第4話 偽善、とか、善、とかじゃない。
最初の農家さんで洗面器にお湯を貰って。
タオルを浸して猫を拭いてあげた。
何回か濡らして撫でるように拭いて。そのうち綺麗な白い毛の子が現れた。うん。かわいいねって撫で回すと嬉しそうに頭を擦りつけてくる。
つけていたピンクの首輪にはミーコと書かれてた。
「ミーコちゃん。かわいいねーおうちはどこかなぁ? すぐわかるといいねぇ」
そう撫でながら囁くと、農家さんのお兄さんが寄ってきた。
「まみちゃん、そのこ、もしかしたら裏のシズさんの所のねこかもしれないよ。ちょっと待ってな。シズさん呼んでくる」
そういうとお兄さん走って行った。
「そっか、ミーコはシズさんちのこかもかぁ。早くおうち帰れるといいねー」
「にゃぁ」
あはは。ミーコが返事をしてくれたことが嬉しくて。
わたしはたぶん、おもいっきりの笑顔になっていたとおもう。
「ミーコ! ああ、ミーコ。生きていたんだね。良かった……」
走るように、精一杯の早足でやってきたたぶんシズさん。おばあちゃん。
わたしがミーコをそおっと渡すと、愛おしいそうに頬ずりして涙を流して。
「ありがとうお嬢ちゃん。水に呑まれた時にこの子と逸れてもう生きた心地がしなくって。ああ、生きててくれて良かった。本当に嬉しい」
シズさんは何度も何度もお辞儀をして、ミーコを抱いて帰って行った。
ほんと、良かった。
ミーコが家族の元に帰れたことも。
シズさんが喜んんでくれた事も。
そして。
こんなわたしでも、ここに来て良かった。
そう、思えた事も。
偽善、とか、善とか、じゃ、ない。
わたしがここに来た事で、一つ、幸せな事が有ったことが、本当に嬉しい。
なんだか清々しい気持ちになれた。
これで今夜のライブも頑張れそう。
みんな、元気になってくれるといいな。そう願って頑張って歌おう。
夕焼けがすっごく綺麗。わたしは軽やかな足取りで公民館に急いだ。
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