うまく拭けないじゃないですか」
身長差が明らかな二人だが、ノエルが中腰になることで、ランカはご機嫌にタオルを動かしていた。
「できましたよ」
「後輩に髪拭かれるのは照れるなぁ」
そんなことを言いつつ、どこか嬉しそうにランカは見えた。そんなことをしていると、教会のドアが開く音がした。中からテンペストが出てくる。
「おはよー、テンちゃん」
「おはよう。朝から元気ね、あなたたち」
テンペストはぐっと背伸びをして微笑み合う私たちを見下ろした。
「テンちゃんも水浴びする?」
「しないわよ、そんなこと」
「えぇ〜」
タオルを肩にかけ、桶を移動させようとした時に、丁度東の門が開き、黒い車が入ってきた。誰の車かはすぐに分かった。
「グットモーニング。お嬢さんたち」
「ぐっと...も?」
「おはようって意味ですよ、先輩」
リーは、そのまま用具入れの方へ向かっていった。綺麗な金属でできたジョウロに水を注いでいる。桶を片付けたあと、ノエルとランカは、彼女の元に近づいて行った。
庭の一角に広がる、赤色の花壇。ひとつとして枯れている花はなく、手入れが行き届いている。リーの几帳面な部分が、滲み出ている感じだ。
「赤色のキクだー」
ノエルがしゃがみこんで、キクの花を見つめる。その隣で「先輩に似合いますね」と、ぼそっと呟いてみた。
『毎年恒例の学祭が、今年も行われることになりました。庭でくつろいでいた朝から、今に至るまで、あっという間の一日でした。
私の見つけた企画書通りに話が進み、私たちの班は、「メイド喫茶」をすることにしました。今から楽しみです。』
そう日記に書き記した私は、席を立った。
先輩にあたるノエルは、布団を蹴飛ばして寝息をたてていた。
そんな姿すら、私にとっては大切なワンシーンである。
そっと近づいて、布団をかけてあげる。心做しか和らいだ彼女の表情を見て、胸がドキッとした。
「先輩はほんとにずるいです」
勇気をだして、もう一歩踏み出す。私の唇はノエルの額にひっついた。しばらく離したくないという感情を、恥ずかしさが押し切り、私は数歩退いた。
急に我に返る。内側から熱が込み上げてきて、私はベットに飛び込んだ。夏の一日がこうして終わる。
ーーー次の日。
学生が美味しいご飯を求めて、食堂に集まり出すお昼時。ランカは、一人先に席を陣取っていた。待っているのは、ノエル達だ。
テーブルに置いてあるのはノエルに食べさせてあげたいお弁当。眠い目を擦りながら作ったものである。
間もなくして、ノエルとテンペストが食堂へやってきた。お腹を空かせているようだ。お腹に手を当て、うーうーと、唸っている。
そんな彼女に手招きして位置を知らせる。
大きなお弁当箱を見て、ノエルは涎を滴らせた。
「食べていい?」
「いいですよ」
待たせる意味もないので、そそくさに蓋を開ける。空間になんともお腹をくすぐる匂いが広がった。
ノエルの目には星でも写っているのだろうか。そんなレベルで輝いていた。これだけ喜んでくれれば、早起きした甲斐があったものだ。
「先輩」
「ん?」
「あーん」
いつもの私なら絶対にしないこと。お箸にたまご焼きを挟んで、ノエルの口元に差し出していた。無意識な行動だったので、そこから腕を動かすことはできなかった。
ノエルは一瞬固まったようだが、パクッと食いついてくれた。これで拒まれてしまっては恥ずかしさでどうにかなっただろう。
しかし、彼女に無理させたんじゃないかと、腕を引っ込めた後に後悔の気持ちが込み上げてきた。
そんなことをしていると、リーがやってきてエモンを紹介してくれた。はっきりした彼女の性格に、ランカは羨ましさを隠せなかった。
午後からは、昨日の続きである。借りた教室でカフェの準備をしなければならない。なかなか大きなお弁当だったので、そこそこお腹がいっぱいだ。お弁当箱を部屋に置き、廊下へ出る。
下の階から、普段聴くことのない量の足音がした、進行方向なのでしょうがなくそっちに向かってみる。大勢の野次馬の波に、ランカとノエル、テンペストは足止めをくらった。
「人が倒れたんだってさ。誰か、救護の先生を呼んでくれー」
人混みの中から声が上がった。人が倒れるなんてことは滅多にないのだが、物騒なこともあるものだ。
「私、ちょっと見てくる!」
「せ、先輩!?」
ノエルは彷徨う野次馬の波に潜り込んで行ってしまった。止めようにも、彼女はあっという間に奥の方へ行ってしまった。もう、ランカとテンペストが入り込む隙間はない。
しょうがなく、二人で先に教室に向かうことになった。
倒れていた人は知っている人だった。というより、ついさっきまで話をしていた人である。
私より先に駆けつけていた赤髪の少女が、リー先輩を抱きかかえていた。そのまま保健室に向かおうとするエモンに、「ついていってもいいですか?」と、聞いていた。
リーはすぐに意識を取り戻した。「疲労でしょうね」と、エモンは言う。「えへへ」と笑うリーだが、確かにその顔に元気はなかった。
ランカには最初からおみとおしの様だった。
他愛のない話を三人でした。普段、こうやって話すことのない先輩達との会話は、すごく楽しかった。
すると、不意にノエルの話題になった。
「ノエルちゃん」
「なんですか?」
リー先輩は天井を見上げたままだ。
「ノエルちゃんは、ランカちゃんのことどう思ってる?」
そう聞かれた瞬間。お昼ご飯の時のことを思い出した。「そ、そうですね...」と言葉に詰まる。
「きっと、ランカちゃんはノエルちゃんのこと好きよ。...私が言うのが正しいのか分からいけどね」
「そうですか...そうですよね」
心の整理がつき始めた。もう数年も一緒にいるのに、なぜ気づかなかったのか。自分でも謎である。そう意識すると、尚更恥ずかしくなってきた。
初々しいノエルの反応を見て、リーは満足したように眠りについた。
学祭の準備大詰め。リーも復活を遂げ、メンバーにも拍車がかかりだした頃。ノエルとランカの間には、明らかな壁があった。
ランカもノエルに避けられているのは何となく分かる。あの日から、早朝に一緒に洗濯することはなかったし、お昼ご飯こそメンバーで食べるがそれぞれ学食だったりと、二人の関係は難航していた。
二人の心情を映し出したかのように、空模様は最悪に近かった。昼時というのに、黒く染まった雲から、轟々と雨が降り続けている。明日までにやむといいが。
「どうしよう」
「どうしたの?」
「テーブルクロスきらしちゃって」
箱の中の布は、テーブルに敷くには少し小さめだった。このままひこうとすると、4つのうちの1つが不格好になってしまう。
助けを求めに、リーとエモンは教室へ移った。
やっぱり、距離を置かれているのだろうか。数日前のお昼時に、たまご焼きを差し出したことを今更ながら後悔している。
やり直せるならやり直したいくらいだ。
不意にノエルと目が合ってしまう。はっきりと見ないまま、私は目を逸らした。
数日前の朝にも目を逸らした気がするが、それとは訳が違った。
「ノエルー。あれ、取ってくれない?」
「うん。いいよ」
しばらく見ていなかった彼女の笑顔。しかしそれは私に向けてのものじゃない。必死に手を伸ばしている牧師への反応だった。
胸が苦しくなる。目頭が熱くなるのを堪えながら、必死にコルクボードを仕上げていった。
三人がいる部屋に、リー達が入ってきた。
「あの、買い出しお願いしたいんだけど...」
「こんな雨だから、ひとりじゃ危ないんだよね」
エモンは壁掛け時計を見上げる。
「私。この後、会議あるんだよね...」
「なら、私とテンちゃんで行きますよ!」
瓶を手に取り、背伸びから元に戻ったノエルが、そう返した。
「い、いや。ノエルちゃんなら、ランカちゃんとーーー」
「いや、私がいると迷惑させちゃうし...」
間髪入れずにそう答える。
「...っ!!」
堪えきれなくなったランカは走り出していた。彼女の足跡は徐々に雨音に消えていった。そして静寂が訪れる。
口を開いたのは、リーだった。
「追いかけなくていいの?」
「いい訳...ないじゃん」
瓶を机に置き、私は走り出した。渡り廊下の水溜まりにも躊躇なく突っ込んだ。跳ねた水はひどく冷たい。
でも、足は止まらなかった。階段を駆け上がり、鉄のドアが開いているのを見つける。私が迷わずここまで走ってきた理由。それはーーー
「...なんでここまでくるんですか」
彼女の顔は涙と雨でぐちゃぐちゃだった。大粒の雨が髪を濡らしていく。二人が佇んでいるのはロゼールの屋上である。
「屋上好きでしょ?」
「覚えててくれてたんですね。...先輩。はっきり言わせてください」
ランカは大きく息を吸った。打ち付ける水の音だけが空間に流れる。
「先輩。好きです」
いつから胸に秘めていたのか忘れてしまったその言葉。吐き出した瞬間に、ランカは肩の力が抜けたような気がした。しかし、胸の鼓動は早まるばかりだ。
そんな私を、銀髪の少女は抱きしめた。彼女の体は温かい。生命のパワーを感じた。しばらくそのまま動かないでいると、ノエルが喋り出した。
「いつから好きだった?」
「初めて会って、その数日後です」
「...そんな前から」
「そうですよ」
「ごめんね、気づいてあげれなくて」
「...ばか」
初めて、先輩に吐いた暴言。でも、二人の顔は逆に明るくなっていた。見つめあって笑い合う。その元気な雰囲気に、雨雲は行き場を求めて去っていった。少しづつ、雨が弱まる。
「先輩はどうなんですか?」
「...私だってランカのこと好きだよ」
ランカの腰に回した指で数えだした。
「お料理がうまいし、洗濯も早いし、掃除綺麗だしーーー」
「私、家政婦じゃないですよ?」
「家政婦じゃなくて。妻に欲しいかな...あっ」
ノエルの頬が赤く染まる。必死に弁明しようとするが、ランカには効かなかった。どこにもぶつけようのない恥ずかしさ。私はノエルを離すと、彼女の目に手を当てた。
ーーー時が止まる。音も、光も何も感じなくなる。ただ体の一部を交わして伝わってくる温かさだけが、私の体を巡っていた。
背伸びしないと届かないけど、必死に伸ばした私の愛情表現を彼女は拒むことなく受け入れてくれた。
庭の赤いキクが、雨上がりの風を受けてキラキラとたなびいた。陽の光をめいいっぱい浴びて。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
*こんにちは。で、いいのかな?
一週間ぶりだね。
......。
*良かったね。彼女は幸せそうだ。
あの後、学祭はかわいいメイド二人が盛り上
げたそうだよ。
......。
*いいエンディングだろ?ノエル=クラリドール
だっけ?彼女の顔をみてごらん。幸せそうな
顔をしてるだろう?
......。
*......。
......。
*君。ほんとに何も話さないよね。何がしたい
の?
......リセット。
*本気なのかい?これ以上の、いいエンディン
グなんて存在しないと思うけど?
リセット。
*......。そうかい、分かったよ。僕はどうなって
もしらないよ。どうやろうが君の自由さ。
満足するまでやればいい。
*君の思う最高のエンディングにする方法を
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「遅くなっちゃったな...」
鞄を片手に、中庭を歩いていく。六月三十日の夜。月光を浴びてキクの花が赤い光を発していた。夜風は少し肌寒い。早く帰ろうと足を急がせるが、物音にびびり立ち止まる。
振り返ると、木々が揺れていた。心臓に悪いのでやめて欲しいものである。車を待たせているので、ゆっくりしていられない。
帰ろうと正面を振り返ると、お腹に冷たい何かを感じた。それは徐々に下半身へ伝っていく。ぽたっと、黒いレンガに水玉模様ができる。赤い水滴でくっきりと。
もうひとつの感覚は遅れてやってきた。腹部をつんざくような痛み。いや、実際に腹部はつんざかれていた。
レンガの上でもがく。もがき、もがき続け痛みから解放されようと必死になる。声も上手く出せない。喉は硬直してしまっていた。掠れた声は一瞬で消えていく。
ずっとレンガを見つめていた視線を、一瞬空へと向ける。液体の滴る刃物。それを持った人類。液体は自分の血液だとすぐに察した。
意識が薄くなっていく。冷たいレンガの上で冷たい血を流しながら、私は息絶えた。
今日は朝から騒がしい。朝早くに先生がやってきて、部屋から出るなと残して忙しそうに去っていった。
私の名前はノエル=クラリドール。そして窓から外を眺めているのは後輩のランカ=ローレライである。
今日は天気がいいので、洗濯物を干したかったのだが、何かがあった様子で学園内はドタバタしていた。
「今日は、リー先輩も花に水やらないんですかね」
窓から中庭を覗く。赤いキクが咲いている花壇に人の姿はなかった。普段ならリー=スクラントが、水をやっているはずなのだが、彼女は学園にすら来ていないようだ。
「学祭の事を話す台本でも無くしたのかな」
「それでこんなに大事になりますかね?」
冗談交じりのノエルの発言に苦笑いを返す。
彼女は私を見ていない。...しかし、これはおかしい。朝からこの騒ぎだ。ただ事ではないのは確かである。
しばらくすると、先生がやってきた。
「宮殿に集合しなさい。落ち着いて、二人で来るのよ」
妙に念を押して、先生は次の部屋に移って行った。隣の部屋の生徒にも全く同じ事を伝えている。
「とりあえず、行きましょうか」
「そうだね」
廊下にも不穏な空気が立ち込めていた。あちらこちらでこそこそと話声が聞こえる。「血」だとか「ナイフ」だとか。不安にさせる要素しかない単語が飛び交う。
「ほんっとに何があったんだろ」
「あ、二人とも」
私達が振り返ると、テンペストが周りを見渡しながら話しかけてきていた。
「これ、一体どういう騒ぎ?全然、分かんないんだけど」
「テンちゃんもなんだ......」
ノエル達は人の流れに身を任せ、宮殿へと辿り着いた。場は騒然としていた。訳の分からない生徒と、走り回る教師達。ざわざわとした状況をクラップ音ひとつで鎮めたのは、学園長である。
「こんな時こそ、落ち着きを忘れないように。あなたたちは、ロゼールの学生なのですから」
生徒たちが学園長を見つめる中、先生達は、固まって何かを話している。顔は真面目だった。
1人の先生が、学園長とアイコンタクトをとる。学園長は深くうなづいた。
学園長に変わって文学担当の教師が教壇に立つ。「えぇー」と、空気を入れ替えながら彼は大きく深呼吸をした。
「生徒のみんなには、刺激が強いかもしれないが...」
座り込む生徒全員を見渡し言い放ったのは、悲しい現実だった。
「今朝、中庭で人が死にました」
こういう状況を言い表すには絶句という言葉が似合う。凍りついていた。
「1度、各自部屋に戻ってください。施錠もするように」
沈黙が流れる。当たり前だ、みんながよく知る人が死んでしまったのだから。亡くなったのは、花の似合う綺麗な女の人。リー=スクラント
だった。
リーの突然の死に、ノエルは現実を呑み込めなかった。呑めなかった。こんな酷いこと、一体誰が....
「寝室棟までは先生が同行します。落ち着いて戻るように」
宮殿の入口に立つ先生が片手をあげて合図をする。私たちは流れるように彼について行くしか無かった。
部屋は無音。ノエルはベットに突っ伏していた。それを心配そうにみつめる。結局、今日はそのまま自室学習となってしまった。ずっと部屋の中は嫌なものなので、早く外に出たい。
「リーさん...リーさん...」
ノエルの寝言にハッとする。彼女の体を支える机には、水滴が一粒、二粒とこぼれ落ちた。
彼女にそっとタオルをかけてあげる。その瞬間、胸がグッと締まるような感じに襲われ、喉が痛くなり、目頭も熱くなった。
「ノエル先輩...泣かないでくださいよ」
ランカの弱々しい呟きが、花瓶の水面を揺らした。
ーーー次の日。ノエルの体調が一向に良くならないので、保健室まで付き添う事にした。いつもは賑わう廊下も、今はガラッとしている。
そんな廊下に、ドアの音が響く。
「先生。ノエルの体調が悪くって」
ノエルの手を離して、椅子に座らせてあげる。彼女はどこか遠くを眺めている。
「先生?」
部屋を見渡しても、保健の先生の姿はなかった。しかし、部屋の奥にある、レースのカーテンが揺れた。出てきたのはふたつ上の上級生。
「あ、ランカちゃんじゃない」
保健の先生もその上級生に続いて出てきた。
「エモンちゃん。顔洗ったら?」
「うん」
赤髪の彼女は洗面台へと向かっていった。先生は私たちの方へと駆け寄り、ノエルの状態を見ると、開きかけていた口を閉じた。
「ノエルちゃん...」
「昨日からなんです。相当...ショックだったみたいで...」
目に光はない。あの後も泣き続けたからか、目も少し腫れていた。
「ゆっくり寝かせてあげましょうか。あの子も寝るとマシになったって言ってたし」
先生が指さしたのは、顔をタオルで拭っている赤髪の子だった。タオルを置いて、向かってくる。
「はじめまして。エモンです...」
あ、食堂の子だ。身なりで分かったが、いつもの元気はどこにもない。食堂で活気良く動き回っている彼女とは全く違った。
「その子も、リーのことで?」
エモンはゆっくり腰掛ける。そして、じっとノエルを見つめた。
「はい。なんでリーさんがこんな目に」
窓の外は相変わらず晴れで、私たちの心情はそれの影そのものだ。空気を全く読まない日差しが、ノエルの背中を照らす。
「リー...なんで死んじゃったんだよぉ」
エモンの心は、どん底に落ちていた。親友を失ったのだ。私やノエルとは桁違いのショックを受けているはず。壊れてしまっても仕方がない。
「結局、授業は来週かららしいわよ。町の警察が来て、いろいろ見て回るらしいから」
「あと数日は部屋から出れないんですね...」
「週末は雨って聞いてるし、洗濯物は消化しときたいんだけど、今、中庭に出る勇気はとても」
先生も参っている様だ。ノエルのことは彼女らに任せて、私は保健室から出た。はあっと大きなため息をつく。
正直、今のノエルを見てられない。あんなに辛そうなノエルを、ランカは見たことがなかったからだ。
ーーー私がしっかりしないと。そう決意し、部屋への帰路についた。そんな彼女を見つめる視線。
ーーーあとはあんただけよ。
土曜日。予報通りの雨である。今日は、生活に必要な物を、宮殿で支給される日である。
ノエルはとても動けなそうなので、彼女の分も代わりに貰ってくることにした。
「行ってきます。ノエル先輩。...鍵、締めていきますね」
返事はない。しかばねのようだーーーなんて洒落にならないほど彼女は動かない。
何度か彼女を見てから、そっとドアを閉めた。
「石鹸にティッシュに教材に...これで全部かな」
両手に荷物を抱え、人並みをかき分け宮殿から出た。これだけ人が集まっていれば殺人犯もとても殺せやしないだろう。警備も整っていた。
「あ、テンペストさ...ん?」
彼女は階段を上がって行った。何故?教会とは違う方向へと進む彼女に、ランカは違和感を覚える。
「...いやいや。何考えてるの私!テンペストさんがそんな...まず、そんなことする理由がない!」
ーーーでも、もし、もし彼女がこの1件の犯人なのだとすれば...
ゴクリと、息を呑む。
廊下の窓を大粒の雨が打ち付ける。不穏な道を、私は進む。テンペストはゆっくりと階段を登って行った。2階、3階と上がっても足を止めることは無い。目指しているのは屋上で間違いないだろう。
重い鉄の音が鳴り響き、ドアが開いたかと思えば、激しい雨の音がこだました。傘も刺さずに進む彼女に、私は続く。足に力を入れていないと飛んでしまいそうだ。
気づかれていないはずはない。彼女は私を無視し続けている。ますます意味が分からなくなる私に、彼女は無言でアンサーを告げた。
柵に手をつき、そしてーーー
「駄目っ!!」
彼女の体が、足が浮く。上体が柵を越え、乗り越えそうになる。私は雨風のことなんか忘れて床を蹴った。
ジュクッ。
その音はこう表現するのが正しいだろう。
何が起こったか全く理解ができない。私は激しい痛みと共に、後ろへ吹っ飛んだ。お腹を押さえて立ち上がろうとする。ーーー血だ。
「ずっと思ってたけど、ほんと馬鹿よねあなた」
「...なんで。なんでよおお!」
自分でもよく分からない感情に襲われる。何故、助けようとした?ーーー最初の勘は的中していたのに。
今も尚、血が床を染めていく。雨と共に排水溝へと向かっていくその流れは赤黒かった。
「どう?人を助けようとして、裏切られる気分」
「あなたこそ!どういう気持ちなんですか!こんなことして、一体なんの為に...」
痛みが酷くて力が入らなくなる。私は地面に体を打ち付けた。
「ーーー私のノエルに近づいた罰」
「意味わかんない!」
私は泣き叫んだ。そんな私を「諦めが悪いなぁ」と微笑する彼女。
「ノエルには私だけを見ててほしいの。邪魔する人はみんな...」
ーーー殺しちゃう。
ナイフが宙を切る。聴きたくない不吉な音と共に赤い水滴が弾け飛ぶ。
「あ、あ、あ...」
私は痛くも痒くもなかった。私の前で、両手を広げて、ナイフを受け止めてくれた人がいるから。でも、その人は悲痛を叫んだあと、倒れてしまった。
「ノエル...先輩」
溜まっていた涙が溢れだす。数日間、我慢していた泣くという行為が、私の制御を無視して放出されていく。
「はぁ...結局。私よりランカなんだ」
私の意識は飛びかけていた。ただ、恐怖だけが体を動かす源となっている。必死に地面を掻き、後方へ下がる。
「まぁいいか。またやり直せばいいし」
「やめて!来ないで!」
「次はまずあなたから殺さないとね」
「何よ次って!訳分からない!」
彼女はニタァと笑った。
「私とノエルの恋愛ゲームの邪魔しないで?モブはイベントだけ起こしとけばいいの」
鋭利なナイフが私を捉えた。深紅の赤い花が、大雨の中散っていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
*...リセット
深紅の赤い花 秋穂リト @yaki_gashi
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