魔法少女は愛を力に変えて夢見る人を救います。
越山明佳
第1話 魔法少女になる
魔法少女は幼き少女たちの憧れの存在だ。
可愛い衣装を
「ん~。どの本を読んでもどうしたらなれるのかわからないなぁ~」
小学生に間違われる程に小柄な高校一年生の
「また、小説を読んでるの?」
「うん。どこかに魔法少女になる方法が書いてないかな? と思って」
「もう。書いてあるわけないじゃん。それより、もう放課後だよ。一緒に帰ろう」
真惚に声をかけたのはクラスメイトの
真惚と杏は中学時代からの友達で家が近い。お互いをあだ名で呼び合うほど仲がいい。真惚はまーちゃん、杏はあーちゃん、と呼び合っている。学校から電車を使って約1時間で家に着く。
「ねぇ。あーちゃん。家でアニメ見てかない?」
「ん~。また、魔法少女アニメ?」
「そう」
「今日は
「夕飯の支度もしなきゃだし」
「ふ~ん。大変だね」
杏の両親はクリニックを経営している。忙しいことを理由に家事はほとんどしない。家政婦を雇おうかと話をしていたことがあった。だが、杏自らが家事をしたいと申し出た。そのため、家政婦を雇わず、杏が家事の大半をしている。
夕飯の支度をしないといけないのは事実だ。だが、真の理由は別にあった。前に一度は真惚と魔法少女アニメを見たことがあった。その時、杏の感想は何が面白いのかわからない。そんなド直球に親友の好きなものを否定するようなことが言えずにいる。
「それじゃ、また今度! じゃあね」
「うん。じゃあね」
駅からは真惚の家の方が近い。
杏は家に入っていく真惚を見送り、自身も家に帰る。真惚の家から5分とかからない。
「準備は順調ですか?」
玉座に座り、片手に杖を持った美女が問う。美女は中性的な顔立ちで、背筋を伸ばし
「準備は順調に進んでるよ」
美女からの質問に答えたのは小動物である。毛並みは白く、パッチリとした目が愛らしい。丸っこい耳をしている。
「具体的にはどのような状況ですか?」
「すでに数名から積極的な協力を得てるよ」
「そうですか……わかってますね! 奴らを止めねば世界は。人間の世界は滅んでしまいます」
「わかってるよ。任せてよ」
「ええ。頼みましたよ」
小動物は姿を消し、任務遂行すべく行動する。
真惚は大好きな魔法少女アニメをリビングでくつろぎながらテレビの画面越しに観ていた。
今日は平日で学校から帰って来てすぐにテレビをつけ、録画を再生する。
父は仕事、母は買い物、兄は部活をしており、家には
オープニングが流れ、軽快なリズムに乗りながら真惚はご機嫌である。曲が終わると同時にテレビの画面からなにやら奇妙な生き物が飛び出してきた。
うさぎのように白く、パッチリとした目が愛らしい。小動物で丸っこい耳をしている。何を言われても可愛らしさにやられて
「君は魔法少女になりたいのかい?」
テレビの画面から出てきただけでも驚きなのにその小動物は
「……へ!? なれるの!?」
真惚は驚きつつも目をキラキラとさせて興味を示す。
「なれるとも!」
舞うように小動物は
たった一つしかないボタンが突然あらわれる。ボタンには透明なプラスチックのカバーに覆われており、間違って押せないようになっている。
「……? なにこれ?」
「カバーを外してボタンを押してごらん!」
真惚はボタンを手に取り、カバーを外す。カバーは落ちてしまうかと思ったら、片側がくっついてる。キャッチしようかと出た手が居場所を失くし恥ずかしくなった。
恥ずかしさのあまり
「……これを……押せばいいの?」
動揺しているのかボタンは一つしかないないにもかかわらず問いかけた。
「そうだよ! グイッと押しちゃって!」
小動物の声に従い、真惚はボタンを押す。
これで魔法少女になれると真惚は胸を踊らせる。すると……
――真惚は全裸になった。
「…………!?」
顔を真っ赤にさせて真惚は絶句する。屈みこみ恥部を全身で隠した。
「どういうこと!?」
「www笑」
「笑ってないで早く元に戻して!」
「ボタンを長押しすれば元に戻れるよ」
言われるがまま真惚はボタンを長押しする。
「……ハァ……ハァ(泣)」
鋭い眼光を小動物に向けて絞殺さんばかりの勢いで真惚は掴みかかろうとする。
真惚の攻撃を小動物は素早くかわした。
「いやー(笑)ごめん。ごめん(笑)」
小動物は楽しそうに笑っており、全く悪いと思っているようには見えない。
「忘れてたよ。テレビに出てるような魔法少女になるには君のお兄さんからの愛を感じる必要があるんだ!」
「……? なんて?」
「愛さ! 兄からの愛を妹が感じる必要があるんだ!」
妹は困惑するも、小動物の言葉を信じることにした。
「お兄ちゃんからの愛なんて……どうすればいいの?」
「そんなの知らないよ。自分で考えな!」
「一緒に考えてよ!」
期待していたのに残念な気持ちを小動物に向けた。そして、小動物はとんでもないことを口走る。
「デートすれば?」
「……は⁉ お兄ちゃんとデートなんて……」
兄とは一緒に住んでいるにも関わらず、接することが少なくなっており、寂しい気持ちを
デートしている姿を想像して真惚は
「どうやら決まりのようだね!」
小動物はまるでこうなることがわかっていたかのようだった。
「うん! お兄ちゃんとデートする」
こうして
なにやら目的がすり替わっているように思えなくもないが、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます