太陽の光の部屋
なんかかきたろう
太陽の光の部屋
「これ以上ない青空だね。」
「そうだね、ちょっと気持ちがいい。」
「これから僕たち、いったいどうなっていくんだろうね。」
「わからないよ。」
古びた薄緑色のアパート。二階の角の部屋。まだ誰のにおいもしない部屋にさゆりとうじろうは入っていく。
「内見もしないで部屋を借りたから、実際のところどうなのか少し心配だったけど、とりあえず日当たりだけはいいみたいだね。」
「そうね。でも内見ぐらいしても罰は当たらないと思うよ?」
「とにかく早く決めてしまいたかったんだよ。もうどうなってもいいって思っていたから。壁も屋根もあるしまあいいかなって。それと……」
「それとなに?アパートが薄緑色だから?」
「まあそれもあるかな。」
カーテンのない窓ガラスからあふれ出す太陽の光。まだ誰のにおいもしない部屋。とうじろうは窓際に立って外を見つめていた。
「まぶしくない?」
「大丈夫。それよりねえ。」
「なに?」
「僕たちどうなっていくんだろうね。」
「さっきもいったよ。わからないって。」
「そうだったかな。」
「そうだよ」
日の光は藤次郎を照らし続けている。さゆりは冷たい床に座って窓の外をみていた。
「もう一ついいかな。」
「なに?」
優しいような、突き放したような声だった。
太陽の光の部屋 なんかかきたろう @nannkakakio
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