粗熱
財布に入っているプリクラの写真を、ゆっくりと見たいと考えながら
玄関ドアに手を伸ばすが募る気持ちで手元を震わせる。
いつもの3倍以上の時間をかけ解錠した。
玄関にある下駄箱の上に鍵を置き自室に入る。
机上は朝から何も変わっていない散らかった書類がある。
財布を書類の上に置き椅子に座り込む。
疲労感が座ったことにより一気に押し寄せてきた。
手を伸ばしパソコンをつけ財布の中からプリクラシールを取り出した。
プリクラシールを見るとすぐにさっきまでの事を鮮明に思い出す。そして、
あの時の返しもっと変えた方がよかったなどと1人反省会を行う。
田口の方が気を使うことができたし、よっぽど落ち着いていて大人っぽかった。
プリクラシールを一番上の引き出しにしまい目を閉じた。
コンビニで買ってきたおにぎりを食べシャワーを浴びた。
引き寄せられるようにパソコンのパスワードを打ち込み
Google Chromeを立ち上げる。
検索欄をクリックすると[落合ケンイチ]が自動で出てくる。
落合ケンイチの中学を調べた時、2,3人顔写真と名前は写りこんでいた。
それをエクセルで簡易的にリスト化し印刷する。
写っていた名前を全て検索し試したが該当する人は出てこなかった。
今時、フルネームでSNSをしている人は珍しい。
中学は諦め、高校にシフトする。
高校名をいれると所属している学生やOBのアカウントが引っかかる。
高校名を入れている学生は比較的多く関連性が見やすかった。
だが今探しているのは何十年も前の生徒のことだ。
大人になっても高校の名前をプロフィールに入れている人は少ない。
大体大学生ぐらいで徐々に消え始め就職する頃には
殆どの人が高校名を消すようになる。
落合ケンイチが滞在していた年度も一緒に入れ検索する。
すると、高校のホームページが出てきた。
中を覗いてみると、卒業生用のページがありそこでは中学と同じように
「1991年入学1994年卒業生」があった。
同窓会と記載されているページを開く。
意外にもポツポツと夕立のふり始めのように書き込まれていた。
3ヶ月ほど前に同窓会をホテルのレストランで行ったようだった。
書き込まれているホテルをコピペし検索をかける。
オシャレなホームページが現れ、そこに貼られている画像には
あたりがガラス張りで出来ており
火の暖色が反射し必要最低限の灯りが皮張りのソファーなどを照らす。
ビルの屋上でロマンチックな夜景が広がっている。
書き込まれているアカウントにメールが送ることができたため
卒業生の1人として文を考える。
[お疲れ様です。
落合ケンイチって覚えていますか?
同窓会に顔を出しているのでしょうか?」
と落合ケンイチの名前を出す事で身内あることを主張し他には一切触れない。
怪しまれたらすぐにメールアカウントごと消しす算段だったが
数時間後にメールが届いた。
[お疲れ様です。
お名前を教えて頂いてもよろしいでしょうか]
と言うメールが届く。
名前か。。。適当に名前をでっちあげるか、
それとも、落合ケンイチの知人と言う事で話聞き出すか。
悩んだすえ、落合ケンイチの知人としてメールを送ることにした。
[落合ケンイチの知人の清水と申します。
連絡が取れなくてどこに行ったのか
確認したくてメールしました]
[なるほどそう言う事でしたか
落合のことは覚えていますよ。
落合は同窓会には来てないですね。
まあ来るタイプでもないでしょうしね。
高校を卒業してからのことで知っているのは
数年前に逮捕されたとぐらいですね。
お役に立てずすみません。]
[落合ケンイチが仲が良かった人っていますか?]
[いなかったように思います
いつも1人でいた記憶しかないですね]
追記でメールが届く。
[部活動やってたから、別クラスの人なら
知っているかも知れないので聞いてみますね]
部屋はデスクライトの暖色とモニターの光だけがある。
顔がわからない人にメールで情報を
引き出そうとしていることに興奮してしまう。
自分が物語の主人公のような非現実的な行為が厨二心をくすぐる。
帰りにコンビニで買ってきたエナジードリンクを開ける。
独特の人工的な甘みがかったにおいがする。
これを飲むと自然と集中することができる。
携帯をみると通知がきていた。
[今日はありがとうございます。
撮った写真送りますね。
また、一緒に遊びに行きましょうね]
と画像と共に可愛らしいスタンプが送られている。
[今日は誘ってくれてありがとう。
すごく楽しかった。
またどっか行こう。あと勉強頑張れ]と、打ち込打ち込みメールを送信した。
[ありがとうございます。頑張ります。
おやすみなさいです]
インスタを見てみると田口のストーリーが更新されている。
見てみるとそこには自分とのプリクラ写真に
顔のスタンプで顔を隠してある写真や
喫茶店で勉強していた時に飲み物を撮っていた写真に
[今日はありがとうございます]と書いてあるストーリーが画面に写る。
ためらったが一応リアクションを送りベッドに飛び込む。
今日の出来事がフラッシュバックする。
既に部屋は灯りを消したというのにチカチカと外の街灯が点滅していて
直ぐには寝付けそうになかった。
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