第24話Ⅰ-24 エルフを仲間に?

■バーンの宿屋


そうだ、俺が異世界に全てを持ってきたのは別にヒーローに成りたかった訳では無い。

快適に、安全に、銃で異世界のモンスターを撃つ。

これだけを目指して神にリクエストした。

目的のためにはあまりこの世界に関わらないほうが良いとも最初から思っていた。


が、目の前にちっこい娘が出てきて、『売られる』と言われれば・・・流石に無視できなかった俺。

で、現在に至っている。

既にやらかした感満載だ。


「ミーシャさん、色々と話はあるんですけど、とりあえず食事にしましょうか?その前に、ミーシャさんは秘密を守れるエルフでしょうか?」


「私を侮辱するのか! エルフの約束は絶対だ! 秘密を明かすことなど無い!」


「気を悪くされたらごめんなさい、僕は遠い国から船に乗ってやってきたので、よくわかっていないんですよ。でも、これから話すこと、見たことは誰にも話さないと約束してもらえますか?」


「いいだろう、我が精霊にかけて秘密を守ると約束しよう」


「ありがとうございます。ところでミーシャさんは肉も食べますか?」


「ああ、私は人と同じ物を食べている。肉は嫌いでは無い」


「だったら・・・」


「!!!」


俺はストレージから食器類を取り出してテーブルに並べ始めた。

ミーシャは色々なものが宙から飛び出してくるので唖然としている。


水のペットボトル、ロールパン、サラダ、メインはステーキハウスのステーキとハンバーグをタブレットで呼び出した。


「鉄板が熱くなっているので注意してくださいね」


絞り込んだステーキハウスは俺が死んだ日にちゃんと営業していたのだろう。

焼きたての肉が鉄板の上でジュウジュウと音を立てている。


あんぐりと口を開けたままのミーシャを放置して、俺はステーキとハンバーグを小さく切って皿に取り分けた。

フォークと一緒にサリナに渡してやる。


「少しは食べておけよ」


「お兄ちゃんを助けには?」


「飯を食ってからもう一度考えろ」


「・・・」


黙ってフォークで肉を食べ始めた。


「ミーシャさんも冷めると美味しくないですよ、早くどうぞ」


「・・・これは、どう言うことなのだ?」


「ああ、私の魔法です。必要な食べ物を取り出すことができるんですよ」


「魔法・・・」


ミーシャは驚いた表情のまま、ナイフで肉を切って口に運んだ。


「・・・!、何だこの肉は柔らかくて・・・変った塩の味も凄く口の中で広がる!」


「美味しいでしょ♪ サトルさんの食事は世界で一番美味しい!」


サリナが我がことのように自慢している。

少しは元気が出てきたようだ。


「と、いう事なんですよ。とりあえず食い物に不自由をすることはありません」


「・・・で、3日が3時間と言うのは?」


-やっぱり、そっちも忘れてないか。


「それも、魔法の馬車を呼び出せば普通の馬車が1日掛かるところを1時間で走れます」


「そんな馬鹿な!」


「ええ、馬鹿げているんですけど、それが出来ちゃいます」


「・・・信じられん・・・だが、この食事も・・・。それで、お前は迷宮へ行くつもりなのか?」


サリナが食べるのをやめて俺を見つめている。


「難しいでしょうね。ミーシャさんもわかってるんでしょ?」


「いやだ! お兄ちゃんを助けて!」


「でも、行くとサリナも死ぬかもよ」


「大丈夫! サリナが守るから!」


-いや、だからお前は守られる方やっちゅうねん!


「サリナはどうやって、俺を守ってくれるの?」


「・・・それは、 まほう・・で」


「魔法で守るったって。死んだら生き返らせることは出来ないんでしょ?それに戦える魔法も使えないじゃない」


「・・・ -グゥスン-」


-また泣き出したよ。


「だが、サトルよ。この娘は特別な存在だろうが?」


「いや、特別なんてまだ知り合って数日ですからね」


「そう言う意味では無い。この娘、魔法力が桁外れであろうが」


「え?」


「本人は何も言っていないのか?」


「魔法力は自信があるみたいですけど、僕と会った時は切り傷しか治せませんでしたよ?」


「・・・おかしいな。私たちエルフ族は精霊の加護で魔法力を感じることができるが・・・、今まで見たことの無いレベルの魔法力を感じるのだがな」


-前から隠していることと関係あるのか?


「サトルさんはお兄ちゃんを見殺しにするの・・・?」


-だからその表現を上目遣いでするんは反則やっちゅうねん。


「見殺しって・・・、可哀そうだけど俺も死にたくないしね」


「ところでサトルは魔獣を倒す魔法も使えるのか?」


「はい、サトルさんは凄いです。ティーガーでもあっという間に倒してしまいます!」


-サリナが急に元気になりやがった。


「ほお、それはたいした物だな。もし、お前が迷宮に行きたいのなら、背中は私が守ってやってもいいぞ。報酬はもらうがな」


-おぉ、エルフと二人旅!、・・・いや三人か。


ここは悩みどころだな。

死なない範囲で何ができるか・・・

俺には必殺のヒット&ハイドがあるから背中を守ってもらえば多分大丈夫。

しかし、このエルフはそんなに強いのか?


「ミーシャさんは、どのぐらい強いのですか?」


「失礼なヤツだな。私はハーフエルフの戦士ミーシャだ。弓も剣も使える。お前と同じようにティーガーぐらいなら剣だけでも倒せるぞ」


-へぇ、それなら凄いかも。俺は銃が無ければエサにしかなれないからな。


「だったら、明日、お互いの腕を確認してから答えを出すというのはどうですか?馬車の手配もしないといけないので」


「いいだろう、私もお前の魔法を見ておきたい」


そう、3人の馬車が必要だ。

オートマなら何とかなるだろうと前から思っていた。

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