観察
雨が窓をノックし始める。
全ての部屋の窓が閉まっているか確認する。
梅雨時期の影響で室内には衣類の生乾きの臭いが充満している。
ユニットバスには乾燥機能がついていないため
どうしても部屋干しに頼るしかない。
時はすでに夕方。
外に出かける為部屋の入り口に置いてある登山用のザックに手をかける。
今は登山用ザックと言ってもコンパクトでオシャレな物が出回っている。
それに登山用と言うこともあり機能性も充実している。
値段は普通のリュックに比べ高いがかなり気に入って使っている。
黒色のザックの中にパソコンやノート、筆記用具などを詰め込む。
お気に入りのニューバランススニーカーを履き外に出かける。
駅の2階にある喫茶店に入る。
時間帯的に混雑はしていない。
窓際の席に座る。
この席は、窓から駅の様子が観ることができる。
このカフェは同年代ぐらいの女性が出入りしていることが多い。
簡易的な蓋が付いている透明なプラスチックのカップに入っている
カフェオレを飲みながら駅内にいる人を観察する
仕事終わりのサラリーマンやOLが早歩きしている。
その中をチラチラと部活終わりの学生の姿も見受けられた。
誰もが目的があり無心に目指している。
全体的な割合からすると男性が多い
疲弊しているスーツ姿の人を見ると痛ましく思うし
できるならそうはなりたくないと思った。
そんな風景を見ているとある1人の人に目が留まる。
短髪で頭皮が空けてみえる眼鏡をかけたスーツ姿の
不潔感を拭うことができない男性
疲労感がこちらまで伝わってくる。
あの男性の周りは他のところと比べ間隔が広く空いている。
近くの窓際の席に座っている制服を着た女子高生の会話が耳に入る。
「今時計台の近くに剥げてる人いるじゃん、あの人やばくない」
「どれー。あっあれはヤバイ」
「ここからでもわかるもんね。負のオーラが」
「それな。生まれ変わってあんな奴になったら
私だったら生きていく勇気ないもん」
「ほんとそれな」と手をパチパチ叩きながら甲高く笑っていた。
横目で制服を確認すると高松高校の制服だった。
高校生たちは男性のネタに飽きたのか「クラスにイケメンがいない」
「上級生にイケメンがいる」「同じクラスの子が付き合い始めた」
などの高校生らしい会話を初めていた。
駅員に話を聞いている老人や
待ち合わせしている同年代ぐらいの女性などを眺めながら
ノートに書き留め席を立った。
駅近くを歩いていると飲み屋街の隅で
大学生ぐらいの男女グループが集まっていた。
他の歩行者と同じように少し離れて前を通ろうとしたとき
グループの奥に見覚えのあるサラリーマンがメンバーの1人と口論していた。
声はうまく聞き取れないが口論していることは
表情や反応を見れば一目瞭然だった。
おもちゃのように扱われている。
加減を知らない子供のように、お酒が入っている大学生の男女は男性を扱う。
上着はどこかに投げ捨てられ、ポケットに入っているものは全てはぎとられ
財布の中にあるカード類を上に投げる。
季節外れの桜のようにカードは舞う
僕はただ、それを見ていた。
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